第三話 ありがとう
呼び出され、指定された場所に向かうとすでに先生と彼女が対面で座っていた。僕は彼女の隣に座った。
「君たちはどういう関係なんだ?」
僕は先生から聞かれた。僕が来るまでに彼女と何を喋っていたのかは分からないけど正直に伝えようと思った。彼女とは知り合いではないこと。彼女が朝おばあさんを助けて遅刻していたこと、その現場を僕も見かけたことすべてを話した。
「そういうことで合ってるんだな、愛川」
「はい」
「分かった。なら終わりだ。気をつけて帰れよ。」
先生が教室から出ていった。これから1年間あの人が担任でやっていけるのか僕はそう思った。今日はとても疲れたし、もう帰ろうと席を立ち扉に向かって少し歩き出したとき、
「その……ごめんね」
後ろから彼女の声が聞こえた。何で謝っているのか分からなかったけど僕はなぜか、この場にいるのが少し怖くて早く帰りたかった。返す言葉も思いつかず立ち尽くしていると、
「大丈夫?ほんとにごめん……」
また彼女は謝った。
「ありがとう本当に」
「え?」
「おばあさん助けてくれたんだろう?僕はあの場にいても何もできなかった弱いやつだ……」
まだ言いたいことはあったかもしれないけど僕は心苦しくてその場を後にした。彼女が何か言ったようにも聞こえたが引き返すことはしなかった。その日の帰り道は、やけに遠く感じた。




