第二十話 酸っぱい夏
ビーチバレーでたくさん遊んで、僕たちは砂浜に倒れ込んだ。しばらく、誰も動けなかった。
「もう……動けない……」
ひまりがそう言うとりおも言った。
「遊び疲れたね。ゆうくん、私たちあそこでかき氷買ってくるね。」
「片付けしながら待ってるよ。」
僕は片付けを素早く終わらせて、砂浜に座って海を眺めていた。
「もう、夕方か……早かったな……」
綺麗な空を見て思った。あの二人に可愛いと伝えるべきなのか。僕には難題だった。僕にはさっきの言葉が頭に残っていた。
(あの子達、可愛くね?)
(お前、いけよ。)
(モデルさんかなぁ?)
(あんな美少女、普通の海にいるんだな。)
もし、あの二人が誰かに取られて居なくなってしまったら来年は一緒に来れないと思った。しかし、可愛いと伝えればそういう目で見てると思われるかも。一方で、二人ともたくさん準備してきてるから伝えたら喜んでもらえるのかも。僕の決断が固まってない中、二人の声がした。ひまりとりおが並んで帰ってきた。僕は、やっぱり可愛いと思った。
「ゆうくん、ごめん待たせちゃって。」
ひまりが僕のかき氷を渡そうとしたとき言った。
「二人とも、今日は誘ってくれてありがとう。楽しかったよ。」
「急にどうしたの?」
ひまりは少し驚いていた。そんな中、りおが言った。
「うちらも楽しかったよ。」
「……またこうやって……遊べる……かな……?」
「もちろん!うちら最高の友達でしょ。」
そう言われた瞬間、明るい未来が、はっきりと見えた気がした。
「いっぱい、いっーぱい遊ぼ!」
ひまりもそう言った。二人がかき氷を食べだしたとき僕は思い切って言った。
「もう一つ言いたいことがあるんだ。」
二人の手が止まった。僕の心臓もキュッとなった。
「なにぃー?」
りおが僕に顔を近づけて言った。
「今日、二人とも……その……可愛い……かった……よ……」
りおは、すぐに顔をどけた。ひまりも顔をそむけた。後ろを向いていたが二人とも耳が赤くなっていた。僕は恥ずかしいよりもスッキリした。僕は海を見ながら座ってかき氷を一口食べた。
「酸っぱ……」
なぜかレモンの味がいつもより強く感じた。胸の奥まで、じんわり広がるような、そんな味だった。
その後、二人とは、あんなことがなかったかのように片付け、帰路についた。僕は心も身体も疲れていて、爆睡していたらしい。
「じゃあ、またねゆうくん!」
ひまりが言うと、りおも続けて言った。
「ゆうくん、バイバイ!」
「バイバイ!」
僕も二人に返した。家までの道、あの二人が少し恋しかった。
家に着き、ドアの前に行くと中から男の人の声がした。このときの僕は、まさか――あの人だなんて、思いもしなかった。




