第93話 衝撃の告白。
その後も質問に答えながらこれまでの約150年を話す。
そこで真由さんがとんでもない事を言い出した。
「あのね…、戻ってきたから言うんだけどさ、18歳の時にはもう終わった話だから誰にも黙ってたんだけど、上田優雅って私が行ってた小学校に居るし、中学にもくるよ?珍しい名前だからアイツだと思うけど、凄い身勝手で見た目とノリだけは良くてさ。クラスの上の方にいる奴で、私アイツから中学の時に、『先輩、綺麗っすね。やらせてくださいよ』って言われるんだよね」と話してお茶を飲むと、茂くんが人殺しの顔で「真由?」と聞き返す。
「何?茂?やきもち?キスだって茂としかしてないし、茂と付き合うのが初めてなのも知ってるでしょ?奥さんを信じなさいよ」
「ちげえよ!言ってくれればボコボコにしに行ったのに、なんで黙ってんだよ!」
真由さんが呆れ顔で、「大昔の人を傷つけちゃう時の茂は、本当に殺しちゃいそうで言えなかったし、昇くん達に会えた茂はせっかく真人間の道を歩んだのに、あんなのに関わって、人生暗くなってほしくないんだって!」という言葉に、私が「わかる。勝手に自滅するから放置したいよねー」と言うと、自滅仲間の春香は居た堪れない顔をする。
そんな中、明日香が「春香は何でそんなのと結婚したの?」と爆弾投下をする。
気まずそうにお茶を吹き出す春香が、「春香の事を一番分かってるのは俺だ」、「幸せにしてやるから結婚しろ」、「うんと言え」、「面倒な事は全部やってやる」、「春香は俺の後ろでニコニコしてるだけでいいって言われたから」と答える。
まあ春香らしいお答えだ事。
また、少しだけイラッとした私は、「確かに昇は『一緒にやっていきたい。2人で頑張りたい』で優雅とは違うね」と言って微笑むと、「かなちゃん怖〜い」が聞こえてきた。
話は進んでいき、言い方は悪いが、葉子も七海も春香のやらかしにはあんまり興味はなく。質問は「やり直しの風」の事になる。
そもそも、なんで私達なのかはわからないが、無意識にでもやり直したいと思う気持ちが心の底から出ると、やり直されてしまう事を説明すると、「一木は何がしたくてやり直すの?」、「アイツ、何度も願うなんて誰か好きなの?」と、とても嫌そうに聞いてくる。
性格を直すなんてしないで、昇を追い詰めて人気者になりたい話をすると、「無理だよぉ」、「げぇぇ」と言って素直な反応をする葉子と七海。
「で、じゃあ30過ぎて風が吹くのって」
「一木が休日とかに誰とも会う予定とかもなくて、人気者になれなかった事に気付いたから、やり直したいって思ったの?」
私は頷きながら一つ言う事にした。
「そうだ昇。春香の悪い噂が聞こえてくると、昇は『恋人とかなしにしても、俺に何かできなかったのかな?まだまだ本気を出せてなかった』って思ってやり直しを願ったんだよ。で、春香の問題だけど、昇と付き合って何の不満もなくて幸せになると、一木と優雅に唆されるの。で、優雅といて不幸になっても、一木に唆されて昇にフラフラと来るの。でもね、お父さんに紹介して貰った人といる時みたいに、適度に幸せだと唆されなくなるんだよ」
私の言葉に顔を暗くした昇と春香だが、春香が幸せになれると聞いた昇は顔を明るくして、「え?そうなの?春香は幸せになれるの?良かったよ。聞いて安心した」と喜び、春香は確かにあの素朴っぽい人を思い出して少し困った顔をする。
私は喜ぶ昇に「あはは、そうだね。でもね昇、最後の前の前の時、運動会の朝を迎えられなかった日に風を吹かせた昇はどうして風を吹かせたと思う?」と聞くと、昇は不思議そうに「え?あれ?そう言えばそうだよ。なんで?悪い噂も聞こえなかったのに」と言って首を傾げる。
「私も曽房さんと華子さんの結婚式で気づいたんだけどさ、運動会の買い出しの帰り、薫と香と4人で歩いた時の話、覚えてる?」
「アイツら食べられないのに、かなたにご馳走を山ほど頼むし、茂とオジさんのたこ焼きに、曽房さんのお好み焼き焼き、オバさんのベビーカステラ、それで婆ちゃんのおはぎ…、あ」
昇も気付いたのだろう。
「そうだよ。おはぎの話から、春香と過ごした運動会を思い出して、『まだできることはなかったのかな?あったのかも』って思ったんだよ」
「…ごめんかなた。もう大丈夫だから」
昇の言葉に合わせるように、明日香と関谷くんが「私も今度は間違えないね!」、「うん!もう一木を殺そうなんてしないよ!」と言って頷き合い、場が凍る。
暖かいのは鉄板の上だけだ。
「え?何言ってんの姫宮?」、「関谷くん?」と七海と葉子が聞いて、「私達、誤解してたの…。大学に入って少しした頃に、一木が皆と仲直りしたいって、優斗くんに相談してて、優斗くんは一木を信じて、話の流れで皆の近況を教えてて、楠木くんの電話番号とかかなたさんに聞いて教えちゃってたの」と説明したを始める。
ドン引きする七海と葉子に「まあそれは前回で言えば私が2回線目を契約して、昇って事にしてフィルターになって受け止めて守っていたんだけどね、でもそのまま春香の近況とか、私達の近況を一木の好きにさせると、また戻されちゃいそうだったから、絶交しようって明日香達に話したの」と言って丸く収めようとしたわけだが…。
「それが嫌だったから、優斗くんと一木と絶交しようって話したんだけど、一木に付き纏われたら最後で、髪の毛に貼りついたガムみたいに離れないから、2人で殺すしかないって思って、河原に呼び出して…」
「お前を殺すって言って、逃げ出す一木を後ろから角材で殴って」
「2人で何度も何度も何度も何度も角材で殴って」
「何度も何度も何度も何度も角材で殴ったら、角材が真っ赤になって、一木のうめき声とかも聞こえなくなって、急に冷静になってきて、怖くなったところで2人同時に手を止めたら、一木が最後の力を振り絞って逃げ出したんだ」
「私達、追いかけたけど追いつけなくて、もう終わりだねって言って2人であてもなく北を目指したの」
「最後に美味しいものを食べて、綺麗な景色を見ようって言ったんだ。それで眠ったら…楠木くんに呼び戻してもらえて…」
生々しい、生々しいよ。
事細かに話さなくていいよ。




