表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
はるかかなた。  作者: さんまぐ
【初恋解呪。編】

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

89/107

第89話 黒かなた。

まあこのあとは酷かった。

お母さんもお義母さんも薫と香に早く会いたいと言い出した。


「ダメだって!14年後の10月じゃないと2人に会えないって」


必死になる昇に、お母さんが「昇くん?薫と香は決定なのよ。それよりも薫と香にお兄さんやお姉さんが居てもいいんじゃないのかしら?」なんて言い出して、昇は目を白黒させて「かなた!?ヤバい!」と慌てる。


「お母さん、ダメだよー。私の願いは昇と私、薫と香と4人で、初めての小学校の運動会の朝を迎える事だもん。だから結婚は24歳で、出産は26歳だよー」


私の言葉でお母さん達は諦めてくれたが、案外昇は呪いが解けて全部ではないが、大まかな記憶があるからか甘えてくる。


「かなた帰るの?」

「明日学校だよ?」

「…ウチから通えば?」

「離れ離れは辛いねぇ」


昇は辛そうな顔で「本当だよ。春香のところでもモヤモヤしたし、一緒にいてホッとしたい」と言った時に一つ思い出した。


「そうだ」と、言った私は昇に顔を近づけて、「あの春香との密会、ペナルティだよ」と告げる。


昇は真っ青になって「え!?あ……はい」と言って諦める。


とは言え昇を怒る気はそんなにない。

本当に1人でいられない春香が命の盾を振りかざしてきて、拒めずに受け入れただけで、春香を抱く事に期待が無いといえば嘘になる顔だが、率先して抱きたい顔では無かったし、あの後は見てとれるくらい自己嫌悪が酷かった。

まあ、密会しておいて風を吹かせる辺りはムカついた。

だからペナルティだ。


「ふふ。そんな顔しないで平気だよ。ペナルティは、優雅に勝ちたくて春香と上書きしてきた旅行とか、ご飯屋さんとかに全部連れて行って。それで私とした事もまた全部して」


「それで…いいの?」

「うん。それがいいよ」


名残惜しい気持ちで、別れる時に抱きしめたら抱きしめ返してくれる。

ようやく昇の全部が自分に向いた喜びで、受験も進学も乗り切れる気持ちになっていた。



まあ世の中そんなにうまくはいかない。

次の土曜日に昇はウチに泊まれなくなった。


土曜日の朝イチに会田くんから昇の家に、私の所には梅子から電話が来た。

仕方なく小岩邸を借りて集まると、そこには春香もいる。


皆、小学生のノリが辛い、子供のフリが辛いと言い出していた。


「まだ春香はいいよ。俺なんて両親に話しても『なんの漫画を読んだんだ?』だった」

「私も…、楠木…、ダメ元でウチの親にもアレやってみてよ」


私は申し訳ないが胸のすく思いだった。


「この後、受験もあるよ〜。案外覚えてないからキツいよ〜。毎回問題が違うかもって思うと勉強も気が抜けないよ~」と言うと、春香が真剣な顔で、「かなたごめん!本当にこんなのを何回も繰り返して150年近くやってたの?」と謝ってくる。


1週間で懲りて根を上げる所が春香らしい。


「そうだよ。正確には16…170年くらいじゃないかな?」と言う私に、茂くんが「そりゃあ黒桜にもなるな」と言う。


黒いかな?


とりあえずの皆の要求は、道連れを増やしたいと言う事で、手始めに堀切拓実の家に行こうと言い出した。


まあいいけど…、と思っていると曽房さんが華子さんとやってくる。


驚いたのは華子さんはキチンと戻ってきてくれて、私と昇を抱きしめて「ありがとう。私と修のキューピッド。私はこの記憶で修と幸せになるね」と言ってくれた。


「これの基準ってなんだろ?」

「ねー。三津下さんはダメだったのにね」

「バカだからじゃねぇか?」

「坊ちゃん酷いっす!」


堀切くんも戻ってくると、その流れで皆に会って、元東小学校出身者で卒業後も会う東中の皆はとりあえず元に戻る。

皆、驚いた顔で私たちを見て、春香もいて変な顔をしたが、全部済んだ話だと説明して終わらせる。


そんな中、私が青くなり黒だと自覚する事になったのは、姫宮明日香と関谷優斗を呼び戻した時だった。


スパイの2人を逆スパイのヒットマンに仕立て上げていた事をすっかり忘れていて、「かなたさん!ごめんなさい!」と戻ってきた明日香に謝られ、関谷くんが「一木を呼び出して、角材でメチャクチャに殴ったけど殺せなかったんだ。虫の息で逃げられて…」と、何をしでかしたか報告された時に、スパイの2人を逆スパイのヒットマンに仕立てた事を思い出してしまい、春香や昇の目が怖くてみられない。


その時、茂くんが「お前達、桜の言葉を誤解してたろ?桜が修さんの結婚式で、曲解していたらどうしようって心配してたらコレかよ」と言って助け船を出してくれる。


「え?かなたさんのあの話って…」

「一木を殺してこないと絶交って…」


この言葉だけで公園の気温が下がった気がする。

あー…、周りの目が怖い。

チラッと昇を見ると察した顔をしている。


「かなた…そんなことまで試さなきゃいけないくらい追い込まれてたんだな」と、小さく耳打ちしながら私を抱きしめると、皆に聞こえるように「ありがとうかなた。俺や春香が困らないように、一木と関谷達を絶交させようとしてくれてたんだな!」と言う。


多分皆わかっているが、そこは大人として、「なんだよ関谷と姫宮の勘違いかよ」、「関谷くんもキチンと明日香を守ってあげてよね」、「本当だぜ」、「危うく犯罪者じゃん」と言ってくれて、関谷くんと明日香は「え!?勘違い?」、「じゃあキチンと絶交すれば、かなたさんと楠木くんの結婚式にも行けたの?」と困惑している。


私はそんな中、皆と談笑する春香に、「春香も一木に乗せられて、あれこれ話してたんだからね?」と言うと、春香はガクブルで「ご…ごめんなさい」と言った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ