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はるかかなた。  作者: さんまぐ
【初恋解呪。編】

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第86話 殴られる。

昇はその後も春香に裏切られた事を出していく。

やはり記憶が曖昧になっていたり、情報が足りていない部分もあるが、概ね覚えているのがここでもわかる。

正直もっとされていたと言ってもいいが、今でも十分にオーバーキルになっている。

現に言うたびにドン引きする茂くん達と、人殺しの顔になっていく春香の両親。

まあ春香のうまいところは、あの性格なのにボロさえ出さなければうまく立ち回る事だ。


「そして…この時に、ようやく俺はかなたと結婚をして2人の子供を授かる。薫と香、とても可愛い双子で、俺達の幸せが見つかったんだ。だから俺は春香とは何もないよ」


春香は「そんなこと言わないで!今度はそんな事にならない!一木にも優雅にも騙されないよ!引きずられないよ!」と言って前のめりになって、「あの赤紫の振袖だって昇は似合うって褒めてくれてた!今度はキチンと目の前で見てもらって褒めてもらいたいよ!」と叫ぶ。


「振袖?」と聞き返す昇を見ながら、私が「前回のだよね?残念。それは私だよ。一木が関谷優斗を使って、スパイの真似事をさせてたから、私が二回線目のスマホを契約して、昇のアカウントってことにして、メッセージを受け取って適当に返してたの。それを一木が勝手に『昇が喜んでる』とか春香に言ったの。一木は時期が来て、春香が昇との再会を期待してるメッセージを、わずかでも初恋の呪いが残った昇に見せて、昇を春香の方に行かせようとして、またいい雰囲気になりかけた所で優雅や浮気性の男をけしかけるんだよ」と説明をした。


ここで諭すように昇が「春香、だから俺たちは終わったんだよ。初めての時はあのゲリラ豪雨で、前回で言えばあの8月7日で終わったんだ」と言った時。


少し苛立っていた事もあるし、初めての流れで150歳を過ぎたお婆ちゃんの私でも、気が大きくなっている事もあるのだが、「そうだよ?前回の流れで言えば、始業式の日に昇が春香を助けたいと言った時。私が止めなかったら2人は恋人から友達に戻って、大学生になると年に2回くらい4年間で9回も、命の盾を使って昇を説き伏せて密会してたもんね。それなのに春香はまた新人研修に行く昇を見て、一木の誘いで軽そうな感じの新しい彼氏を作って昇を心配させて傷つけたもんね」と言うと、昇は凍ったように固まって、ひきつった顔でそっと私を見て、「え?かなた…さん?ご存知…だった?」と聞いてくる。


私が無言でニコニコと微笑み返すと、後ろからは「かなちゃん怖〜い」、「桜おっかねぇ」、「けしからんクソガキだ」、「おやおや、仕方ないですが」、「梅子、俺はしないから」、「どうだか?」と聞こえてくる。


昇は上擦った声で「だからもうない」と春香に言って終わらせようとしたが、春香はやはり150年経っても春香だった。


「わからないよ昇!前も言ったけど、遠回りしたけど、今ならやり直せるよ!今度こそ私はちゃんとする!この前とかは知らなかったの!昇と最初みたいな事があったなんて知らなかった。前回の時だって昇はいつも凄くて、なんでもやれるって思ってたから甘えてたの!私との為に大変な思いをしてくれてたって知れたから、今度は違う!」


そう叫んだ時、春香のお父さんは「いい加減にしろ春香!」と怒鳴りつけると、立ち上がって春香を殴った。


だがその拳は春香ではなく間に入った昇の頬に炸裂し、春香の頬には私の掌が炸裂していた。


昇を殴ってしまった春香のお父さんは、愕然としながら震える声で「昇くん」と声をかけると、昇は「俺も悪いから、初恋に囚われて、中途半端に覚えていて、春香の為になんとかしようと無理をしたけど、前の時に春香が一木に乗せられて言ってた、『心配性の束縛男』って言葉がその通りだと思うんです。大事にしたくて2度と優雅に奪われたくなくて、一木から守りたくて、それに囚われて大事にする事ばかりで、春香を信じてあげられなかった。それなのに無理してたから。だから殴られるなら俺って思いました」と言ってから春香を見る。


昇が春香を見た時、春香は私に殴られて「かなたが…殴る?」と言って放心している。


私はもう我慢できなかった。


「いい加減にしてよ!こっちは春香のワガママに150年から付き合った!何回も高校受験をさせられて!大学受験だってして!就職活動もした!上手く死ねる筋道を探す為に、1度も手抜きしないで何回も本気で挑んだ!薫と香に会える前なんて、終われれば、キチンとお婆ちゃんになれて、死ねればそれでいいって思った事もあって、大好きな昇のことを諦めて、春香にチャンスをあげてた!何回もあげてた!フォローまでした!京成学院だけじゃない!東の京の時だってあげてた!そのチャンスを毎回台無しにしたのは春香だよ!」


「何回も一木に唆されて優雅を選んだ。一木だけが悪いんじゃない!春香が昇を弄んでた!何度もやり直す羽目になったのは、春香が原因なんだよ!春香が昇を傷つけると、この時間を戻す「やり直しの風」が吹くの!それで12歳に戻されて、全部を覚えているのは私だけ!春香に壊れた自信を取り戻して貰ってから、ひどい振られ方をした最初の時間、それも結婚式までだけを覚えている昇!昇を痛めつけたいだけで1度目までの記憶を持ってる一木!そんな酷い孤独の中、子供のフリもずっとしていて!言いたい事も言えず!春香は毎回何も知らずに昇に大事にされてる!それなのに裏切って昇を壊す!固形物が食べられなくなる昇がご飯を食べられるようになるまでケアしたのも私!」


深呼吸しながら真由さん達を指して春香に見せつけるように言葉を続ける。


「真由さんも、茂くんも、お爺様も、曽房さんも皆助けてくれた!梅子達だって心配してくれて、話聞くからいつでも言ってって連絡してくれていた!でも春香は何をした!?昇に甘え倒して裏切り続けて、愛され続けて愛に甘えた!記憶がなくても別の筋道を探しても、150年くらいの中で全部だよ!今度こそ!?今度なんてもうないの!昇は私の旦那様!最初の時、早くにお爺様とお婆様を亡くして、2人の大事さを痛感して、2人の事を考えて、食べ物に原因があるかもって思った事から食品バイヤーになる夢を持った昇を支えたのは私だよ!薫と香にも出張や手配に奔走して忙しくて、中々定時で帰って来れない昇の凄さをキチンと教えた。子供達は昇を尊敬して昇の事が大好きだった!春香は何をした?最初の時、大学生の時に昇の夢を聞いたよね?理由も聞いたよね?昇の話を聞いていたよね?それなのに昇が研修に行ったり出張に行くのが退屈だから、就活に失敗した自分が劣等感を覚えたくないから、一木に乗せられて優雅と不貞を働く。それで昇を傷つける!」


150年分の鬱屈した気持ちを怒鳴り散らすと、山野家のリビングはシーンとなった。

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