表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
はるかかなた。  作者: さんまぐ
【初恋解呪。編】

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

84/107

第84話 更に戻す。

一通り笑った昇が「そろそろ呼ぶか」と言って、「ほら、茂。手をつなげって」と、言って無理やり手を持って呼び戻すと、驚いた顔で私たちを見て、「昇?桜?親父?お袋?真由?修さん?」と言った後で、「にひひ。お帰り茂。俺たちの最後のやり直しに付き合ってよ」と昇が言うと、「お前、また?」、「桜、あんなに頑張ってたのに」と言いながら青い顔になると、突然土下座を始めて「昇!許してくれ!すまなかった!」と言い出す。


「かなた、どれの事だと思う?」

「んー…、裸土下座じゃない?」

「そっちか、まあ無理やり飲酒喫煙は茂が土下座するようなのじゃないよね」

「あー…西中の時のか、それならお小遣い没収かもしれないよ?」


私達のやり取りに、曽房さんが「坊ちゃん…」と言って呆れて、房子さんと巌さんが「お前…」、「本当ロクデナシだねぇ」と続き、真由さんが「子供かよって子供だよ」と笑っている。


「茂?とりあえずどれ?」

「全部だ!すまなかった昇!!」

「いいってば。とりあえずまたここからだけど、楽しくやってこうよ」


「許してくれるのか!?」

「心の友だろ?薫と香にも好かれてんだから変な事は忘れようよ。とりあえずさ…」

「髪は黒にする!早寝早起き3食食べる!勉強も今から始める!」

「ああ、それは絶対だけどさ、茂も東中に来なよ。今度は中学から楽しもうよ」

「なにぃ?」


「おお、懐かしい。茂の「何ぃ?」だ」

「本当だね」


「そうじゃないだろ昇!東中に行ってどうすんだよ!?」

「かなたの為だって。今度は本当の終わりにするんだよ。だから今までとは何もかも変えるんだ。ずっと頑張ってくれていたかなたには、毎日新しい事で笑顔になってもらいたいんだ。だから茂、頼むよ。俺と一緒にかなたを楽しませてくれよ」


驚いた…。

昇がそんな事を考えていてくれたなんて思わなかった。

目を丸くする私に、昇が「目指せ!生徒会長小岩茂!」と言って微笑んでくれる。


「何ぃ!?ふざけんな昇!」

「ごめんな茂、満場一致で決定なんだ」


その瞬間にノリのいい皆は「賛成」と手を挙げて、私はそれだけで嬉しくてたまらなくて泣いて笑ってしまった。

私の涙を見た茂くんは「くそっ…」と漏らすと、そのまま「じゃあ昇は絶対に風を吹かせるなよな」と言う。


「わかってる。絶対にしないよ」

「よし、なら春香には関わるなよな」

「あ、それ無理。今からかなたと助けに行くし、茂も行こうよ。真由さんも行こう」

「何ぃ!?」

「ちょっと昇くん!?何考えてんの?」


真由さんは「にひひ」と笑う昇を見て話にならないと思ったのか、私を見て「かなちゃん!?」と、止めなくていいのかと聞いてくる。


「あはは。提案したのは奥さんの私だよ。春香の事も一木と上田優雅から守るの。でも、私と昇は夫婦だから邪魔させないよ」

「えぇ?いいの?」

「いいのー、皆で行こう。あ、でもまだ茂くんて誤解されてるのか、どうしよう?」


話した結果、会田晶と町屋梅子を戻してみて、上手くいったら2人経由で春香の家に行くことになる。


外に出て、私はまたと思っても、懐かしい街並みに、昇と真由さんはテンション高く盛り上がる中、私と茂くんは並んで歩いていて、「昨日も並んで話して、今日もって不思議だな」と茂くんが言った。


「ごめんね」

「何がだよ?」

「既定路線に乗せたくて、いつも長話してる事とかかな」


茂くんも全てではなくても記憶が戻っているのなら、何回もあんな話をしたのは嫌だろう。


「なあ桜?」

「なに?」

「あの会話、何回もしてるけどよ」

「うん」

「昇の事、好きなんだよな?愛してるよな?」


茂くんは真由さんと前を歩き、お爺様に注意される昇を見て深刻な顔で聞いてきた。

一瞬、会話の意味がわからなかったが、すぐに茂くんの言いたいことがわかった。


「勿論だよ。ごめんね」

「桜?」

「あれは既定路線の会話だから、昇を愛していたって言ったのは昔の私。勿論愛してるよ。あの後、何回もやり直して、結婚をして、子供と暮らして、その度に愛は消えずに募るばかりだったよ」


それを聞いた茂くんは嬉しそうに笑って「良かった。本当に良かった」と言ってくれた。



この後はまあ大騒ぎにはなる。

面識のない私達と茂くん、真由さん、お爺様に曽房さんの無茶苦茶な組み合わせ。


でも無事に会田晶も町屋梅子も戻ってきた。


「え!?ここなに!?小6?なんで昇と桜が?え?だって昨日は曽房さんの結婚式で…」

「にひひ。まあ後で話すよ。春香の家に行きたいんだ。会田って春香呼べる?」


「春香ってお前…、あんな振られ……ん?あれ?前にも元サヤに戻ったけどまた振られて?ん?それ以外も…なんだこれ?」

「おお、そんな昔の事も覚えてるとかやるな!」


「…なんでそんなに余裕なんだよ」

「にひひ。最強の奥さんのかなたが居てくれるからだよ」


「えっと…?なんとなくだけどさ、ここのメンバーってもう顔見知り?小岩なんてまだ小6だけどもう仲良しなの?」

「おうよ。んなわけで春香だ。とりあえず町屋を呼ぼう」


会田くんはなんだかんだ、この頃から梅子と連絡するくらいの付き合いがあったので、呼び出して戻してみると会田くんと顔を見合わせて赤くなる。


「ん?どしたの?」と聞く昇に、「えへへ。梅子と会田くんは、昨日、曽房さんと華子さんの結婚式に当てられて、仲良くお泊まりからのお付き合いが始まりました〜」と私が楽しそうに報告をすると、「何ぃ!?」、「おめでとう!」と茂くんと真由さんが喜んで、昇も「マジかーって、なんで俺知らないの?」と聞いてくる。


まあ前回やその前で言えば、昇には言えてない。

この報告と同時に、お祝いムードの中で春香のお見合い話が割り込んできてしまう。

だが、その前の時なんかはそこから既定路線を外れたので、昇は知ってるはずなのに知らない所を見ると、どうやら私とは違って全部は覚えていない感じがする。


本人達は真っ赤な顔で「なんで桜が知ってんだよ!?」、「かなた?」と聞いてくるので、「まあ、何回も戻らされてるからね〜」と言って笑っておいた。


梅子も春香の名前には眉をひそめたが、私が言い出した事と、昇が2度と惑わされないと言ってくれた事を信じて、皆で春香の家を目指すと春香の家は大騒ぎになる。

突然、見ず知らずのお爺さん、曽房さん、そして恐怖の代名詞、反社と誤解されている小岩茂と知らない生徒達が襲来する。


「昇、どの順番だ?」

「え、そりゃあ、おじさん、おばさん、春香だよ」


私はその顔を見て少しだけホッとする。

昇の顔は少しだけ意地悪をするつもりの顔で、昇としてもこの約150年の裏切りの連続には頭に来ているのがわかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ