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はるかかなた。  作者: さんまぐ
【初恋解呪。編】

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第83話 皆を戻す。

着替えた私はお父さん達を連れて楠木家に向かう。


向こうではお爺様が仕切ってくれていて、大きな混乱はなくて「おうクソガキ。おめぇキチンとかなちゃんに謝ったか?」と言ってくれている。


「言ったよ。さっきのだけど、かなたのお父さん達にも効果あったから、婆ちゃん達にもやってみるわ」


昇が手を繋いで思い出せと言うと、皆何があったかを思い出してくれて、お婆様は「またここからになっちゃったのね。でも今度は違うわ」と言ってくれる。


「はい。昇さんも今度は春香に惑わされないって言ってくれました」

「ふふ。お婆ちゃん嬉しい。でも昇の事だから、最初の恩も残っていて、泣き顔を見たら助けたいって言うわね」


その考えはどこかにあった。

人を困らせて喜ぶ一木幸平と、無自覚に人を弄ぶ上田優雅。

困っている人を見捨ていられず、お爺様に貰った恩には感謝を忘れない、恩返しをする言葉を貰った昇なら、あの2人から春香を助けたいと言いかねない。


私が顔を暗くしてしまうと、お婆様は「ふふ。平気よ。先に釘を刺す事と、かなちゃんが素直に昇の奥さんをしてくれれば円満解決よ」と言ってくれて、少し話したら納得できた。


食事の席で「昇、今度大樹珈琲に行って何が起きたか聞こう?」と提案すると「お、そうだね。お婆さんからもう大丈夫って聞きたいよな」と言って笑っていた。


食後にお爺様が「おい、小岩の坊主にも教えてやろうぜ」と提案すると、昇が「爺ちゃん、来る?」と言って悪い笑顔をする。


悪い笑顔の意味を察したお爺様も、「アイツはクソ真面目だから、お前をボコボコにした記憶まで戻ったら、どうなるか見ものだぜ」と言って、昇と悪い顔で笑い合うと、昇が「かなたも行こうよ」と言う。


私はお婆様と頷きあって「その後で春香のとこにも行こう。助けないと」と提案する。


全員の空気がピリつくのがわかる。

お父さん達も、何回もやり直しの風が吹いたのは、一木幸平に踊らされた昇と春香が問題で、昇には初恋の呪いがあって、私との事は何も覚えていないからある種仕方ないが、春香に関しては身勝手でワガママで堪え性もない大きな子供が一木幸平にいいように操られている。

最初の事で言えば、一木幸平と春香がいなければ私達は結婚出来ていた。

私が苦労してきた理由も全て知られていたので、こうなるのもわかる。


「かなた?」

「いいの。だって昇はキチンと惑わされないって言ってくれたよ。だから一木と上田優雅から守ってあげよう。やっぱり昇はお爺様の言葉に従って恩返ししたいだろうし、泣かされる春香は見たくないでしょ?」


「それも知ってるの?」と言ってから、少し唸った昇。


昇は「あんがとかなた」と言った後で、「でもなんかモヤモヤするから生チョコ食べたい」と言ってくる。


「いいよー。後は?」

「かなたのスペシャルミートボール」


「ふふふ。それだけー?」

「え…、チョコプリンもいいの?」


私が「勿論!」と返すと、本当に嬉しそうに「よし!じゃあまずは茂だ!茂を辱めに行こう!」と言って、私と昇とお爺様で小岩茂の家に向かった。


当然小岩家は誰も私達のことを覚えていないし、テキ屋と反社を間違えた茂くんがグレていて家の空気はギスギスしている。


玄関掃除をしていた三津下さんが「ンダゴルァ!?」と威嚇してきたが、私達は「あー、はいはい。元気そうだね三津下さん」で終わってしまう。


三津下さんの声が聞こえたからか、曽房さんが外に出てきて「三津下ぁぁ!」と怒鳴りつける。


「あ!曽房さんだ!おはよー!」


昇が話しかけて「はい?面識はないかと思いますが、坊ちゃんのお友達ですか?」と返す曽房さんに、「にひひ。心の友です。曽房さん、ちょっとだけ握手してよ」と昇が声をかけて思い出してもらう。


「こ…?ここは?楠木さん?桜さん?もしかしてまた戻されたのですか?」


「よし!曽房さんも戻ってきた!」と喜ぶ昇を見て、「え?楠木さんも戻って?」と言って混乱するので、「はい。風が吹いたかも怪しいんです。でも今回は昇も覚えてくれてて、昇と手を繋ぐと皆も思い出してくれて、私は1人じゃありません」と伝えると、曽房さんは泣いて喜んでくれて、「おめでとうございます桜さん」と言ってくれた。


「でさあ、曽房さん。ちょっとやらかしたいんだけど、付き合ってくれる?」


悪い笑顔の昇に、曽房さんも「お任せください。何をしますか?」と悪い笑顔になる。


ここでわかったのは、昇と深く関わっていないからか、三津下さんの記憶は戻らなかった。


だがキチンと小岩茂の両親も戻ったし、ちょうど遊びにきていた中野真由さんも戻った。


「今日は真由さんもいらしてますよ」

「マジで!?ラッキーだ!じゃあ、真由さん、おばさん、おじさんで茂にしようか?」


「まったく、お人が悪い」

「えぇ?曽房さんも笑ってるよ」


「おっと」と言った曽房さんが、笑いながら真由さんを呼んできてくれて、「へ?君たち誰?茂のお友達?」と言っている真由さんを戻すと、「かなちゃん!」と言いながら私を抱きしめてくれて、「またなの!?」と聞いてくれる。


「うん。またみたい。でも今回は皆が居てくれるから平気だよ。昇も全部覚えてくれてるみたい。もう惑わされないって言ってくれたよ」


真由さんは昇をジト目で睨みながら、「本当?絶対?」と聞いてくれて、昇も「本当。やだよ。振られて、寝取られて、裏切られてさ、その癖、諦め悪く迫ってくるし」と言って笑っていて、本当に全部かわからないけど、沢山覚えてくれているんだとわかった。


この先は笑ってはいけないが笑ってしまう。

昇と真由さんのコンビは相変わらず無敵で、房子さんが思い出してくれると「今度はうまくいくさ!」と言ってくれて、巌さんも「あの部屋、高校生になったら住むかい?」と聞いてくれる。


嬉しさの中、三津下さんは別として、皆が仲の良い顔見知りの中で、唯一呼び戻してもらえない茂くんは、いくら威圧しようが何をしようが、皆から生暖かく見守られて、「ふふ。頑張って悪ぶってる」、「本当だねぇ。思い出したら憤死ものだよね」、「な、このクソガキが大成するなんてな」、「またガリガリしやがって、メシ食わさねえとな」なんて言われていて、本人は「あぁ?」、「んだお前ら!?」、「殺すぞ!」なんて言っている。

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