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はるかかなた。  作者: さんまぐ
【遥か彼方。編】◆やり直し・13歳~15歳。◇春香と接点を持つまで。
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第7話 夏休みの過ごし方。

西中の一年は、山中湖に移動教室で行き登山をする。

それは6月のことで、そこにはあの不良が着いてこなくて、平和そのもので学年全体が浮き足だったのを覚えている。


東中学校は、どこをどう間違えたのか、夏休み明けの9月すぐには移動教室、中間テスト、運動会が続き、すぐに合唱祭なんかがやって来る。


昇は社会人生活をしていたおかげでそつなくこなすが、正直過密スケジュールでヘトヘトになる。

夏休み中に委員会活動なんかで学校に顔を出すと、昇はかなたと「夏休み明けキツくね?」とつい話してしまい、それは社会人経験をした事がある自分の感性かも知れないと気付いて慌てたが、かなたも「わかる。なんか大変そうだよね」と言った。


あの動物園の日、帰り道でかなたは不良の小岩茂と仲間達、その中にいる一木幸平まで見かけていて、翌週に「帰り道にうちのそばの公園に、駅にいた子達が居たよ。あと3組の男の子が居た」と言っていて、会話運びからあの帰りに何故かいて、昇が困った時の男だと聞き出しす流れを作って、「危なかった。一緒に帰ってて知り合いだとわかると、何があったか考えるだけで冷や冷やする」と話すと、かなたは「うん。危ないから当分は放課後は図書委員の仕事って事にして図書室に行こうよ。さもなければ堀切君も呼んで3人で動こう」と言ってくれて、昇は助かった気持ちになる。


それは堀切拓実も、図書室で会う春香も同じで、かなたの提案を聞いて「図書委員の仕事って事にして本の整理しちゃおう。自主的なら先生も何も言わないよ」と言い、堀切拓実も「今更アイツらと縁ができても困るから、タイミングが合えば俺も一緒に帰らせて」と言う。

そしてかなたが動いてくれて、【3組の男の子】が春香の言っていた問題の一木幸平だと公にできた。


危ない事の連続だった。

図書委員の終わり時間と一木幸平の部活終わりが重ならないようにしていたが、堀切拓実がサッカー部の友達から聞いた話だと、7月に入ってからは好き勝手に参加をしているらしく、あまりサッカー部だから意識すれば大丈夫とはならなかった。


図書委員の顧問と呼ぶべきか、岩渕と言う国語教師が夏休み目前に集まって本の整理をしている昇達を気にして、「なんでまだ本の整理をしてるんだ?」と声をかけてきた。


ここで昇達は大まかな話をして、3組の一木幸平が、西中に行った小岩茂という反社の息子という噂の生徒とつるんでいるのを目撃したと言い、一木が元北小学校で良い評判を聞かない事、そこから東中学校出身者と仲良くしている事、下手に繋がりが生まれて反社の息子に関わるなんて困るから、図書室の片付けを頼まれた事にして下校時刻をズラしている事。ただサッカー部だった一木が、部活にもキチンと出ていなくて、下校時刻が読みにくい事なんかも伝えると、岩渕はキチンとメモを取りながら話を整理して、「わかった」と言ってくれた。


「図書室の片付けは、先生が君達に頼んだ事にするから理由に使いなさい。3組の一木に関しては、それとなく先生達で気をつけるから、何かあったらすぐに言いなさい」


この言葉に4人揃って喜び「ありがとうございます」と言ったのだが、昇は若返ったせいで若干感覚が鈍ってしまったのだろう。

教師達もそんなに暇ではない。あまり役に立たない事を失念していた。


図書室で、夏休み中の本の貸出を午前中だけ行う為に登校してかなたと話す中、かなたは「3組の子、夏休み中は部活にキチンと来てるみたい」と言いながらサッカー部の活動を遠目に見ている。


図書室はエアコンが付いていて、快適な中で本を読みながら座るばかりで、本を借りに来る生徒なんてほぼいない。


「あれじゃない?悪い奴らと朝から晩まで居たくないから部活してるとか」

「あり得るね。本当ならお祭りとか皆で行きたかったけど危ないよね」

「あー…、確かに。大体いそうだよなー」

「せっかくの青春なのにねー」


昇とかなたは困り顔で話していると昼になる。

図書室の開放は昼までなので下校する事になり、サッカー部の練習を横目に帰れる。


一木幸平は今日もムードメーカー的に周りとサッカーをしていた。

もう一生サッカーをやり続けていてくれと昇は思ってしまう。


途中まで一緒に帰るのが基本になっているので、何のこともなくバカ話をしながら帰る。


「夏休みの宿題やった?」

「手持ち無沙汰で片手間で片付けた」

「凄いね。昔は違っていたよね?」


昔というのはこの世界に来る前の楠木昇の話で、あの頃はゲームに漫画に忙しかった。

だが大人になると何が忙しかったのかよくわからなくなる。

余暇の使い方にゲームは最適だ。

外に出て小岩茂や一木幸平に会わないで済むし、一度買えば長く遊べる。


だが最新作でも昇からすればレトロゲームだし、そもそも宿題の量やらやる事を意識すると、とてもそんな暇はない。

今やどうやってゲーム時間を作り出して1日8時間も眠れていたのかわからない。


「なんか小6の時に熱出してからゲームとかの興味が失せたんだよね」

「そう…なんだ」


かなたの返事が気になって「かなた?」と聞き返すと、「珍しい事があるんだなって思ったの」と言われる。

まあ確かに珍しい。

熱を出したら未来から戻ってきていた。


かなたには、「本当だ」と言ってから別れて帰る。


夏休みは、一度社会人を経験していると恐ろしい時間で、かえって不安になる。

手持ち無沙汰で宿題を片付けて、もう受験勉強までし始めていて、祖父母からは「長い休みは怖いか?」、「きっと大人の昇は働き者だったのね」と言われていた。


夏休み中は大した事が出来なかった。

それはどこに小岩茂と一木幸平がいるかわからなかったからで、かなたからは一度「山野さんからまた遊ぼうって誘われたけど、あの連中の話をして今は出歩かない方がいいって伝えておいたよ」と言われてしまいガッカリした。

本当なら夏を満喫したかった。

また今回も青春が味わえないのかと肩を落としていた。


9月。

新学期は嫌なカレンダー構成で始まる。

別にコレは誰が悪いわけでもない。


カレンダーを見ていると、一木幸平が誕生日が8月31日のクラスメイトを探してきて、宿題に追われるのに「誕生会やろうよ」と企画して、宿題の邪魔をしてきていた事を思い出して嫌な気持ちになった。


新学期は木曜日からで、2日出ると土日は休みでなんとなく億劫になる。

だが昇からしたら堀切拓実や春香に会える機会なので、行きたくならないなんてことはない。


そんな新学期、学校に行くととんでもない話が待っていた。

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