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はるかかなた。  作者: さんまぐ
【遥か彼方。編】◆やり直し・13歳~15歳。◇春香と接点を持つまで。
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第5話 持てた接点。

図書室で放課後の本の貸出を担当していたのは、たまたま春香達で「本読みに来たの?」なんて聞かれながら、仕事を頼まれる姿をみかねて手伝ってくれる。


昇からしたら想定外の接点にテンションは上がってしまう。


途中「楠木君は本好きだよね。図書カードの整理してると名前を見かけるよ」と春香から話しかけられる。

昇は戻ってきてから、最初はレトロゲームを懐かしいと言ってゲームを触ったりしたが、どれもプレイ済みで、早々に飽きてしまい読書に走り、余暇は宿題に充てたりしていた。


「うん。結構好き」

「私も結構読むんだけど、楠木君と読む本が似てるんだよね。オススメとかあったら教えてね」


それはそうだ。

昇の本好きは春香から始まった。

それまでは、映画化するような流行りの本しか読まなかった。

昇は春香の好きなものを読んで本が好きになっていたので趣味嗜好は似る。


「うん。今度何冊かピックアップするよ」


ここで一気にいかないのは、「グイグイ来られるの苦手なんだよねー」と春香がかつて昇に漏らしていたから。

適度な距離感を心がけていると、かなたが「キチンとやってよね」と話しかけてくる。


昇が「やってるよー」と返しながら本の整理をすると、かなたを見た春香は「ヤキモチかな?悪いことしちゃった」と言って困り笑顔になる。


「俺とかなたはそんなんじゃないよ。同じ小学校出身だから距離が近いんだよ」

「なるほど」


その後はかなたの目もあって、無駄口を叩かずに本の整理を終わらせると下校時間になる。


「昇くん。帰ろう」とかなたが誘ってきた時に、春香が「私も途中までいいかな?」と言ってついてくる。

春香と歩く久しぶりの道。

違うのは昇の背が伸びきっていなくて、今は春香の方が大きい事。


会話はあまり進むわけではないが、話題は噂の不良が西中に行っていて、「楠木君と桜さんは東中に来られて良かったよね」と春香が言うと、「本当だ」と返す昇と、「うん。良かったよ。怖いから元中小の友達にも連絡とってないんだよね」とかなたも続く。


「本当に酷い奴でさ。授業妨害もするし、小学生なのに堂々と喫煙もするしさ」


春香の話を聞きながら、昇は「ああ、してたしてた。賭けポーカーしてて一木がカモにされてた」と昔を思い出す。

一木幸平は4月が誕生月で、中学二年にして誕生日プレゼントをゲームソフトなんかにしないで現金を親に頼み、一万もの大金を手に入れた事を学校で愚かにも自慢をした。その結果、不良から賭けポーカーを持ち掛けられて全額巻き上げられていた。


どう見ても、不良は負ければ睨み付けて払わないか、一木に目をつけて何倍にもして搾り取る腹づもりなのに、一木は「俺なら平気だ」、「だって俺だよ」なんてぬかしてボロ負けして一万を取られた。


一木は報復が怖くて親には言えずに、別の同級生から借りたゲームソフトを買った事にして誤魔化し通していた。

そこから目をつけられた一木は、不良から逃げ出す為に昇の事を犠牲の生贄として売り込んでいた。

売り込まれていても、たいして取られる程の金もない昇は殴られるだけのまとにされるだけで、それを見た一木は楽しそうにクラスを盛り上げて、バラエティ番組の司会みたいな立ち振る舞いで不良に自分を売り込んでいた。


毎日毎日気が向くと学校に現れる不良に、「今日は昇を殴らないんですかぁ?」なんて言っていたのを思い出すと、今でもおぞ気がするし、さっき見せた表情を思い出して嫌な気持ちになっていた。


春香の家を知る昇は、そろそろ別れる場所だと思った時、春香が「折角だから仲良くなろうよ」と言い出した。


照れくさそうに「不良は別の学校だしさ、私も友達付き合いとかしたいよ」と言う春香。

昇は飛びつきたい気持ちを抑え込んで「かなたは?」と声をかける。


一瞬微妙な顔をした風に見えたかなただが、「うん。それいいね」と言うと、春香は夏休みに出かけようと言った。


昇は自分が中学一年生だということを忘れてしまい、大人になってから2人で行ったデートコースを思い浮かべてお金の心配をしたが、自分はまだ子供だし、春香の希望は動物園だった。

動物園に問題はなく話が進むと今度はメンバーが問題になる。


流石に昇1人でかなたと春香と出かけるのは気が引ける。

ダブルデートみたいな形で行けて、不意に春香と2人になれれば儲け物だと思ったが、男友達で無害な奴が思い浮かばない。

もう3ヶ月も東中学に居るので友達はできているが、邪推される事なく会えるやつは居ない。


かなたが「堀切君を呼ぼうよ。席も近いからよく話すし」と言うと、春香も「堀切拓実君?」と聞き返し、「元東小学校だから話したことあるし、いいかもね」と言ってくれる。


堀切拓実は同じクラスだが、コレと言って接点があるわけではない。だが今日のアレを見てまた一木が来たら嫌すぎる。


そんな時、春香が「なんかよく知らないけど、北小学校から来た子に気を付けてって言われたんだけど、一木君って男の子は危険なんだって」と口にした。


この世界ではかなたは知らない一木の存在に「一木君?何組の子?」と春香に聞く。


「確か3組。元北小学校で凄く意地悪で身勝手な子なんだけど、なんだかんだムードメーカーだから友達だけは多いんだって。だから堀切君に言うのは良いんだけどそこからその一木君が来るのは嫌かな?」


昇はそれこそ飛びつきたい気持ちを抑え込んで、「うん。悪い噂が出る相手は俺も嫌だな」とだけ言うと、かなたは「うん。そうだね。じゃあ堀切君には、私と山野さんと昇くんと4人で行くから、他の子には言ったり誘わないでねって言うね」と言ってくれた。


別れて帰る時、昇は久しぶりの春香との時間、そして優雅が出てくる前に春香との接点が持てたことが嬉しくて仕方なかった。

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