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はるかかなた。  作者: さんまぐ
【遥か彼方。編】◆やり直し・13歳~15歳。◇結実。

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第46話 結実と地獄。

翌週が都立の一般試験になった時、時期はバレンタインデーで、昨年は小岩茂の所でチョコを作って食べあった。


かなたは個別でおはぎとチョコプリンを作ってくれていて、春香も個別でくれたが市販品だった。

昇はそれでも嬉しくてかなたには新しいアルバムを、春香にはブックカバーをプレゼントしていた。


今年は受験でイベントが無しだとわかっていても昇には余裕がなくなっていた。

この1回の空白で何が起きるかわからない不安感や焦燥感に苛まれている。


周りには「なんで合格してからの方が余裕ないんだよ?」なんて揶揄われていたが、昇は漠然と何とかしないといけなくなっている。

だが、今できる事は何もなく、それによって今までのような自由な攻めの姿勢は無くなって、余裕のない守りの姿勢になっていた。


バレンタイン当日、かなたは「今年は2人ぼっちだけどさ、食べにきてよ」と誘ってくれて、かなたの家で「頑張っちゃった」と言ってチョコレートプリンの乗ったチョコレートパフェが出てきた時、昇のテンションは上がってしまう。


かなたは下心なんか感じさせない顔で、「これからも一緒に頑張ろうね昇くん」と言ってくれて、昇は「今年もアルバムを贈らせてね」と返して微笑み合う。


帰宅して夕飯時になると春香から電話が来て、何事かと思うと「昇?チョコレート…少し待ってくれる?受験終わったら渡したいの。14日じゃなくてもいいよね?」と言ってくれて、それこそ天に昇る気持ちで「勿論だよ。ありがとね。春香なら受かるよ。それで一緒の高校生になろうよ」と言うと、「これからも居てくれる?」と聞かれた。


「勿論だよ」と昇は返して電話を切った後で、勝負に出るしかないと思っていた。

試験当日、春香は帰宅すると昇を呼び出して「遅くなったけどチョコレートを貰って」と言って、市販品のチョコレートを渡してきた。


「本当なら作りたかったんだよ!特別なチョコにしたかったの!…それでキチンと告白…したかったの」


昇からしたら夢のようだった。

思わず聞き返してしまうと、「合格発表まで待って?合格したら付き合って?」と言われて昇は飛んで喜んで頷いていた。


もう帰りは、かつて春香から「昇…、私と仲良いよね。このまま付き合っちゃわない?」と歩きながら言われたあの日を思い出しながら、今の照れて俯いてキチンと告白と言ってくれた今の春香を思い出して、天にも昇る気持ちになっていた。


翌日、普通に顔を合わせた時にうまく誤魔化せているか心配してしまったが、普通にはできていたと思う。

そして春香はかなたに、「うん、チョコあげたよ」と頬を染めて報告をしていた。

案外繋がっていたんだなと思いながら、ようやく試験が終わったからと小岩茂を呼んで会い、皆で「遊ぼう!絶対遊ぼう!」と言って馬鹿笑いしていた。


春香は合格発表の日に無事に合格していて、両親と喜んだ報告を昇にしたあとで、「昇、ずっと好きでした。良かったら付き合ってください」と言ってくれた。


昇は涙を誤魔化すように「春香、俺もずっと春香が好きだった。つき合ってくれるよね?よろしくね」と言うと、手を繋いで「ガキだけど抱きしめさせて」と言って、春香を抱きしめて、「長かった。ようやくここまでこれた」と思っていた。


「えへへ。昇の抱きしめるって、なんかすっぽり私にフィットするね。落ち着くしホッとするよ」

「そう?相性だよね」


まだ15歳と思っていたが、昇は春香をもう一度抱きしめると、春香は昇の顔を見て目を瞑った。

あの日々を思い出しながら、5年ぶりに春香にキスをすると「わ…、初めてだよね?私も初めてだけど昇って…キスって…こんなものなの?」と驚いていた。


しまったと思いながら「相性だよ」と答えて、改めて恋人同士でこれからよろしくと言った。


卒業式の頃には付き合った噂が広まっていて、かなたに変な声が向くこともあったが、かなたは「そういうのじゃないよ。ね?昇くん。春香」と言っていたし、小岩茂も「やっとか?」なんて笑いながら卒業証書と合格通知を見せてきて、「これで文句はねえな昇っ!」と呼んで来て昇は「もちろんだぜ茂っ!」と呼びあった。


それだけで小岩茂は男泣きをして、「底辺のボンクラをこんな上まで引っ張ってくれて感謝してる。昇は俺のダチだ」と言うと、昇を抱きしめて「ありがとう」と何遍も言う。


「だからー、茂はこれで終わり感が強いんだよ。俺たちはこれからもずっと友達で、長生きすんだから、これからもよろしく」

「勿論だ!俺はお前の為になら鬼にだってなる!」


その姿に春香とかなたは笑いながら「もう、仲良すぎだよ」、「本当、鬼になるってねー」と言っていた。


春休みは本当に楽しかった。

進学先が違うメンバーでも気にせずに集まって、新学期の用意をして皆で食事をして遊んだりする。


昇は皆と会わない日でも春香と会って、春香の家に招かれる。

5年ぶりの春香の家、初めてだが初めてではない家。

築浅のマンションで、春香の母から「うちの春香をよろしくね。こんな素敵な彼氏ができてくれて一安心ね」と言われ、夕飯も食べていけと言われ、仕事から帰ってきた春香の父からも同じ事を言われた。


春香は満更ではなく、親の前でも昇を売り込んでくれて、帰りはエレベーターホールでキスをした。


小岩茂ではないが、これがゲームや物語ならハッピーエンドだ。

ついに結実したと昇は思っていた。


ほぼ毎日春香と居た。

とても幸せな日々を過ごしていた。



そして新学期、散る事なく4人揃って同じクラスになる。

入学式は流石の昇も顔ぶれに緊張が走る。

人が良さそうな子もいれば、周りのやつらを蹴落としてやると手当たり次第に睨んでいる子もいる。


担任は厳しそうな人だが「私は君たちが思いおもいの進路に就けるように、最大限の援助をする。心のままに学んでくれ。わからない事や悩みは全てぶつけてくれ。共に進んでいこう」と言ってくれて、人柄に救われた気がした。


校門で写真を撮るとき、昇は祖父母も連れてきていて何ショットもかなたに撮ってもらう。

春香とかなた、小岩茂との4人で撮った写真をスマホに転送してもらい、東中で仲が良かったメンバーに、「入学式!」と添えて4人の写真を送ると、続々と皆の写真が届く。


買ってもらったばかりのスマホでそれを見ていると、関谷優斗から[一木から来て「皆に見せてよ」って来たんだ]と言って一枚の写真が届いた。



昇は真っ青になって震えた。

吐き戻しそうだった。



榎取高校の校門の前で、一木幸平と肩を組む上田優雅の写真が届いていた。


優雅は東の京ではなく榎取に行っていた。

これは一木幸平からのメッセージだと思った。


タイムラインには町屋梅子達の[意味不明]、[なんで送ってくるかな?]、[好かれてるとか思ったとか?]、[横の男も嫌にならないのかな?]なんて書かれていたがそうじゃない。


上田優雅を使って昇から春香を奪いにくる。

そうとしか思えなかった。

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