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はるかかなた。  作者: さんまぐ
【遥か彼方。編】◆やり直し・13歳~15歳。◇結実。

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第41話 大樹珈琲。

だが一木幸平が求めるような嫌がらせのチャンスは案外近くにあった。

チェックポイントは何箇所か指定されていて、朝一番と昼と午後に、チェックポイントにいる教師に話しかければ後は自由行動だった。

嫌がらせはやろうと思えばやれる。


そして蒲生葉子と早稲田七海は方向音痴で、バス停の場所を聞いたのに見つけられなかったり乗り場を間違えたりしている。

地元民は慣れたもので、「そっちは住宅地にいくわよ?」なんて話しかけてくれて助かるが、一木幸平からすれば恥辱そのもので苛立ちながら、「こっち」と指示をして次の場所に向かう中、予定を見て嫌がらせのタイミングを見つけた一木幸平は行動を開始した。


昇の方はかつての動物園ダブルデートを彷彿させる内容で、楽しく過ごしている。

時折すれ違う他の班に「蒲生と早稲田見た?」と聞き、「うん。銭洗弁天ですれ違ったよ」なんて聞き出して、コピーを取っておいた蒲生班の予定表にチェックを入れていく。


本当なら全部重ならなくする事もできるのだが、午後の最終チェックポイントで重ならせて、蒲生と早稲田が泣いていたら2人を引き取るつもりでいた。


鎌倉はデートでもきたし、かなたと優雅を入れたグループでもきていた。

あの日は一木も居て、わざと昇と優雅と春香の3人で写るように誘導されてかなたに写真を撮ってもらった。


口直しではないが皆で回った箇所を春香と2人で回った。


春香はよく「昇と最初が良かったなぁ。これからは全部昇と最初がいいよ」と言ってくれていた。

それは昇も同じ気持ちだった。


ここからやり直す。

絶対に優雅に春香は渡さない。


かつて食べた団子屋で団子を食べると「前に優雅と食べたけど、美味しいんだよここ」と言った春香がいなくなる気がした。



午後のチェックポイント。

嫌だが周りを見ても蒲生葉子達の姿はない。

プラン通りに動けていれば、渋滞なんかがあっても誤差は10分くらいで済む。


「先生、蒲生チームは?」

「まだ来てないな。だが昼はキチンとチェックポイントに着いていたぞ?何か気になるのか?」


「俺達も手伝ったから無責任は嫌なんです」と返す昇に担任は「助かってるよ」と言ってほほ笑む。


「マジで勘弁してくださいよ」

「そう言わないでよ」


更に5分ほど待って居ると、真っ青な顔の関谷優斗とニヤケ顔の一木幸平が現れる。


一木幸平は昇を見て小さくニヤリと笑ってから「先生、蒲生さんと早稲田さんとはぐれました。渋滞でバスの乗り換えがギリギリだったから、関谷と走ってバスに乗り込んだら2人は来てなくて」と言った。


「何をやってんだ!」と声を荒げる担任に「困ったら先生の携帯に電話する事になってますし、俺達まではぐれたら問題だと思って、関谷と話して決めたんですよ?」と返す一木幸平。


聞こえていたかなたは「え!?蒲生さんと早稲田さんは土地勘無いと迷うかもって言っていたのに!」と口を挟むが、一木は「俺そんなの聞いてないし」と言って笑うと、「俺たちはこのまましおり通りに進んで帰りますね」と言って担任の言葉を遮って行ってしまう。


やられた。

1番考えていた最悪は、現地の不良を焚き付けて蒲生葉子と早稲田七海を献上して見捨ててしまう事だったが、それは各ポイントでおかしかったらすぐに担任に連絡をしてくれと町屋梅子達には頼んでいた。


それは見破られていたからか、一木幸平は最後にはぐれる事にしていた。

担任は憤慨しながら他の教師に電話をかけて連携を取ろうとしている。


蒲生葉子達が昇の言いつけを守ってくれていればまだなんとかなる事から、昇は「かなた!かなたは堀切とここで待機して。30分から1時間に一度連絡入れる。先生と居て。春香、着いてきて!俺と堀切で探してるとトラブルになるかも知れないから、女子に来て欲しいんだ!」と声をかけて走り始めると春香も着いてくる。

昇は時間経過が手遅れになると思っていて、「春香。手!」と言って春香の手を掴むと「ごめん!少し頑張って」と言って加速をした。


蒲生葉子と早稲田七海は、心細くても昇から言われていた通り、はぐれた場所でおとなしく待っていた。バス一本逃したからと、パニックになって、安易に次のバスに乗らずに待っていたのは本当に助かった。

次のバスは行き先が違っていたので、乗っていたら大変な事になったいた。

バス停で待つ蒲生葉子と早稲田七海を見て「居た!」、「良かったよ!蒲生さん!早稲田さん!」と昇と春香は言った。



「楠木君?」

「春香?」


蒲生葉子と早稲田七海は2人して安堵の表情を浮かべると、みるみる涙を浮かべて泣いてしまう。


「よかったよ。2人が約束を守ってくれて、動かないでくれていたから助けに来られたよ」

「本当、トラブルになってなくて良かった」


昇と春香は2人を落ち着かせながらバスの時刻を待つと、次のバスまではまだ20分もあった。


「仕方ない。先生に電話もしたいし電話を探そう」

昇はバス停周辺を探すと「大樹珈琲」という喫茶店を見つけた。

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