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はるかかなた。  作者: さんまぐ
【遥か彼方。編】◆やり直し・13歳~15歳。◇春香と接点を持つまで。
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第4話 かなたと委員会活動。

前の世界では、中学校には真面目に通えなかった。

一木や不良が跋扈する西中だけを理由にはできないが、スタートダッシュを間違えてしまい、取り返しがつかなくなる直前に、同じクラスにいた一木に引きずられるままに落ちこぼれコースに入っていた。

そして中2の初めに不良に目をつけられ、夏を越してなんとか復帰したが既に手遅れだった。

もうその時には選べる高校の幅は狭まっていた。


冬に起きた祖父の死を受けて、祖父の死を理由にして周りから距離を置き、奮起してなんとか行ける中でもマシな高校にしたが、それでも高校には春香も居なければ何もない。アルバイト先で春香に出会えていなければ退屈極まりなかった。

一木が憎らしいのは、不良に絡まれるなどの面倒事を周りに押し付けて、自分だけはポイントを押さえるので内申点で高校選びに幅を持たせていた。


今度はそうならない為にも、昇は努力を惜しまなかった。

11年前の勉強なんてすっかりわからなくなっていたが、下地と土台は残っていたので少し授業を聞いて、後は参考書を読めばなんとかなった。


両親は「本当にあの日から変わった」と言い、祖父母は「へっ、伊達に2回目じゃねえな」、「お婆ちゃんは嬉しいわ」と言ってくれる。

祖父母は昇の発言を信じていて、それでいながら「大宮の奴らってその後どうなる?…って聞いちゃダメだな。変化が出るとお前の2回目に悪影響かもな」と言って我慢してくれる。

大宮は埼玉に住む祖父の妹夫婦の一家で、そこの家にはニートギリギリの娘が居たりする。

祖父はその事を気にしていた。

ちなみにその娘は12年経っても立派なエリートニートだったりする。


祖父母の健康具合は前とは確実に違う。

見ていてそれがわかって、昇は前と確実に変わっている事を感じていた。


期末テストを終えた夏前、成績を見ると良いのか悪いのか、昇は上位陣に名を連ねていて、その中にはかなたもいて、何故か西中では成績が良くなかった一木幸平も居た。


一木幸平には気を付けていた。

東中は部活動が強制では無かったので、昇は部活には入らない。

だが一木はサッカー部を選んでいたので、サッカー部のクラスメイトとは接点をほぼ持たないようにしていたし、元北小学校のメンバーとも深く関わらないようにしていた。


だが、入学式に聞こえてきてしまった声が、昇に油断をさせてしまった。


一木幸平は北小学校では疎まれていたが、東小学校出身者達は一木の存在を知らずに疎まれていなかった。

一木幸平はこの世界では北小学校の友達ではなく、東中学校の友達と過ごしてしまっていた。

確かに北小学校から人生ロンダリングをする為に西中に行った事を考慮すれば、なんの間違いもなかった。


ある日、クラスメイトに途中まで帰ろうと誘われた時、隣のクラスの東小学校出身者も一緒に帰る話が出て、その輪の中に一木幸平がいた。


思い過ごしなのかも知れないが、一木幸平は昇を見てニヤリと笑った気がした。

それは数多くの嫌な過去が見せた気のせいかも知れないが、昇は嫌な汗が吹き出す。


ここで断る事は色々面倒な事になる。

東小学校出身者の覚えが悪いと、まわり回って春香の耳に尾ひれの付いた悪評が入りかねない。

春香とは挨拶程度なら出来る仲になっていた。

これからなのに悪評は困る。

だが一木幸平と遭う事は避けたかった。


昇が困ったその時、「昇くん。図書委員の仕事あるよ?」とかなたが声をかけてくれた。


「え?」

「忘れちゃった?帰ったりしないよね?」


何のことだかわからない。でも別れる機会は今しかない。


かなたに「ごめん。忘れてた」と言って、クラスメイトには「ごめん委員会活動だって」と断りを入れると、何も知らないクラスメイトは「仕方ないって。引き止めてくれた桜さんに感謝しなよ」と言って帰っていく。


昇は気のせいと思いたかったが、一木が不服そうな顔を一瞬見せた気がした。


クラスメイトが立ち去ってから「ごめん。委員会活動ってなんだっけ?」とかなたに声をかけると「ないよ」とかなたは言う。


「え?」

「なんか嫌そうな顔してたから助けてみたの。なにかあった?」


委員会活動なんてものはなく助け船だった事に、昇は感謝をしながら「なんか初めての奴とか居たし、今から仲良くなっても夏休みとか挟むから困ってた」と取り繕うと、かなたは「真面目だなぁ」と言ってから、「図書室に寄って時間潰して帰ろう」と昇を誘った。


昇が「助かるよ。ありがとう」と言って図書室に顔を出すと、そこには運悪く顧問の教師がいて、「図書委員が居るなら本の整理頼めるな!」と言われて本当に仕事をする羽目になる。


かなたは本を整理しながら「あはは、ごめんね」と昇に謝る。


「俺こそゴメン。俺と居たせいでかなたまで雑用頼まれちゃったな」

「ううん。いいよ。昇くんといたかったしさ」


かなたの言葉に聞き間違いを疑って「え?」と聞き返してしまうと、「ほら、元中小組だからさ」と言われて、かなたも不安な事とか慣れない事とかあるんだろうなと昇は思っていた。

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