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はるかかなた。  作者: さんまぐ
【遥か彼方。編】◆やり直し・13歳~15歳。◇結実。

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第39話 チーム再結成。

最近では電話を頻繁にする小岩茂から、「よう。クラス分けはどうだった?桜と同じクラスに戻れたか?」なんて聞かれて、昇は「かなたとはなれた。会田は離された」と返すが声は暗い。


「なんだ?山野と離れたか?」

「春香も一緒。でもなんでか一木が居る」


それだけで小岩茂は「マジかよ。頑張れよ」と返す。


「小岩の方は?」

「何の問題もなし。でも教師達は俺が何かをした時の為か、元中央と元東の生徒で固めて、楠木や堀切達に話が回るようにしてるな」

「なるほどね。中野さんは?」

「アイツ、ひと足先に待ってるねなんて言って京成学院だからなぁ」


京成学院は近くで1番偏差値が高い進学校で、中野真由は「茂には皆がいるから、私は思い切り頑張るね」と言って、勉強を頑張るとシレッと入学をしていた。


「進学校だし、行けるならいいよね」

「それは楠木や真由、後は桜あたりなら入れるけど、俺はそこまで行けねえよ。一応模試に志望校として書いたけど、C判定じゃ危な過ぎだ」

「諦めんなって。今年は遊んだりの回数は減るけどさ、小岩の誕生日会とかは6月だからやれるし、後は皆で模試に行った日は帰りに話すくらいはしようよ」

「おう」


終わりぎわの空気だが、小岩茂は「楠木」と言ってから、「感謝してる。ろくな学校に行けなかったはずの俺に、選択肢をくれた事を感謝してる」と言うと、「それは来年の春に言ってよ。今更ダメでしたは嫌だよ?」と昇は返す。


「…わかってる。頑張る」

「おう。よろしくー」


明るく努めて電話を切った昇は、手元にある年間予定表を見ながらため息をつく。


「あー…。校外学習とかヤバいよなぁ」


そう言ってしまえるのは過去の実績があるから。


前の世界で、西中は鎌倉に行って寺社仏閣の散策をしたのだが、一木幸平はわざと地元の不良を焚き付けて、昇や香川高松が襲われるように持っていき、学校全体を巻き込んで迷惑をかけて後ろでニヤニヤと笑っていた。


今回はどこに行くかわからないが、恐らくロクな事にはならない。

同じ班になって共に過ごすなんてこの世の終わりだし、別の班で困る生徒が出てきても嫌すぎる。


それは別のクラスでもあり得ることだから、同じ班にさえならなければいい。

それだけを思う事にした時、「なに唸ってんだよ昇」と言って祖父が部屋から出てくる。


祖父は死の未来を克服し、元気いっぱいで医者からも100まで生きると言われていた。

祖母も同じで「長生き間違いなし」と言われている。


「おめー、顔が暗いぜ?」

「一木と同じクラスにされた」


「直接対決か?沸るな。徹底的に潰しちまえよ」

「…あー…最悪はそれもいいんだけど、高校の邪魔とかされたくない」


「ちっ、やり口がゴミカスだな。だがそれなら奴は徹底的に挑発してくるぞ?」

「うん。わかってる」


「チーム再結成だな。去年は何もなかったからな」

「チームぅ?」


昇が何言ってるんだと思っていると、祖母が「はい。電話」と言ってスマホを渡してくる。

「婆ちゃん?」と聞き返しながら電話を取ると、「昇くん?悩んでるの?大丈夫だよ!皆で頑張ろうね!」とかなたが言った。


「かなたぁ?」

「うん。チームだからお婆ちゃんが電話をくれたんだよ!」


昇は口をパクパクさせながら祖母を見ると、「久しぶりにかなちゃんと電話しちゃった」と笑っている。


どうにも祖母は誤解していて、昇はかなたと仲良くなろうとしていると思い込んでいる。

だから中2のバレンタインは、かなたが教わりたいと言ったからと言い、祖母の友人として家に招いて、あんこの炊き方を教えておはぎを作っていた。


おはぎはとても美味かったけど、かなたはおはぎにプラスして、2年連続手作りのチョコプリンをくれているし、相変わらず味もうまい。

そして春香は小岩邸でのバレンタイン以外では市販品をくれていた。


こうなると実際周りの目も気になるし、小岩茂からは「お前、二股に見えるぞ?」と言われていて、辛うじて「そう言うんじゃないって」と返すくらいしかできない。


しかも昇の中にはかつて前の世界で一木に散々言われた「昇って桜狙い?無理だって、鏡観ろよ。顔も頭も釣り合わないんだから、恥をかくだけだって」の言葉があるし、かなたは基本的に誰にでも優しい。


それなのにまたかなたを巻き込んでしまう事に複雑な感情が出てきてしまう。


「昇くん?」

「いや、婆ちゃんがごめん」

「ううん。楽しいから平気だよ。頑張ろうね!」


「助かるよ」とだけ返した昇は、目の前でニコニコ笑顔の祖母に「勘弁してよ」と思っていた。

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