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はるかかなた。  作者: さんまぐ
【遥か彼方。編】◆やり直し・13歳~15歳。◇ファーストチョコレート。

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第36話 この先の話。

記念撮影を済ませると時刻は4時で、曽房が昇に「楠木さん、もう少し居てくださいますか?」と聞いてくる。


「曽房さん?」

「出来たら桜さんが撮られた写真を現像させてもらって、この家に飾りたいのです」


それは昇が勝手に返事のできない話で、「んー…、かなた?」と聞くと、かなたは嬉しそうに「私は大歓迎だよ!」と言う。


「春香や町屋達は?」

「まだ4時だから平気だよ」

「うちも6時くらいになるって言ってある」


そのまま女性陣皆のOKも出たので、男性陣には確認をせずに「まあ男達はいいや」と言うと、「問題なしです」と曽房に言った。


曽房は「では桜さん、お付き合いお願いします」と言って、かなたと外に行くと「え?俺いかないの?」と昇は聞いてしまうが、小岩茂は「楠木、菓子を食え。消費しろ」と言ってくる。


「無くなるまで小岩のご飯にしなよ」

「頭まで黒くしたんだから勘弁してくれ。もう嫌だよ」


この掛け合いに両親が喜び、皆が笑う。

なんとなく形が出来上がったと皆が思った時、町屋梅子や中野真由が「小岩君も東中に来ればいいのにね」、「それだよ茂!」と盛り上がり、昇が「それはダメだー」と言う。


そのまま「小岩は西中を一木から守るヒーローになるんだよ。小岩までこっちに来たら、西中が世紀末みたいな荒廃した世界になっちゃうよ。香川や高松がモヒカンになっちゃうって」と言う。


「何!?お前は俺に何を期待してるんだ!?」

「ヒーロー」


小岩茂が「嫌すぎる!」と言っている時に、昇は「半分冗談。でもダメだよ。小岩は俺と同じ高校になる為に勉強頑張るんだよ。東中に来て満足しちゃって、別の高校とか嫌すぎる」と言って笑う。


「え?昇くんって今回の試験…」

「上から20位以内だったよね?」

「茂?下から何番?」

「うっせーよ真由。今回は人生初の真ん中だ。くそっ、上から20?ふざけんなよ」


中野真由は昇に興味を持ち、「頭いいんだねぇ。狙ってる高校あるの?」と聞くと、昇は「ないよ」と答える。


本音は春香と同じ学校。優雅と春香を会わせない。それさえやり切れればどこでもいい。


「俺は、行きたいところが出来た時に行けないと困るから、どこでも行けるようにしてるんだよ」


この説明に真由は、「おお、凄いねー。茂をよろしくね」と言い、昇は「よーし、小岩が頑張れるように俺も頑張ろう」と笑う。


「バカ!これ以上入んねーんだよ!頭に入れても漢字も英単語も漏れて行くんだ!」

「それは自業自得だよ小岩。タバコとお酒やってたんでしょ?」

「え?」

「脳が死ぬからねぇ。自分でハードモードにするなんて、マゾイケメンだね小岩」

「嘘だろ?」

「いやいや、俺なんて酒もタバコもやりません。綺麗な身体の男子中学生ですからね」


ドヤ顔の昇に小岩茂は「三津下ァァッ!お前のせいで!」と怒鳴るが、昇は「断らない小岩が悪いよ」と言って、「酒とタバコを言い訳にしないで頑張ってよね」と釘を刺した。


離れて聞いていた小岩茂の両親は、「だから止めたのにな」、「自業自得ね」と言って笑っていて、三津下は青い顔で正座していた。


これも小岩家代々の教育方針で、住み込みで若い頃から働く曽房や三津下のような若い連中が最後には立派な大人になった実績から、一度きちんと注意をして、後は自主性に任せてしまっている。


だが、小岩茂の場合にはそれは最適ではない。

特に反社の噂でグレていた小岩茂は両親を避けていたので親の言葉を聞き入れようとはしなかったが、とは言え、いささか放任すぎる。

それを知らない昇達はそれこそ不思議そうに小岩茂の両親を見てしまった。

どうやってこの両親から小岩茂が育つのだろう。

そう思う者もいるが教育方針が原因だった。



1時間たってもかなたは戻ってこない。

心配する昇に、小岩が「店が混んでるんだろ?」と言いながら、「あー、でも修さんなら今日が楽しかったから、カメラ欲しいとか言ってお店に行ってるかも」と呟く。


「それ、ダメな奴だよ。かなたはカメラスイッチが入ると止まらないんだ。曽房さんに電話してみてよ」

「嘘だろ?」


曽房に電話をかけると、もう帰る所だと言うので詳しく聞かずに待つと、それは帰ってくるのが遅くなるよ。逆によくこんなに早く出来たなという内容だし、曽房は待ったなしでどこかに消えると、ノートパソコンを持ってきて「桜さん!よろしくお願いします」と言う。


かなたはカメラからSDカードを出すとパソコンに今日の写真を取り込ませて行く。


「坊ちゃん、後でスマートフォンに写真を入れて差し上げますからね」


恥ずかしくても断れない小岩茂に、昇が悪い顔で「かなた、今写真撮れる?」、「曽房さん紙とペンくれる?」と聞くと、真由と共謀して「勉強しろ」、「サボるな」、「早く寝ろ」、「酒飲むな」、「タバコ吸うな」と紙に書いて、皆で写真を何パターンも撮って、「小岩!これ待受にしてよ!」と言うと、曽房は「やりましょう」と言い、小岩の両親も大喜びで賛成する。


肩を落とすのは小岩茂だけで、「俺の自由…」と漏らすと、「散々自由してきたんだから、自由はおしまいだよ」、「前借りは終わりだね茂」と言われてしまった。


写真は集合写真が人数分、後はアルバムになっていて、それは小岩家の分となり、更に額装した集合写真まであって、小岩家のリビングを彩る事となった。


「…これ、飾るの?」

「恥ずかしいよ」

「素敵な写真です。桜さんの才能が溢れています」

「家宝だな」

「家宝ね」


皆が言う中、昇は「飾るのはいいけど、まだ増えますよ?」と言う。


小岩茂が「何!?」と聞き返すと、「だって小岩の誕生日会とかあるし。俺頑張ってボール紙で王冠作るし、堀切達はボール紙と折り紙でメダル作るし、かなたは撮影係で、春香達は模造紙に【祝・小岩茂14歳!】ってやるから、それを写真撮って額装して玄関に飾って欲しい」と昇は言う。


昇が言う。

それ即ち決定事項。


小岩茂は「恥ずかしいって!やだよ!」と言ったが、真由は「私も参加する!」と言い、昇は「小岩?1番の笑顔が撮れるまで、何枚もかなたに写真を頼むから、おじさん、失敗作達も引き延ばして、飾ってくれますか?」と聞いてしまうと、「頑張るね!」、「おう、茂の部屋に飾るよ」と続き、曽房が「坊ちゃんのお誕生日は時の記念日6月10日です」とバラしてしまうと、昇は善は急げとばかりに、「おお、予定空けとこう!かなた来れる?春香も平気?中野さんは決定で、堀切達も来れるよね?王子達もよろしくね!」と皆を誘ってしまう。


「おい!楠木!」

「小岩、もう決まった事なんだ。小岩以外皆が賛成してるし、多数決なんだ」


「馬鹿野郎!俺の誕生日だぞ!なんで俺の意思が無視されるんだ!?」

「どうせ小岩って『誕生日?知らね。いらね。やらね。金だけくれ』とかやってたでしょ?お父さんお母さんや曽房さんを喜ばせるんだよ」


まさにその通り過ぎて、何も言えない小岩茂を見て、「はい決定ー」と言った所で帰る話になる。

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