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はるかかなた。  作者: さんまぐ
【遥か彼方。編】◆やり直し・13歳~15歳。◇春香と接点を持つまで。
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第3話 東中学校での出会い。

昇は未だ目覚めぬ夢の中で、無事に中学生になっていた。

西中とは色違いのブレザーに身を包み、周りの皆が照れ臭がる中、祖父母まで連れて入学式に行く。


昔は照れから祖父に憎まれ口を叩き、祖父は不貞腐れていたが、この世界では昇から「爺ちゃんと婆ちゃんも来てよ」と誘うと、祖父は「へっ、来いって言われりゃあー行ってやるぜ」と言って着いてきて、孫の晴れ姿を見て泣いて喜ぶ。


入学式、勝手を知らない東中学校の校舎に少し戸惑うが、入学者のクラス分けと名簿を見て喜びと困惑に襲われた。


喜びは当然だが山野春香やまのはるかの名前を確認した事と、噂の反社の息子がいない事。

まあ一部残念なのは山野春香は一組で、昇は四組で接点はない事だったりする。


だが問題は困惑の方で、一つは以前なら西中学校に進学したはずのさくらかなたが東中学校にいて四組な事、後は大問題としてもよいが、同じく西中学校で出会うはずの一木幸平いちきこうへいが東中学校にいる事だった。


運良く一木のクラスは三組で、クラスが違っていたので会わなければ何とでもなるが、春香と優雅の結婚式でもそうだったが、一木の奴はバラエティ番組の司会者に憧れでもあるのか、盤面や人心を乱して笑いを取る。擦っていい人間と決めつけるとこれでもかと擦って笑いを取る。

一木幸平は自分の幸せを最優先して他人の幸せを妬み奪う。親はどんなつもりで幸平なんて名前を付けたのだろうか?きっと他人の幸せを潰して真っ平らにするから幸平なんだと中学の時から12年間で何回も思った。


西中で不良に目をつけられたのも一木幸平が悪目立ちをした時に、昇を犠牲の生贄にすることで、いい立ち位置に逃げ仰ていたし、昇以外もやられたが男女で仲良くなろうとするとことごとく邪魔をしてくる。


優雅の浮気を春香にバラしたのも一木、その浮気相手達に春香の事を教えたのも一木、昇が社会人の研修中に優雅と春香を引き合わせたのも一木、それを帰れない地方都市にいる昇に聞かせてきたのも一木だった。

慌てて悶々とする昇の事をグループで共有して笑いを取っていた一木。


もう二度と関わらないと思っていたのに同じ中学になるとは思ってもみなかった。


唯一の救いは小学校が違う事。

接点さえ作らなければ関わらないで済む。

そう思っていると、春香が両親とやってくる。


春香は当然昇を知らない。

幼さの残る顔で親と写真を撮っている。


そこに「おはよう」と話しかけてきたのはかなただった。


「昇くんも東にしたんだね」

「うん。かなたもなんだね」


そんな白々しく聞こえる中、かなたの両親と昇の両親は「読み勝ちした」、「こっちに危険な子は居ない」「中小なかしょうから越境したのはウチと楠木さんのところくらいだから3年間よろしくね」、「ウチこそ昇をよろしくね」なんて話している。


それが聞こえたからだろう。かなたは「中央小から東中に来たのは私達だけみたいだから、仲良くしようね」と声をかけてくる。


昇はあの結婚式の日に話を聞いてくれて、家まで送ってくれたかなたを思い出して、「うん。これからよろしく」と言って、親達に手を振ると教室へと入っていった。


アウェーの空気に身構えた昇とかなただったが、それは杞憂だった。

後は中学一年生は二度目なので何の問題もない。

友達作りで失敗する事もなく、クラスメイト達は「中央から来たの?」、「皆西じゃないの?」なんて話しかけてきてくれて、「うちはど真ん中だからどっちでも良くてさ、人の多い方に行きたかったんだ」と昇が言うと、かなたも「私も同じ、別に嫌なこととかは無かったけど、こっちの方が人が多いから楽しそうだったし、昇くんの所と同じで、うちも真ん中にあったから東中にしたの」と言って仲良くなる。


東中学校は東小学校と北小学校からの生徒が多数で、それぞれの塊が出来ていたが、そんなに気になる事もなかった。


問題は北小学校出身者で、そこの繋がりから一木幸平が現れると話にならなくなる。

昇はそれだけに注意をして、まずは足場作りから始める事にした。


入学式は穏やかで、これこそ入学式といった感じだった。

テレビで見る成人式に出てくるような激しい格好の、新成人のような格好の父兄も居なければ、入学式から金に近い茶髪の不良とその取り巻き達もいない入学式。漏れ聞こえてくるのは、あの一家が西中に行ってくれてホッとしたと言う事だった。


ここで昇は一つの事に気付き、それが後の油断に繋がる。

同じクラスになった連中や、その保護者の中で北小学校出身者が口々に、一木幸平が東中学校に来た事を嫌がっていた。

そう、一木も小学校で猛威を振るっていて、人生ロンダリングをする目的で西中に来て暴れ散らかした。


だが、ならなんで一木は西中ではなく東中に来たのか?わからない事ばかりだった。

考えてもわからないまま始まる新生活。


昇はまず最初に春香との接点を作る為に図書委員に立候補をする。

春香は本好きで、付き合った時には2人で本を貸し借りしてお互いに読み合っていた。


「私、本が好きだから中学生の時は図書委員会だったんだよね」と言った顔と声が今も思い出される。


驚いたのはかなたも図書委員に立候補をして、周りからは「中小コンビで頑張れー」なんて言われたりする。

前回、西中のかなたは保健委員だった。

あの面倒見のいいかなたが図書委員なのには驚いたが、考えても答えの出ない誤差として気にしない事にした。


初めての委員会活動。

顔合わせをする中に春香がいた。

話すきっかけはこれからいくらでもある。

まずは顔を覚えてもらう。

今は優雅より先に会えていて、アドバンテージはまだまだある。

焦る必要はない。


遠目に見る春香は春香のままだった。


「ごめんね昇」

「早く昇に会えていたら違っていたのに」


あのゲリラ豪雨の中見せた顔と声。

今でも思い出す焦燥感と後悔。

今度こそ失わない。


優雅より早く会えたんだ。

今度こそ春香と結ばれる。

昇はその事だけを考えていた。

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