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はるかかなた。  作者: さんまぐ
【遥か彼方。編】◆やり直し・13歳~15歳。◇好きと言い守ると誓う。

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第19話 昇の考え。

翌週、曽房達は行動を起こしていた。

弁護士が謝罪に回り、誠意をもって話をする事で、ある程度は丸く?収まる。

山田真の所に関しては会田晶の説明の甲斐もあって怖い思いをせずに被害届を取り下げる事ができた。


そんな中でも一木幸平は、リスク面から最後まで徹底抗戦の構えをとっていた。

だが、逆に曽房と弁護士の手により、一木幸平が小岩茂の名前を使って好き勝手やっていた事を暴かれて、その被害者達が一木幸平に対して被害届を提出する事となる。

主に被害者は一木幸平と小岩茂を知らない元中央小学校のメンバー達で、かなたから話が回ってきた昇は納得をしてしまう。


結果、話は有耶無耶になり、小岩に出ていた被害届の一部、金銭やゲームソフト、漫画本なんかの巻き上げは、小岩の名を語った一木がやっていたもので、学校と警察を巻き込んだものになる。


昇は西中には根回しなんてしていないので、一木幸平の家は弁護士費用に加えて、ゲームソフトや漫画本の返還を求められ、汚損や破損の酷いものは現金で払う事になる。

その上で慰謝料まで払い、なんとか被害届を取り下げてもらう羽目となった。

親から大目玉を食らった一木幸平は、小遣いを減らされて、休日の交友関係も何も禁止されてしまった。


大人しくする事になった一木一派をよそに、昇の周りにはクラスメイト達がいて、春香も休み時間に昇の所に顔を出すようになる。


まだ好き嫌いを言い合う遊びは流行っていて、二年生や三年生の間でも好き嫌いを言い合っていて、相思相愛につながるケースもある話が出てきてしまう。

実の所、昇はこの世界に来た時に上級生と下級生の名前と顔が一致しなくなったのであまり関わっていない。


それでも春香から「昇くん。2年の高柳先輩と山奈先輩も好き嫌いから付き合ったんだよ」なんて教われば、前の時間に会ったこともないはずなのに、顔を見て記憶を探ったりしていた。


そんな事もあり、試験が明けたある日、かなたから図書委員会の仕事中に「ねえ昇くん?」と質問と相談をされた。

それは元中央小学校のクラスメイト達から、昇と小岩茂の仲を聞かれるモノで、昇は「普通なのに探るんだね」と言ってかなたに笑う。


かなたは「昇くんは凄いね。なんか大人の人みたい」と言ってきて、昇は前とどこか違ってしまっているかと驚きながら「俺が?チビだよ?」と誤魔化して笑う。

かなたがしてきた相談は「この先はなんて答える?」で、「別に会えば手を振る仲で、電話したりする仲って答えて平気だよ」と答えておいた。


昇は「そろそろかな?」と笑ってかなたに説明すると、かなたは「えぇ?怒られない?」と驚いた顔をする。


昇は「平気だよ。小岩ってさ、悪い奴じゃないんだよ。だからキチンと話して言葉が届けば平気なんだ。かなたも今度話してみる?」と聞くと、かなたは「昇くんといる時なら」と言うので昇は「よろしくー」と言って笑った。


下心がないと言えば嘘になる。

毒を以て毒を制する。

小岩茂との付き合いで、春香もかなたも自分の周りも守ろうと思っていた。



その晩、帰ると祖父が「あの小僧から電話が来たぞ?委員会活動だって言って帰ってくる時間伝えたからそろそろ電話くるぞ」と言われる。


嫌がることなく「サンキュー爺ちゃん」と返す昇に、祖父が「お前、どうすんだ?」と聞くと、昇は「適度な距離感でアイツも巻き込むよ。俺の2回目は思ったよりハードだからさ、味方は多い方がいいんだ」と答えた。


祖父は「成程な、アイツもチームメンバーだな」と笑って部屋に戻ると、本当に監視でもされているように電話が鳴る。


昇は裏声で電話に出ると「小岩です。楠木くん居ますか?」と言われて、昇は「あ、小岩?ただいま。オレオレ、今帰ってきて爺ちゃんから電話あったって聞いたよ。あんがとね」と言う。


忌々しそうに「お前、裏声…」と言う小岩茂に、「気づいて欲しかったけどまだダメだったかぁ」と言う昇。


「このヤロ…。まあいいや。流行ってたぞ。お前の言った好き嫌い」

「おお、やっぱり西中にも行ったかー、皆真っ赤だった?」

「まあな。なんかよく知らない奴が勘違いしてたよ」


昇の「面白かった?」という問いに、「…少しだけ。趣味悪いから喜ばなかった」と返す小岩茂は案外キチンとした人間だとわかる。


「ったく、毎朝キチンと学校行ったせいで、夜なんか眠くてたまんねえ」と恩着せがましく言ってから「じゃまたな」と言って電話を切る小岩茂。


昇は「うんうん。ありがとう。またね」と返事をしたが、狙い通りの展開に笑ってしまわないように大変だった。制服を脱いで部屋着に着替えてから、わざと小岩茂の家に電話をすると案の定曽房が電話に出た。

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