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はるかかなた。  作者: さんまぐ
【遥か彼方。編】◆やり直し・13歳~15歳。◇過去と対峙する。

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第13話 楠木家と小岩家の話し合い。

話し合いは至ってシンプル。

謝るし茶封筒も渡すから、被害届は遠慮してくれないかと言うものだった。

不貞腐れて左頬を腫らした小岩茂と現れたのは曽房修そぼうおさむと名乗った、小岩家に住み込みで働く人間で、小岩茂の世話人で家族代わりで、噂通り反社だった場合には構成員だった。


かつて西中の入学式に来ていたような、ド派手金髪の危険人物ではないが、瞳の奥からは底知れないプレッシャーを放つし、見た目は何処にでもいる営業職のサラリーマンにも見えない事はない。


「本来なら茂の父が来るべきですが、ご迷惑になるので代わりに私が来ました」と謝る曽房と小岩茂を居間に招くと、昇は「迷惑?」と聞き返す。


小岩巌こいわいわおは、見た目が私より少し怖いのと、茂の反抗期で親子仲が良くない為に、突然言い争いになったりしてしまい、謝罪の場には向かないかと思いました」と言う曽房に、昇は「小岩もイケメンだから、お父さんも格好良さそうなのに」と口を挟むと、両親は「ひぃっ!?」と情けない声を出して、祖父は「だな」と言って笑う。


「随分と余裕だな?立場が上だとでも思ってんのか?」と小岩茂が凄んでくるが、昇からすれば交渉が決裂したら被害届を出せばいいだけで気楽だし、今倒すべきは一木幸平なので小岩茂に関しては問題があまりない。


「違うって。やっぱり東中でも皆と少し話したけどさ、変なのはあの一木って奴なんだって。だから本来なら俺も小岩も接点がないのにモメるなんて変だよ」


昇の態度に小岩は睨みつけながら、「んだそれ?」と聞き返すと、「お前は俺の舎弟を馬鹿にして、俺のことも悪く言ったんだろ?」と続ける。


頭が硬い。

話を聞く気がない。


そこを諌めるのが曽房の仕事で、「坊ちゃん」と注意すると、昇を見て「詳しくお聞きしても?」と聞き返してくる。


昇はそもそもの経緯として7月頭の話をする。

確かに帰る話は出たが、委員会活動があって帰らなかった事。

そこに一木幸平がいたが自己紹介すらしていない、挨拶すらしてない別クラスの生徒で、いきなり夏休みが終わって学校に行ったら、そいつらは補導されていて、何故か昇を恨んで敵視していた事。

それをキチンと理路整然に話して周りの納得を得たが、帰り道に一木幸平と、一木に無理やり付き合わされている連中が待ち伏せしていて、因縁をつけられたがやはり何を聞いても一木幸平の妄想なんかだった事を説明する。


「ここまでが金曜日。それで少し聞いてみたら、その後で一木は小岩に告げ口したんだって」


その説明を改めて聞いて、「あぁ?」と聞き返す小岩に、「だから俺たちは何の接点もないんだよ」と昇は言った後で、曽房を見て「誘導に聞こえるかもしれないけどさ」と言ってから、「俺が言ってない事を一木は言ったと言った。それは一木の作り話かもしれないけど、本音かもしれないと思わない?」と質問をする。


「確かに」と曽房が言うのに合わせて、ICレコーダーを取り出して再生する。

そこには一木が会田晶に向けて話していた事、裏ではこんな事を言っていたという内容が入っている。


聞いていて顔を真っ赤にして怒る小岩茂は、確かに舎弟に対しての面倒見はいいのかもしれない。

曽房は顔をしかめて、「それで?どうしろと?」と聞いてくる。


「まあ簡単な話なんだけどさ、被害届だっけ?警察からも出そうよって言われてる。なんか警察は他の連中にも言ってるみたい。俺の方は金持ってこいとかあったよね。質問に質問して申し訳ないけど何個被害届が出るとヤバいの?」


曽房もそこまで甘くなく、「件数は言えませんが危険な状況です。今の話が本当なら、なんとか他の方の連絡先を調べてお話しをしに行かないと」としか言わない。


「で、俺としてはある条件を飲んでくれたら、茶封筒もいらないし被害届なんて出さないよ」


昇の発言に「ンダコラ!?脅す気か!?」と問い詰めてくる小岩茂を、曽房が「坊ちゃん!短慮はおやめなさい!」と注意をするがまあ怖いし、両親は「ひぃぃ」とか言っていて話にならない。


曽房は表情を戻すと、「失礼。条件とは?」と聞いてくる。


「まだ数人にしか話せてないんだけどさ、小岩に金取られたり殴られたりした奴らには、なかった事にする代わりに、意味もなく絡んでくる真似とかしないで貰えないかな?ほら、ナメられたらおしまいとかあるかも知れないけど、俺たちみたいな小物は邪魔にもならないよね?万単位で取られてる奴の説得とかも、一応ダメ元でするからさ」


曽房はそれこそ人殺しの顔になると「坊ちゃん?お小遣いなら十分に渡していますよね?なぜそのような真似を?」と圧を放ち、青くなった小岩茂は昇を睨む。


「坊ちゃんとは帰ったらお話をしましょう」と言う曽房は、「それをして何になります?」と昇に聞く。


「えぇ、お祭りとか行きたかったけど、絡まれて殴られて金取られてっていうのが怖くて行けなかったんだよね。だから俺は小岩がそんな事しなくなったから、安心して出かけようって友達を誘いたいんだよね」


「成程。では楠木さん、あなたの望みは、東中に手を出さない事なんですね?」

「まあ微妙に違うけど概ねそう。一木みたいに陰で悪口言いながら、東中で小岩の名前を使って勝手する奴はゴメンなんだよね」


「悪くありません。それをしたら被害届は出さないでくださいますね?」

「一応ね」


「なんだそりゃ!まだなんかあんのかコラ!?」

「坊ちゃん!!」


昇はこのやり取りがコントのようで面白くなってしまうが、両親はガクブルで限界が近い。


「なんかってかさ小岩の為だよ。陰口叩いてる連中は友達面しながら、今回みたいに焚き付けてのうのうとしてるだろ?だから俺は小岩が何もしていない奴らには何もしないって約束をもらったら、無理矢理集まってる奴らにはキチンと小岩とサヨナラしてもらって、被害届も出さないでもらって、クリーンな関係に戻ってもらいたいんだって。小岩だって嫌々来てるやつと楽しく遊べないだろ?」


小岩茂は渋い顔でそれをしたら友達なんていなくなるという顔をしているし、その顔を見て悲しそうな顔をした曽房は昇を見て「楠木さん?それだと被害届の件と、話が変わってきてしまいますが?」と聞き直す。


「だから小岩を陥れたい奴を炙り出したくて、俺は保留の形をとりながら皆にも出さない方向で話を進める。それでも出たらごめんね。それはなんとか解決して。でも俺が出すと思い込んでる奴の中で、一木みたいな奴はこの機会に被害届を出すよ。俺のせいにして小岩を陥れる。それで自分が出した事は黙っていて俺のせいにする。でも、後で知られた時には、小岩は学校に来られなくなってる。そう言うズルい奴をなんとかしたいんだ」


小岩茂は「それでお前に何の得があるんだよ?」と不思議そうに聞いてくる。


「だから、お祭りとかカラオケとかボーリング行った時に、絡まれて殴られてお金取られたらやなんだって。後はお前も酒を飲めとかお前もタバコを吸えとかも嫌だからね」


「坊ちゃん?中学生相手にそんな真似を?」と聞いた曽房は、再び人殺しの顔をした後で、昇に「炙り出しまでしてくださるんですか?」と聞くと、昇は「東中でもさ、なんか話が飛躍しすぎてて、ありえないとは思いながらも何処かであるかもってなってるのが、一木みたいなのが小岩の名前使って女の子にいやらしい事をしたり、小岩に女の子を貢いだりとかしそうで、もう無茶苦茶だから小岩はそんな事しない。小岩の名前だけ使う奴らは、そんな真似ができなくなって欲しいんだよね」と答えると、曽房は姿勢を正して頭を下げて、「そこまでのご厚意。ありがとうございます」と言った。

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