第100話 今回怒られたのは…。
細かくしたら終わらないので、この先の事は簡単に書いていく。
中学生になる時、昇はキチンと私を彼女だと公言する。
そして髪を黒くしてキチンとした茂くんと東中に入学をして、美咲の許可を得てから山田くんを戻したが、山田くんは大学で出会う運命の彼女にお熱で、美咲への興味はこれっぽっちも無くなっていて、美咲は清々したと言いながらも、少し面白くなさそうで、それでいて堀切くんと仲良くしている。
七海と葉子も「またここからかー」なんて言いながらも毎日を楽しんでいて、打倒一木、一木完封に燃えている。
その一木だが、今までの経験値が何一つ通用しない。
前の時と違うのは茂くんが3組になり、一木を抑え込んでくれるし、この段階で私たちの仲は良くて、昇狙いの一木の攻撃はただの一つも通用しない。
狙いを上級生に切り替えようとしたり、西中に切り替えようとしたが、それすらすぐに昇と茂くんがフォローに入り、女の子達の事は私達がフォローに入る。
カップル達の破局なんてものは起こさせやしない。
昇がまた好きと言う遊びを流行らせて、キチンと学生の立場での恋愛をする分には問題はない事を私と昇、梅子と会田くん達で証明していく。
それでいて成績も良くて「やりすぎかな?」なんて話してしまうが充実している。
一木は苦し紛れに春香を焚き付けるが春香は動じない。
だがまあ動じないどころか、これまでの記憶があるせいで、昇の良さを再認識して暴走し始めた。
そしてそれは一木が狙った動きもするが、昇は動じずに「春香、俺の彼女はかなただよ」と言ってくれる。
春香だけは「コレで最後なら、キチンと悔いなく生きたいの」と言って、昇狙いにシフトして、私と茂くんに釘を刺されても、「それでも」と言い出して呆れさせる。
それを昇が仲裁して、「一木に振り回されるより、狙いが俺なら分かりやすくていいよ」と言って落ち着く。
林間学校も運動会も皆で楽しむ。
その中でも内心ヒヤヒヤしてしまったのは、一木の目的を知った七海と葉子と美咲、会田くんと堀切くんが率先して、一木が何かをやらかす度に「つまらない奴」、「あれで面白いとか思ってるのかな?」、「アレでお笑いに詳しいとか北小でもドヤってたんだよ?滑稽で笑えるよね。もしかして笑わせようとしてやっているのかな?」、「頑張ってるんだからさ、やめてやれって」、「王子、本当の事言ってやるなよ。中学生なんだぜ俺達?頑張ってるって、泣いちゃうよ」と言って追い討ちをかける事。
風は吹かないが、何かしでかさないか本気でヒヤヒヤしてしまった。
だが、あの一木が泣きそうな顔で「ぐぬぬ」って唸っていて、本人は26歳の余裕のつもりでいたのに、言い負かされている姿はこ気味良い。
今日も壊れた一木は美咲達に言われているのに昇を睨んで「笑っていられるのは今のうち、最後に地獄を見て絶望しろ」なんて言っている。
そんな最後は来ない。
もう、昇に初恋の呪いはない。
私と付き合っている姿を見ても信じられない一木はどうかしているのだろう。
既定ルートでは茂くんが運動会でやらかして、昇をキレさせた事で皆の昇を見る目が変わるが、今回はそれもないのでどう変化するかなと思ったのだが、この前の居酒屋さんが巌さんから運動会と聞いて唐揚げと焼き鳥の差し入れに来た。
「楠木さん」と昇の名を呼んでくるお弟子さんを皆に紹介した昇は、出されたタレモモにはご満悦だったし、褒められたお弟子さんが「うっす!研鑽しました!」と喜びを見せたが、「からあげも是非」と言って山盛りのからあげを出した時に終わった。
「おい」
昇のこのひと言で茂くんは青い顔で「ひぃ」と言い出し、何も知らない周りがどよめく。
そんな中キレた昇は「てめぇ!俺の言った事の本質がわかってねぇじゃねぇか!?弁当用に持ってくるのと、店用の出来立てを食べてもらうレシピを一緒にすんじゃねぇよ!粉が重ったるいし!冷めたせいで残念からあげになってんだよ!曽房さん達はお持ち帰り前提で粉から選んでるってのに!何やってんだバカヤロウ!!」と怒鳴りつけて、「かなた!かなたからあげ一個ちょうだい!」と言う。
私の唐揚げはキチンとお弁当仕様にしてあるし、今から薫と香の運動会を意識して全部1人で作ってある。
「食べてみて。素人のとか子供がとかぬかすなら店潰すよ?」
「は…はい!!いただきます!!」
お弟子さんは私の唐揚げを食べて、「あれ?衣がキチンと厚いのに、べじゃべしゃしてなくて軽いし、手もそんなに汚れない」と驚く。
「粉の比率を昇に聞いて変えました。昇は料理は苦手ですけど、材料選びと下ごしらえは得意なんです」と言う私を見て、お弟子さんは昇に「楠木さん!ご指導よろしくお願いします!」と言って土下座する。
昇はお弟子さんの唐揚げを見て「粉…」と言うと、「まあ順当に埼玉でいいか。おじさん!」と巌さんを呼ぶ。
巌さんは笑顔で「運動会の後でだね?行く前にお風呂は入ろうね」と言って埼玉行きが決まってしまう。
「とりあえずこの残念山盛り唐揚げだよなどうすっかな」と言った昇は、すぐに茂くんの肩に手を置いて「茂、よろしく。食べて」と言う。
「はぁ!?やだよ。お前が褒めない食い物って本当に残念だからやだって!」
「ウルセェ!食材の神様に申し訳が立たないだろ!鳥神様に許して貰う為にもガタガタ言わずに食ってくれ!その怒りはお弟子さんに向けてくれ!」
とは言え味付けは悪くない。
堀切くん達も付き合ってくれて、会田くん達や皆で食べればあっという間に食べ終わり、安堵するお弟子さんに、「コレが実力とか寝ぼけたことをぬかさないでよね?」と昇が怖い顔で脅かしていた。
今回はこれが良い刺激になってくれて一安心した。
中にはこんな昇の眩しさを妬んで、一木に乗せられてアンチに回る連中も居たりするが、昇からすれば「ハンバーグだって、あんなに美味しいのに、皆が好きなんじゃないんだから仕方ないって」で、そのアンチさん達が一木派として転落人生を突き進んでいく。
流石にそれは助けない。




