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第1話 深く病む

 何もかもうまくいかない。

 坂上(さかがみ)(たつみ)の人生、ずっとこうだ。


 小学生の頃、クラスメイトが転んで泣いた。

 先生はオレが暴力を振るったと決めつけて、オレを叱りつけた。


 中学生の頃、クラスメイトの財布が無くなった。

 オレのカバンの中身をぶちまけられた。


 高校生の頃、先輩に呼び出された。

 突然、生意気だと言われて殴られた。


 大学生の頃、周りから距離を置かれていた。

 オレが犯罪者だという噂が流れていたからだ。


 何とか小さな商社に就職。

 でも、会ったこともない取引先をオレが怒らせたと難癖をつけられ、先週クビになった。新卒で入社して八ヶ月。もう無職だ。


 そして改めての就職活動中だが、書類選考は通っても、まともに面接すらしてもらえない会社もあった。正直、もうどうしたらいいのか分からない。


 原因は分かっている。

 オレの目つきの悪さだ。

 別に怒ってるつもりも、誰かを睨んでいるつもりもない。普通にしているだけなのに、周囲はオレの目つきだけですべてを判断する。こいつは性根から悪い奴だと。こいつは犯罪を犯したことがあると。

 よく『ヒトは見た目が九割』なんて言うが、オレの場合は十割だ。この目つきがオレの人生の邪魔をしている。


 一体オレが何をしたっていうんだ。

 オレは普通に生きてるだけなのに。

 世の中への憎しみで膨れ上がるオレの心。


 元上司を殺したい。

 元同僚を殺したい。

 面接官を殺したい。


 そんなことはできない。

 オレはそこまでバカじゃない。


 でも、いつかしてしまいそうなんだ。

 我慢できずに、刃物を振り回している未来が脳裏に浮かぶんだ。

 オレはきっと生まれながらの犯罪者なんだ。


 何があったって、オレはずっと我慢してきた。

 子どもの頃からずっとずっと我慢してきた。

 しかし、ひとには限界がある。


 オレは心が深く病み始めていた。



挿絵(By みてみん)



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