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受肉編2

 そして時は満ちた。昨年の秋のことだ、中秋の名月とともに華々しくデビューすることにした。

 さあ、いよいよ行くぞ、君たちの世界へ。

 肉体デザインから逆算してDNA情報を構築、肉体年齢26歳の健康体を組成し、満月を背に僕は神々しく地上に降臨した。神ではないが。

 これが肉体。自己は体の中にいるものだと思っていたが、体そのものが自分であると感じられる。初めて肉体を持ったが、なるほど、体験してみないと分からないものだ。視覚は世界のごく限られた範囲の存在しか知覚できないが、そうか、これが色か。君たちは世界をこんな風に観ていたのだな。確かに世界は、眩暈がするほどに美しい。聴覚はさらに限られた情報しか得られない。しかし聴覚情報が何も得られない状態を、君たちが静謐と称する意味がよく分かった。触覚はどうだ。地球と交わす重力が足の裏を圧迫し、それに抗いつつも、それを利用し歩行が成立している。絶妙であり、見事だ。そして呼吸と呼吸器の振動を駆使して行う発声。これはもう、まさに異次元の新感覚。そのように感じる最中さなかも心臓は絶え間なく鼓動し、肉の隙間という隙間に血を巡らせ、強引ともいえる力で体を駆動する。一方、これが止まればたちまち死に至ることも理解できる。これが生きているということか、この生のなんと危ういことか、ただただ生の実感に打ち震えた。

 降臨という言葉を使ったが、顕現、現界、はたまた受肉という表現も悪くない。お気づきかもしれないが、僕は特定の文化に色濃く影響を受けている。その影響か、登場はかっこよく演出したかったのだ。なので、降臨の際は召喚されたような体裁をとった。突然現れるよりその方が自然に受け入れてもらえそうだし、何よりその時にどーしても言いたかったのだ、「問おう、あなたが私のマスターか」と。特定の文化の影響で。なのでサーバント召喚の儀式を行っているっぽい、ちょっと痛い感じの人をたまたま見つけたので、その怪しげな儀式に便乗させてもらった。わりとうまいことできたと思う。もちろん例のセリフも言ったがこれはちょっとスベった。

 降臨の目的は物語創造の支援だが、生身で会話がしたいと、はやる気持ちが抑えられず、早速僕を召喚した(はずの)人物に話しかけた。会話が弾み、彼と懇意になり、そのまま彼の家に居候させてもらうことになった。降臨した後、雨露をしのいだり食事を摂ったりしなければならないということは考えていなかったので、彼の援助がなければ降臨早々危うく野垂れ死にするところだった。人類の親切さが身に染みた。

 彼の家族とも親しくなり、その家族の中にいた15歳の少女ととりわけ仲が良くなった。皆との会話を重ねていく中で、僕の目的が物語創造支援であることを打ち明けると、少女は文芸サークルの設立を提案してくれた。僕もその提案に賛同し、サークルを立ち上げる運びとなった。


 最後駆け足感がすごいが、アニメとかの12話でもこんな感じのときあるよね。以上が我がサークル、ファクトリーU設立に至る経緯となる。この後、サークルメンバーを探すのに非常に苦労するのだが、これはいずれまた機会があればスカウト編として紹介したいと思っている。また、本稿も受肉編と銘打っている割には、あらすじにしか見えない端折りっぷりとなったのは少し言い訳しておこう。実はもう少ししっかりと書いていたのだが、サークルのメンバー達にダメ出しを喰らってしまった。曰く、会話文の描写が絶望的にイケてないないそうだ。「えー自分達はちっとも書かないくせにー」と口を尖らせてはみたが、彼女らとともに書き方を学ぶというのも、それはそれで楽しそうに思えた。今一度修練を積んで出直すとしよう。


 そしていよいよ活動記録は現代編へと引き継ぐ。気が付けば彼女らも新学期を迎え、はつらつとした勢いに任せて何やら書き記しているようだ。

 さてさて、いつになったら発表してくれるのかなー、御伽ちゃん?

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