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神々のラノベ創造  作者: 一条アル彦


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今夜月の見える館で(6)

「ドラえもんはね、いつも間にやら野比家に居候していたんだよ」

 ちょっと話が……どこに向かってるのか。そのネタは終わったものだと思っているんだが。

「よく考えたらおかしいよね。猫にもロボットにも見えない異形の存在がいきなり机のヒキダシから現れて、どうしてすんなり普通の家庭に家族のように受け入れられるのか。最初のころのドラえもん、目が結構ヤバかった」

 基本ギャグのマンガにそんなリアルな考察入れられてもなあ。論者っぽい口調で話す小花がなんかキモチ悪いのだが……え、なに、もしかして俺を説得してるのか?

「だからいちウスさんも何か知らんけどいつの間にかウチに居座ってるんじゃないかな」

「うおい! 『だから』の前に理由になるような発言あったか? てか知らんけどって言ったよな!」

「だってえー、そういう実例があるんだから、ウチでもおんなじことになるんじゃないかなーって」

「実例じゃねえだろ! 架空のお話だよ!」

 こんな穴だらけの話で説得してまでこいつを招き入れたいのか。そんなにこの男は面白そうだと思うのか。ん、あれ、なんか変だな。

「いや待て待て、ウチに居座る話にすり替わってないか? 飯食わすだけのハナシだったよな」

「バレたか―。いちウスさん、三杯目はそっと出すんだよ」

「心得た」

「それ居候前提の言い回しだよな。何杯食ってもいいけど飯だけだからな……あ、よく考えたらナイフ出したみてえに食料を出せばいいんじゃねえのか」

 小花、その手があったかみたいな顔しないでくれるか。

「それもできるけどやらない。先ほどのナイフは君たちと和議を結ぶために特別にやった。僕は奇跡を利益のために行使しない」

 私利私欲のために力は振るわないってか。人間的でご立派な生き方だとは思う。が、俺が居候を許す理由にはならねえ。そういえば、ドラえもんって割と我欲のためにオーバーテクノロジーを使ってたな。

 不毛な問答を続けていると、不意に後ろから窓が開く音が聞こえた。

「あんたたち、さっきから何を騒いでるの」

 振り向くと奈子が窓越しに怪訝(けげん)な顔を覗かせている。もちろんその視線はこの奇怪(きっかい)な男に注がれることになる。

「……どなた?」

「いちウスさんだよ!」

 小花が元気よく即答するが、名前だけ言われてもなあ。布きれを密教の僧侶みたいに(まと)う金髪男という出で立ちだ。名前より気になることが山盛りだろう。

「えーと、すっごい訳アリ感が漂ってるわね。私がお風呂沸かしに行ってる間に何があった?」

 訳ありというよりは訳が分からん。これを俺が説明すんのか。直感と反射神経で生きる小花はアテにならんし。

「えーと、当たり障りのない言い方をするとだな、うちの庭で行き倒れてた」

「それだけで結構センセーショナルよ。じゃあ、当たって障る言い方をすると?」

 俺は数回頭を掻いたあと「最後までツッコミはなしで頼む」と前置きして、これまでの経緯を極力私見を交えずに奈子に説明した。それはもう、頑張ったぜ。

 俺が望んだ通り、話の途中で奈子は一切ツッコミや質問をしなかったが、説明を終えた後も「なるほど」と一言相槌しただけだった。

「つー訳で行きがかり上、飯を食わせてやって欲しい。そのあと追い出す予定だ」

「えーなんでなんで、そんなのかわいそうだよー」

 心優しい小花にはこいつの危険性が分からない。

「うるせっ。こんな危ない奴ダメっつったらダメだ」

 すげなくあしらう俺を見ていた奈子が何故か笑いを堪えるような素振りを見せる。ついには堪えきれず破顔した。

「あはは、小花分かってないね。この人が四の五の言ってるのを言葉通りに受け取らない方がいいよ」

「えー、どーゆーことなのー」

 小花が言い終わると同時に、男が不意に「それって……」と言葉を挟む。だが言いかけて「いや、失礼。なんでもない。続けてくれ」と言葉を濁した。横目で気にしながらも奈子が続ける。

「相手の気持ちになって考えたら見えてくることがあるのよ。人は利益のために噓をつくこともあれば、単に照れくさくって口に出さないこともある。よく相手を知らなきゃ分からないだろうけどね」

「と、いうことは……直さんの魂胆を見抜かなきゃならないのかー」

 と小花は腕組して考えるも、ものの数秒で「分かんない!」と諦めてしまった。

「そうねえ、ちょっとカマかけてみようか……小花、このいちウスさんて相当のイケメンだよね。どお、惚れ惚れする?」

 聞いた瞬間、片方の頬が引きつった。カマかけるとまで言われているのに動じてしまった。なんでそんなこと訊く流れになるのか。

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