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神々のラノベ創造  作者: 一条アル彦


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今夜月の見える館で(5)

 とぼけてるようで、俺が警戒してることくらいは理解してんだな。小花は俺とは対照的に気を許しすぎている。だからその分警戒すんのは俺の役目だ。それでも俺はこいつを助けるつもりの小花に賛同する。小花を一瞥して、男に問いかける。

「腹減ってんなら、この子に免じて飯くらい食わせてやるよ。だがなあ、召喚だ顕現だって空中から現れたお前が人畜無害ですっても、はいそうですかとはならねえだろ? 人畜無害ってんなら俺にそれを証明してくれねえか」

「確かに僕が無害であるというのは、僕自身の申告によるものだから信憑(しんぴょう)性がない。それを証明するにはどうすればよいかな」

 男は考え込むような仕草は一切見せず、画像を静止させたみたいにピタリと動きが止まった。二、三秒止まったと思ったら、再生ボタンを押したように再びしゃべりだす。

「例えば、僕はこの屋敷一帯を構成粒子にまで分解することができる。だが、僕はそれをやらない。これで僕は誰にも危害を加えるつもりがないことの意思表示になると思うが」

 なんでそんな物騒で荒唐無稽なことを例として挙げるんだ。いつでも()れるが見逃してやるってか? 喧嘩売ってることになっても友好の(あかし)にはならねえ。

「あのなあ、分解できること自体の信憑性がゼロだろうが。まあいい、できるってんならあそこに生えてる花一輪、あれを分解して見せろ」

 俺が庭の端に一列に並んで咲く真っ赤な彼岸花(ヒガンバナ)を指で示すと、男は首を横に振って答えた。

「できるけどやらない。先ほどそう言った。たとえ花以外の無生物であっても、この世界のものに能力で危害を加えるつもりはない。それに、あれは特に僕が好きな花だ」

 存外ブレないやつだ。花を愛でる感性もあるのか。だが、

「結局証明できてねえじゃねえか」

「そうだねえ。うまくいかないねえ。一応君たち人類の真似(まね)をしてみたんだけどなあ」

「今のやり取りにマネの要素があったか? どこが何をマネたってんだ」

「んーー、例えば。君たち人類は刃物一本握りさえすれば、容易に他者を加害することが可能だ。たとえそこにいるような小さな子供であっても、背後から襲うなどすれば十分可能だろう」

 また突飛なことを言いだしたが、小花が気になったのはそこではなかったようだ。

「小さな子供と違う。私、小花だよ。いちウスさん」

「失礼した。小花君であっても可能だろう。だけど、君はそれをやらない。君に限らず、君たち、ほぼすべての人類は互いにそれをやらない。だから人類はそこに他者への信頼を見い出し、結果社会が成立している。雑踏ですれ違う|何百人に対し、刺されるかもと逐一警戒したりしない」

「なにを当たり前のことを……」

「その当たり前に僕も混ぜてほしいだけなんだけどね。あ、そうか。今言ったことをそのままやればいいのか」

 そう言って、こいつは自分の胸の前で掌を受け皿みたいに差し出した。生意気にもお釈迦様のような所作だった。

 その掌の上で、空気が沸騰するかのように、光の粒が現れては弾けて消える。光が消えた跡からは、3Dプリンタみたいに下から上へと順に何かが出来上がっていき、ついには鋭く尖ったナイフが一本現れた。男はそのナイフを握りしめると、目を瞑ってそれを上空に向け高く掲げた。

「これで僕は今すぐにでも君たちを加害できる状況になった。でも、僕はそれをしない。ナイフもこのまま無に帰すとしよう」

 ナイフは再び光の粒となり、天に召されるように消えていった。正直面食らった。小花は口を丸く開けて、おお……と感嘆の声を漏らしている。

「これで証明になったのではないだろうか」

 男が確認を求めると、小花は感嘆の声を止めて俺の方を振り向き、「なったの?」と判断を丸投げしてきた。人畜無害かどうかなど全く興味がないらしい。

 結論から言うと、危害を加えるつもりはないとの(げん)は証明できている。今ナイフを消し去った不思議な力を俺に使えば、何の抵抗もなく俺は消え去るだろう。消す気があるならとうの昔にやっている。今俺がここに居るのは、こいつに俺を消す気がないからだ、ということになる。

 だが、無害かと問われると有害だとしかいえない。いわゆる生殺与奪の権利ってのは完全にこいつが握っている。それに抗う術はない。

 俺が答えられないでいると、小花は待ちくたびれたのか「直さん……」と神妙な顔で語り掛けてきた。

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