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神々のラノベ創造  作者: 一条アル彦


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今夜月の見える館で(1)

 ツリーサークルってのを知ってるか。

 宇宙人のラクガキじゃねえぞ。歩道の街路樹とかの根元に(はま)ってる丸い鉄格子があるだろ。あれのことだ。

 木の根っこってのは武骨に見えて実は繊細で、木の周りを大勢の人間が歩いたり車が通ったりすると、根っこが傷んで木が弱っていくんだ。だから根っこに負担がかからないように守ってるのがツリーサークルってわけだ。

 一昨年(おととし)(二〇二三年)の九月の話だ。うちの玄関先から庭に出る通路の端に、このツリーサークルを(しつら)えた。うちで預かってる小花が高校生になったら、記念に桜を植えようって話になってさ。その時は受験する学校もまだ決まってないってのに、気がはやった俺が桜の予約席だけを先に作っちまった格好だ。

 植える場所は小花の部屋の窓からよく見える場所を選んだ。花見ができるくらいに桜がデカくなるには、何年もかかるだろう。願わくば、窓から花に手が届くくらい桜が成長するまで、この家にいてくれないかなとか、そんなこと考えて植える場所を決めた。一緒に暮らし始めて数年、でも父親気取りとか思われたくなくて、その願いを口には出さないバカな義理の兄だ。

 でもよ、このツリーサークルやら周りの模様張りのレンガを見て、それを魔法陣だと考えるか? 見間違えるどころか、そもそも魔法陣なんてもの、実物には一度たりともお目にかかったことがないのが普通だろ? そんな頓珍漢な勘違いをホントにやらかした結果、あいつは俺んちの庭に現れた。ツリーサークルが完成したその日、月見日和の中秋の名月の晩方だった。


「直さーん、お団子きれーに並べたよー。これ以上ないくらい完っ璧なピラミッド状に積み上げたんだけどー」

 晩飯の後、夜桜はどんなふうに見えるだろうかとイメージを膨らませて、裸のツリーサークルの前で煙草をふかしてた俺に、二階のバルコニーから顔を覗かせた小花が声を弾ませて呼びかけてきた。 

「へえ、スゲーなー。何段積んだんだー」

 普通は十五夜にちなんで十五個を九・四・二と三段に積む。が、こう聞くと小花は調子に乗った答えを言ってくるから、それが面白くてついついふざけた問いかけをしてしまう。

「えへへー、十段っ!」

「ウソこけえ。十段も積んだら、えーと、と、と……三百八十五個も団子いるだろうが」

「え、何、今暗算したの? デタラメじゃなくて? ちょっと待って、私も計算してみる!」

 手すりに腕と首を引っ掛けて、スマホをピコピコとやりだした。俺もそんなに計算に自信がないからちょっと緊張する。間違えてたらカッコ悪りい。

「百足す、八十一足す、六十四足す……すごっ、合ってる! 三百八十五! サヴァン症候群の人?」

 内心ホッとしながらドヤ顔を決めてやる。

「ンなわけあるか。月見団子の段数から何個いるか弾く計算式があんだよ」

「そんな(ねん)に一回のお月見にしか使わない計算式、わざわざ考えた人がいるのお。日本人だよね、菅原道真(すがわらのみちざね)とか?」

 月見団子は基本三段と決まっているから年に一回すら使わないけどな。

「違げえよ、俺だよ。今考えた。道真公もこんなくっだらない計算式、思いついても後世に残さんだろう」

「えーどんな式なの、知りたい知りたい、()せえてよー」

「十段だったら、先ず十の三乗を三で割ってだな、って口で説明するよりそっち行って紙に書いてやるよ」

「やたー! 入試でお団子問題出たら合格間違いなし!」

 出ません。

「それと力作のお団子ピラミッド早く見に来てよお、東西南北もバッチリ合わせてるから、ピラミッドパワー満載のお団子なんだよ。食べたら百歳まで長生きできるはずだよ」

 ピラミッドパワーなんて単語最近は全く聞かねえが、いまどきの子供にもその手のオカルトは引き継がれてんだな。

「それ、食っちまったら形が崩れるから効果なくなるんじゃないのか」

「はっ、本当だ! 食べなきゃ効果が身にならないけど、食べたら効果がなくなっちゃう。卵が先かカエルが先か、ぐぬぬ……」

 そこ、普通ニワトリじゃね?

「ははは、いーから食おうぜ。ピラミッドパワーなしでも百歳まで生きてやらあ」

 言って家に入ろうと一歩を踏み出した。そのとき。

 背後でキンと金属を弾くような音が聞こえた。振り向くと、銀色の球体、というか周囲がぐにゃりと映り込む鏡の球体が、ツリーサークルの真上、輝く月輪に並んで空中に浮かんでいた。

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