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神々のラノベ創造  作者: 一条アル彦


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初夏の日(3)

 そんな宿題が出たので、本探しを始めた。古いのとか海外のもあるんだったら、本屋じゃなくて図書館の蔵書を検索してみるかと思い立ち、スマホから異世界とか転生とかのワードで検索してみた。したら、来た。来たってのは琴線に触れるのがそん中にあったってことだ。検索リストの中、ひたすらシンプルに短い書名、山田風太郎先生の「魔界転生」が、タイトルだけで俺を刺激するものがあった。

 こんな簡単に行き当たっていいのか、俺の直感よ。と思いつつも、図書館で借りりゃ金はかからねえ。早速上下巻を予約して借りに走った。


 何年かぶりに訪れた図書館で目当ての本を手にすると、ずいぶんと読み古された感のある本だった。決して汚いわけではなくて、紙がくたびれてるって感じで、それがかえって手に馴染むような感触があった。表紙は今どきの美麗イラストとは真逆に素っ気なく、パラパラとめくった最後のページ、初版は昭和四十二年と書いてあった。えーと、一九六七年か? 直さんが生まれるよりもずっと前じゃねえか。御伽が言った通り、古い作家さんもこんなの書いてたんだ。しかしこれは、結構なボリュームでライト文芸じゃなくてヘヴィ文芸を引いてしまったかもしれん。二週間やそこらで全巻読み切る自身はないので、先ずは上巻だけ借りることにした。

 その後、久々に図書館に来たついでに館内の蔵書をぐるっと一周見て回った。何列も並ぶ棚の中で、一番多くを占めるのが小説だった。棚のサイズの都合だろうけど、高さがビシッと揃ったコンパクトサイズの文庫本と、色とりどりで堅そうな表紙の単行本とに大きくエリアが分かれていて、文庫本の棚には意外とライトノベルと思える本が置いてある。やたらと長い若者ノリのタイトルのがあって多分これだろう。本の並びはあくまで著者名のあいうえお順で、ライトノベルだけが仕分けてあったりはしないんだが、出版社のレーベルごとに背表紙のデザインに共通の特徴があるから、ライトノベルのレーベルが分かれば背表紙の雰囲気だけで探すことが出来る。ネットの検索だけじゃそんな探し方はできねえから、実物を直接見るってのにはそれ独特の発見や良さがある。道端の草花を調べんのと同じだ。

 ガキの頃は物語の本とか全然読まなかったけど、図鑑とか見んのは好きでちょくちょく図書館に来てたっけ。そんなことを思い出して、この日は魔界転生の上巻ともう一冊、子供向けの雑草図鑑を借りて帰った。


 んで、問題はこっからだ。本日宿題の成果を発表するにあたり、この本が課題にそぐわないのではないか、という疑いが今更ながら浮上している。

 問題その一、「魔界転生」これ異世界ものではない。だれも異世界行かない。タイトルに転生とあるが、「てんせい」ではなく「てんしょう」と読むそうだ。

 課題図書の条件からハズレてるから、これって宿題やったことにはならないんじゃないの? 高二にもなって宿題やってませんみたいなことを年下の先生に言わなきゃなんねえのか。この本を選んだのは間違いだったのか。他にも問題はあるんだが、何を思い悩んでも結局はこの本でよかったのかって問いかけに帰着する。あーもー、海辺で物憂げにうなだれるよーなことじゃねえだろ。

 とまあ、俺一人ダサいことになるのを懸念して憂鬱な気分になってるわけだが、うだうだ考えても始まらねえし、別に言い訳する気もねえし、せめて海でも眺めて心を落ち着かせよう。そんな趣旨で海辺にまで来たってわけだよ。

 背中の力を抜いて幹にもたれた体をずるりとズラす。そのまま横に一回転して大の字に寝ころぶ。俺の周りには、青空のてっぺんに向けてピンク色の花を広げる道端撫子(ミチバタナデシコ)。ゆるい風にユラユラと揺れている。雑草だって細い茎を精いっぱい伸ばして頑張っている。俺も空に両手を伸ばしてみる。寄せる波の音、返す波の音に合わせて右へ左へと手を揺らす。

「うは、あはは、」

 なんか知らんが、笑いが漏れた。なんか知らんが、楽しくなってきた。ちょっと分かってきた。雑草もただ頑張ってるんじゃなくて、それなりに楽しんでやがんだ。

 両手を振り下ろし、その勢いで体を起こす。

浜に打ち寄せる波は穏やかで、行ったり来たりする波頭を何度も何度も目で追いかけた。それは一定のリズムのようで、よく聞くと案外不規則だ。予測できるようでままならねえ。うーん、やっぱり上手に立ち回るのは苦手だから、勢い任せの出たとこ勝負で行こう。今さらながら気楽にやろうと言った御伽の言葉が身に染みる。

 さて、心が落ち着いたので、目的達成。クールダウンしすぎても勢いが削がれちまうし、ぼちぼち行くとするか。

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