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神々のラノベ創造  作者: 一条アル彦


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35/57

きっと素晴らしい部屋になるんだ(12)

 賑やかな食卓に時を忘れ、夕食は宴と化してしまった。伯父さんは酔うとヤンキーに変身し、いちウスも人並に酔っ払い、奈子さんはいくら吞んでも顔色一つ変わらないことが分かった。正月の親戚の家のような場のノリについていけなくなって、奈子さんに部屋に戻るよう促された。小さく「ごちそうさまでした」と伝えて、小花ちゃんと二階に上り、お風呂を済ませた頃には午後十時になっていた。そして今、気がつけば十一時をまわっている。気がつけば、というのがどのように気がついたかというと……

 お風呂の後はリビングで小花ちゃんとおしゃべりしてたんだけど、魔のソファーに状態異常を付与されて徐々に瞼が下がってきて……気がつけば、小花ちゃんにお姫様だっこで抱え上げられてるじゃありませんか。

「起こしちゃった?」

「えええええーーーーー! え? ええーー!」

 起こしちゃった?ではない。寝ちゃったのだ。いやいや、そうじゃなくて、なんで抱っこされてるの。

「小花ちゃん……これ、どゆ状況?」

「ウトウトしてたからー、お布団まで運ぼうかとっ」

 てへぺろで言うようなセリフを真顔で言ってのけた。その発想はどうかと思うけど、私より小柄な小花ちゃんが標準体重前後の私を難なく抱え上げているという、その驚きが勝っていた。片付けの時も廊下で手を引かれた時も力強(ちからつよ)って思ったけど、尋常じゃない。

「あ、いや、ごめん、ありがと。自分で行くから降ろしてくれる?」

 小花ちゃんは短く「おっけ」と応えた。裏ももを支えていた手が下がり、床にストンと足が着く。

「大丈夫? 重くなかった?」

 言ってから訊かなきゃよかったと思った。しんどくなかった?って意味で言ったけど、標準体重か否かを尋ねたようにも聞こえる。標準体重前後なのだ、前後でいいじゃないか。

「ううん、全然。蘭ちゃんより軽い軽い。蘭ちゃんの方がお胸の分軽いはずなのにねー」

 よかった。軽いんだ。そして蘭、すまない。無用な情報を聞いてしまったようだ。

 また明日、おやすみ、と挨拶を交わし自室に戻った。時計は十一時をまわったところだった。


 さっきまであんなに眠かったのに、だっこ目覚めに驚いてすっかり目が冴えてしまった。ベッドに潜り込んだら瞬殺で寝てしまう気もするけど、ここはひとつ、アレを読ませてもらうとするか。いちウス連載の、活動記録とやらを。

 窓際カウンターの真ん中をPCの定位置に決め、持参したノートPCを開く。いちウスには悪いんだけど、連載を読むことよりも、このステキな部屋でノートを開くシチュエーションに酔ってしまいそうだ。ふふふ、私ってコーヒー屋でPC開いて何かしているお姉さんみたい? 足なんか組んじゃったりして。

 頬杖までついてカッコつけた後、パンダ柄パジャマの自分に気づいて正気に戻る。姿勢を正して座り直し、教えてもらったペンネーム「一条アル彦」をグーグルの検索窓に入力した。てゆうか、アル彦って何なの。「晴彦」の入力ミスを放置したのかな。って、おおっ、いきなり検索結果のトップに出てきたっ。すごっ。でもそりゃそうか、同性はいても同名は絶対いない名前だもんね。その辺を狙った名前ってことか。作品一覧をクリックすると、一つだけ作品名が表示される。表題は、「神々のラノベ創造」……エライ大層なタイトル出てきましたけど。

 アップされているのは三話だけで、投稿を始めたのは、ほんの一週間前からだ。それでもこれは、今日言葉を交わした男性が書いたものなんだ。その人はこの建物の階下に実際に住んでるんだと思うと、物語を書いて投稿するという行為が、遠くどこかでの出来事なんかじゃなくて、自分にも十分に手が届くところにあるものなんだと実感できた。続きを書いてくれと頼まれたことが、その実感に拍車をかけて、私は少しだけ身震いした。

 まあ、読んでみよう。六千字ちょっとだから十二分くらいかな。


……なんて奴。読者の期待を言い当てては、バッサリとそれを否定している。

……昼間に話してたとおり、世界の創造者を自称している。

……白ご飯に例える(くだり)、割と面白い。

……サークルメンバーとは小花ちゃんと蘭とすみれさんのことだね。

……全部読むのに二十分かかった。難解な長文があって、国語の授業でやった構文解析みたいなのをやる羽目になった。


 いちウスの生い立ちが延々語られているけど、内容は昼間に聞いた「世界を創った」とかの荒唐無稽な話と一応リンクしている。母親がいないとか学校に行ってないとか蘭が言ったのは、いちウスが天上の存在みたいなものだから、ということか。そういう「設定」だということか。

 だったら、いちウスっていったい何者なんだろ。世界を創った云々の話は決して納得したわけではなくて、昼間に追求しなかったのは話を続けても混迷の度合いが深まっていくだけに思えたからで、まあ要するに諦めた。良識ある伯父さん夫婦も特に否定しないし、少なくとも伯父さん夫婦はあんな怪しげな男がここに住むことを認めている。それを説明もしてくれないし。なんでだろ。

 なにか私に言えないこと、いや、後ろめたいこと……をあの二人がするわけがない。私が知るべきでない事情があるんだろうか。だとしたら詮索するべきではないのだろうけど、気になっちゃうと……妄想しちゃうのよね。

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