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神々のラノベ創造  作者: 一条アル彦


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きっと素晴らしい部屋になるんだ(6)

「ところで隊長、(くだん)の屋根裏への階段が見当たらないのですが」

 私が訊くと、小花ちゃんはゆっくりと私に背を向け、その背中で語りだした。

「うむ。あれは門外不出でね。選ばれた者にしか明かしておらんのだよ」

 私が隊長とか振ったから小芝居が始まってしまった。隊長というよりは訳知(わけし)りな老人みたいになってるけど。小花ちゃんは小さく振り向いて片目で私を見据え「ついて来たまえ」と随伴を促した。私はどんなキャラ設定でリアクションすればいいのか、ちょっと分からない。

 再びリビングに戻り東側まで歩く。リビングには私の部屋の扉の対面となる位置に簡易なキッチンが設けてある。ある意味このキッチンがあるから小花ちゃんの部屋からリビングへの直通扉がない。そのキッチンのカウンター裏面を小花ちゃんの手がまさぐる。と、そこから一本の棒を取り出した。

 小花ちゃんは「見たまえ」と言って、リビングの一角の天井を、手にした棒で指し示す。リビングの天井は全体的に高く吹き抜けているけど、このキッチン周りの一角だけは天井が低い。示された天井を見上げると、そこには畳一枚分くらいの大きさで、いかにも開きそうに四角く切れ目が入っていた。小花ちゃんが手にした棒の先端は鉤状になっていて、天井の蓋の金具にそれを引っ掛けて(ひね)ると、ガコンと音を立てて天井が開き、折りたたまれた階段が現れた。

「おおー、すごいすごい、隠し部屋への入り口だ!」

 トリッキーな仕掛けに興奮してしまい、キャラ設定は忘れて素でリアクションしてた。

「ふふふ、でしょー? まあ、みんなが知ってるんだけどねっ!」

 来る人全員が選ばれし者になるわけだ。言いふらさずにはいられない気持ちは分かる。そして小芝居も終了したらしい。階段を上り始めてすぐ、小花ちゃんは思い出したように「注意事項があった」と足を止めた。

「荷物運びをいちウスに頼むときはね、先にいちウスに(のぼ)ってもらいなよー」

「う、うん……上に何かあるの?」

「上っておいでよ。そしたら分かるし」

 じゃあ、とりあえず屋根裏に行ってみるか。階段は本当に急で梯子に近い。手すりをしっかり握って一段目に片足を乗せたところで「あっ」と気がついた。そういうことか。

 上を仰ぐと小花ちゃんのスカートの中が丸見えだ。

「ニシシー、御伽ちゃんのえっちー」

 小花ちゃんが白々しくニヤける。わざと階段の途中で止まってたくせに、もー。

「いちウスってそういうことする人なの?」

「全っ然。パンツどころか女の人にも興味ないと思う。あるとしたら、漫画やラノベでそんなシーンがあるから、実際に体験出来てよかったーとか言う」

「あはは、確かに言いそう。男女関係なく人間には興味持ってそうだけどね」

 小花ちゃんはそのまま階段を上りきって薄闇の中に消えていき、照明を点けてくれた。見上げた屋根裏は太い木の梁がむき出しになっていて、文字通り屋根の裏面が露わに見えていた。

 ひょっこり顔を出した小花ちゃんが「登ってきてー」と手招きする。慣れない急な階段を恐る恐る上っていく。誰もいるはずないけど、途中、下からの視線がないか振り向いて確認してしまった。勾配が急すぎてスカートを押さえてどうにかなるものじゃなく、確かにいちウスを先に行かせるのが正解だ。スカート履かなきゃいいんだけど。

 屋根裏はもっと埃っぽいものだと想像していたけど、意外とそうでもない。でも掻き立てられるワクワク感は想像通り。面積的にはそこそこ広いけど、小屋を支える構造があちことでむき出しになっていて、部屋としては使うと手狭になってしまいそうだ。あと、天井が屋根の勾配なりになっているから、端の壁際の方はしゃがんでも頭が当たるくらいに低くなっている。でも、この狭さ加減が隠れ家的に重要だ。

「ここの屋根裏の真下はちょうど私の部屋になってるんだよ。縄梯子(なわばしご)で降りれるようにしてほしいって直さんに頼んだけど、絶対にダメって断られた」

 この子ほんとにアクロバティックなのが好きなのね。隠れ家よりもハムスターのケージに近い。

「隠れ家的には魅力だけど、普通にダメだろうね。小花ちゃんが常習的に屋根に出て行こうとしているのがバレバレだもん」

「え、バレてる?」

 驚いた表情の後、小花ちゃんは恨めしそうに屋根裏に唯一光が射す窓を見つめた。

「ほら見て。ここから屋根の上に出ていけるようになってるんだよ」

 その小さな窓は、屋根の斜面から突き出すような形に造られている。小花ちゃんが窓を開けると、僅かにそよぐ風が入ってきた。

「今日のところは奈子さんの言いつけもあるし、出るのは我慢しとく。たいして危なくないと思うんだけどなー」

 小花ちゃんは残念そうに窓枠に肘をついた。小花ちゃん自身は何度も屋根に上っているだろうから、きっと私に見せられないのが残念なんだろう。バルコニーから見るのとはまた違う景色を、光を、空気を、一緒に感じたいと思ってくれている。でも、今日のところは、か。

 ちょっと外を覗いてみる。小さな窓に二人の顔が並ぶ。すぐ目の前の軒先の向こうに、遥か遠くの風景が見えている。そこに立つ自分を想像したら、やっぱりちょっと足がすくんだ。

「いや、小花ちゃん、これ絶対に危ないよ」

「そお? 仕方ないなー、今度命綱を用意しとくよ」

「……それならちょっと出てみたい気になったけど、絶対に許可は下りないと思うなー」

 許可を取るつもりもなさそうだけどなー。

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