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神々のラノベ創造  作者: 一条アル彦


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きっと素晴らしい部屋になるんだ(3)

「ねえねえ、御伽ちゃんちょっとこっち見て」

 小花ちゃんが私の手を引いて行ったのは、この部屋にあるもう一つのドア。部屋の中から見ると、リビングから入ってくるドアの横にもう一枚、少し幅の狭いドアが並んでいる。ガラスは(はま)っていないから向こう側は見えない。

「ここからもさっきのバルコニーに出られるんだよ」

 外開きで物入れではなさそうだし、部屋の配置からしてそうだとは思った。

 カチャリと軽い音を立て、小花ちゃんが扉を開く。横から見たバルコニーは視界の奥行き深くにまで続いていて、これも自分の部屋の一部みたいで気分がいい。部屋に入る前、頬を撫でた爽やかな風を思い出す。

「向こう側の突き当たりに同じドアがあるでしょ。あっちが私の部屋なんだよ」

 本当だ。鏡に映したように同じ造りだ。

「小花ちゃんの部屋もここと同じ感じ?」

「うん、ちょっと間取りは違うけどだいたい一緒」

 小花ちゃんも姫生活を満喫しているのか。建物の外観はバルコニーを中心に左右対称になっているみたいだから、西端(にしはし)のこの部屋と同じような部屋が東にもあるわけだ。双塔に住まう姫姉妹って感じだ。外から見上げた私と小花ちゃんの部屋を想像する。

「庭から見たら右が小花ちゃんで左が私か」

「おお、私が阿形(あぎょう)で御伽ちゃんが吽形(うんぎょう)か」

 ソレに例えるか。双塔の姫姉妹がエラいかけ離れたものになってしまった。小花ちゃんにはこの状況が仁王門の金剛力士像に見えている。もしかして、囚われの姫の掛け合いのときに、阿吽の呼吸とか考えたのが以心伝心してしまったのか。

 小花ちゃんは目いっぱい指を開いた(てのひら)を左胸のすぐ横で私に向け、肩に掛けたはたき棒を右手で支えてそれっぽいポーズをとる。そして「阿形!」と口をニッカリ開いて言った。

 阿吽の呼吸を標榜するからには私もノっておかねばなるまい。が、吽形のポーズってどんなだったか、口を閉じてること以外思い出せない。仕方なく小花ちゃんのポーズを鏡写しでマネて、口だけ閉じて「吽形」と腹話術みたいに言った。目をギョロリと見開く真似は照れがあってできなかった。

 奈子さんの口元が笑いを噛み殺すように波打っていて、思いのほかウケてるみたいだ。

「ずいぶん可愛らしい仁王だこと」

 奈子さんにウケたからか小花ちゃんは上機嫌だ。でも、私としては吽形ポーズが決められなかったことが悔やまれる。

「ごめんよお、吽形のポーズ分かんなかったあ」

 私が嘆くと、小花ちゃんは頭の中で記憶の映像を再生しているかのように目線を上に向ける。

「んーと、こうかな?」

 今度ははたき棒を左手に持ち替えてぶら下げ、右手は肘を肩よりも上にいからせて掌を広げる。

「そうそう、そんな感じ。『ドドン!』とか効果音が聞こえてきそうだよ。よく覚えてるね」

 私自身覚えていないから、これで合っているのか分からないけど、もの凄いデジャブ感だ。ご本人は至って真剣な様子だが、あごを突き出して口元を引き結んでいる変顔(へんがお)がどうにも可笑しい。

「小花はどーでもいいことに限って、見聞きしたことは結構よく覚えているよ。興味のないことは右から左だけどね。授業とか」

 奈子さんのチクリと辛辣なコメントに小花ちゃんは変顔のまま微動だにしない。どうやらこの話題はやり過ごしたいようだから話題を変えよう。……小花ちゃんの部屋のドアの前に、スニーカーが一足並んでいるのが見える。

「そ、そだ、バルコニー用のサンダルを用意しなくちゃね」

 渡りに船とばかりに小花ちゃんは表情を戻す。

「うんうん、サンダルは音のしないのにしようよ。そしたらバルコニー通ってこっそり行き来できちゃう」

「堂々と家の中通っていけばいいだろ」

 奈子さんの意見は正しいけど、こっそりというのは琴線に触れるものがある。隣の幼馴染がベランダ伝いに窓から入ってくる、みたいなラブコメの王道シチュエーションに近い。私と小花ちゃんじゃラブ抜きのコメにしかならないが。

「だってー、私の部屋だけリビングとつながってないんだもん。御伽ちゃんの部屋に行ける秘密通路とかが無いとなんか不公平だー」

 政治的主張を叫ぶ人みたいに、小花ちゃんは拳を突き上げた。

 リビングにたくさん並んでいた寮室のドアを思い出す。確か、この部屋以外には北側に蘭とすみれさんの表札のかかるドアと、なにも表示のないドアが二枚あった。小花ちゃんの部屋はここと東西で対称の位置にあるけど、部屋に入るドアはこの部屋の対称の位置にはなくて、そこには簡易なキッチンが設置してあった。秘密の入り口はともかく、正規の入り口も教えてほしい。

「秘密ってもリビングから丸見えじゃないか」

「いいのー! 直通だからっ! ねえ、御伽ちゃん」

「そうだね。特別な通路があるって忍者屋敷みたいでグッド」

「おお、忍者屋敷! 御伽ちゃんのピンチには私が疾風(ハヤテ)のごとく駆けつける!」

 思った通り、忍者屋敷のワードが小花ちゃんに刺さったみたい。まさか小花ちゃんの部屋の入り口はどんでん返しになってるんじゃないだろうな。

「まあいいけど……そのまま疾風のように飛び降りないでね」

「あはは、やりませんよ。怪我するじゃないですか」

 少し前にも似た話をしたような。私は笑って否定したけど、小花ちゃんは貼り付けたような笑顔のままで返事しない。この話題もやり過ごしたいの?

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