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神々のラノベ創造  作者: 一条アル彦


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新しいサークルのリーダー(2)

 四天王のワードが小花ちゃんの琴線に触れてしまったみたいだ。四天王が集う薄暗い部屋ではゴゴゴと聞こえるのが(つね)だけど、家の中で地鳴りするはずはなく、ひょっとしたら誰かが口で言ってるのかもしれない。四天王の話題で脱線したそうに蘭もソワソワしているが、すみれさんが脱線前に軌道を修正する。

「そういう例えをするなら、そもそも四天王が間違っているわ。私たち3人は名もなき戦闘員AとBとCよ。御伽さんだけがちゃんと名前のあるキャラクターなのよ」

 話を戻したようで、四天王ネタから戦闘員ネタにシフトしそう。

「そうだよ、正直言って私たちザコだからね! 戦闘員Aでっす。イーーーッ!」

「ええ、戦闘員Bよ。いー?」

「おう、戦闘員Cだ! イー言わなきゃダメか?」

 小花ちゃんはニコニコ顔で、すみれさんは真顔で、蘭に至ってはドヤ顔にすら見える。ちなみにすみれさんはイーの意味が分かってなさそうだ。

「私はリーダーの器じゃないってば。てゆうか、そもそもリーダーはいちウスなんじゃないの?」

「僕はサークルの主宰者ではあるが、リーダーでなく代表だ」

「でもこの中で唯一、実際に書いて投稿してる。一人抜きん出ているのはいちウスだと思う」

 もっともな意見を言ったつもりだけど、三人の顔が凪いだ海のように色を失う。

「いちさん、頭は良さそうなんだけど、人に説明するのがどうにも下手なのよね」

 すみれさんが歯に何も着せない辛辣コメントを放つ。

「自分にだけ分かる論文とかは多分上手いんだよ。創作に造詣が深くないから俺たちを指導するとかはムリだ」

「話創るのは全然ダメだったねー。書き始めてたった四行で完結したんだよ」

 四行詩? 逆にすごくない? ちょっと見てみたい。

「というわけで、僕こそリーダーの器じゃないんだよね。投稿だって記録を書いているだけで、創作はからきしだ。戦闘員Dだ。イーー」

 私のことも戦闘員Eで納得して欲しい。ちなみにいちウスはイーの意味分かってるのかな。

「サークルの設立は去年の冬ごろで――三人はその後のスカウトになる」

 いちウスが唐突に話題を変える。落ち着いた顔をしているが何か企んでるね。これは説得する気なんだろうなあ。

「御伽が小説の勉強を始めたのは去年の春か夏ごろかな。サークル加入時期で言えば三人は御伽より先輩かもしれないが、研鑽を積んでいるのは御伽の方が長いんじゃないかな。その差が僅かであっても、御伽には一日(いちじつ)の長があると思うよ。御伽、君は自分で思うよりもずっと巻き込まれお人好しリーダーキャラだ」

 今日会ったばかりなのに何が分かるのか。確かに私は去年の五月、いや六月だっけ、そのころから突如あやふやな夢を描き、書く勉強を始めた。私の方が半年は早い計算だけど、全員そろって一年にすら満たない。

「いちウスは一日の長って慣用句を使ったけど、私ならどんぐりの背比べっていう。仮に一日の長があるとしても、心持ち大きいだけのどんぐりの私に、教え導くって役割はちょっと荷が重いよ」

「慣用句って説得力あるな。うまいこというじゃねえか」

 感心したような顔で蘭が言う。リーダーは無理って納得してくれたってことでいいよね?

「御伽の言うことも一理あるねえ。みんな、無理強いはよくない」

 いちウスがあっさりと引き下がる。必死の説得が通じたわけだけど、それだけじゃない気がする。それはいちウスの性格によるものだろうか。その性格は人の言葉に耳を傾け、それを尊重する。それを我欲を通すことよりも優先する。大人にしては珍しい、そんな性格だと感じる。

 そんなことを考えた後にふと思う、私こそ今日会ったばかりのいちウスの何を分かったつもりになっているのか。心の中で少し自嘲する。

「そうね……ちょっと焦って食い下がってしまったわ。私たちもポンコツを何とかしたかったの」

 ようやくすみれさんも下がってくれた。私だってサークルに加わりたいと思った動機は導いてもらいたいって思ったからだ。だからすみれさんの気持ちは痛いほど分かる。

「じゃあ、先ずは御伽にリーダーを務めてもらうのは諦めよう。それでいいね」

 皆が一様に頷く。分かってくれてほっとする。が、「先ずは」ってのが気になる。

「御伽、このサークルで皆と共に研鑽に励み、創作を目指すという気持ちに変わりはないよね」

「もちろんよ」

 そこは鼻息荒く応えた。

「だったら、その研鑽は一人でするのではなく、みんなで共有してやってほしい」

 やぶさかではない。それでこそサークル活動だと思う。

「それは構わない」

「みんなもそれでいいんじゃないかな」

 同意を促すいちウスに皆が答える。

「ええ、一歩も歩めなかった私たちが一緒に歩めるようになったのよ。十分な進歩と言えるわ」

「おう、先ずは基本のキを身に着けてえよな」

「ワクワクしてきた―! 皆で勉強会しようよー」

「では、毎週土曜日の午後は皆で集まるということでどうかな」

 いちウスの提案に小花ちゃんと蘭が即答で了承する。すみれさんはスマホでスケジュールを確認し、同じく了承した。私も越してきたばかりで予定は空っぽだからもちろん参加すると答えた。

「では、ちょっと頼みが。御伽が勉強に使った教本があるんだよね。あれを教材として用意しておいてくれるかな」

「いいよ。それくらい」

 やっとサークル活動らしくなってきた。

「頼りにしてるぜ、御伽先生!」

 蘭が私の背中をバンと叩いて言った。痛いほどではなかったけど、そのせいで言葉を発するタイミングを失った。

 あれ、リーダーから先生に変わってない? 断ったはずが別のに祭り上げられてない? かえってハードル上がってない?

「気負わずに頼むよ。責任持ってやってくれなんて言わないからさ。目指すは、ゆるふわ日常系サークル奮闘記だ」

 ばちこーんとウィンクするいちウス。今どきウィンクて……昭和のアイドルか少女漫画みたいで可笑しく思えて、笑いを堪えていたら、またしても反論する機会を失った。

 でも、気負わなくていいと言われて少し気が楽になった。奮闘しなきゃいけないのは決定事項みたいだけど。

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