新しいサークルのリーダー(1)
いちウスからの依頼を受け、彼が連載するサークル活動記録の続きを私が書くことになった。連載を引き渡した理由は現況がテンプレ展開だからであり、私に依頼する理由は私がその様な星の下に生まれたかららしい。独特の理論で行動する彼が主宰するこのサークルは、一体どこに向かっていくんだろう。私と同じく他のメンバーも行く末を案じている様子だ。やれやれといった表情で蘭がつぶやく。
「テンプレって……はあ。テンプレみたいな状況で面白そうだから、当事者自ら書けってか」
そういったあと、蘭は少し表情を緩めて、口元と目じりでニヤけた。
「まあ、悪くない話だと思うぜ、御伽」
その通りだ。何であれ私は書くことを求められている。うんと頷くと蘭が続ける。
「俺たちゃ揃って、美少女だそうだっ」
悪くない話ってそっちか。言った本人の蘭がちょっとはにかんで見えた。蘭はこんな風にニヒヒと笑うのが様になる美少女だもんね。まあ、確かにそんなことを言われたと思い出し、今更ながら私も恥ずかしくなる。ま、一応、わりと悪い気はしない。
「は、恥ずかしながら、末席を汚させていただくこととなりました」
照れ隠しにおっちゃんみたいな社交辞令を口にする。でもほんとに私ごときは汚す立場ですよ、メンバーとしても美少女としても。
「あら、末席だなんて。御伽さんは主席に構えてもらわなくちゃ」
すみれさんがやけに持ち上げる。こういうのって際限のないヨイショ大会になくなるから、社交辞令的にはそこは返さずにおくのが普通では。もうちょっと、へりくだっておこう。
「いえ、そんな。私が皆さんに倣って書き方を学んでいかなきゃならない立場ですから」
「いえいえ、そんな。御伽さんが私たちを教え導く立場よ。リーダーですもの」
食い下がってくるなあ。いちウスが勝手にリーダー属性なんて付けてくれちゃったから、みんな刷り込まれてしまっているんじゃないかな。
「いえいえいえ、そんな恐れ多い。おほほ」
「おほほほ、何をおっしゃいますやら」
なんなのこの会話。すみれさんが全然引き下がらない。
噛み合わない私とすみれさんを不思議そうに眺めていた小花ちゃんが物言いを入れる。
「ねえねえ、御伽ちゃん、ちょっと勘違いしてないかなあ? 私たち三人って才能を買われてスカウトされたみたいに紹介されたけど、それはさっき聞いた通り、いちウスだけに視える白い何とかがあるってだけの話だからね」
「そうそう、俺たちはその才能にモノ言わせてバリバリ創作しまくってる――とか思ってねえか。もしかして」
もしかしても何もそうじゃないの?
「えっ? あ、そういうこと? 違うわよ、御伽さん。私たち未だ何一つ書けてないのよ」
えっ、どうゆうこと? いちウスは何も書かない人を支援してるってこと?
「だって、才能を認められたって……」
「心に秘めた物語ってやつだろ。さっきも話したけどそれは心にあるらしいが、どこにあんのか、どんなもんか、秘めてる本人にも分かんねえんだ。さっきいちウスがドクロが見えるとか言ってたろ。それ聞いても何にも思い浮かばなかったしな」
「それは出世作的な珠玉の名作的なライフワーク的な作品が書けてないだけで、それとは別に普段から何らかの創作活動はしていらっしゃるのでは」
変な早口の口調になってしまった。
「なーんにもしていらっしゃらねえんだ、これが」
蘭がたっはっはと軽口で笑う。
「いちウスは期待の新星みたいに言うんだけどねー、実際は期待に応えない六等星なんだよ」
小花ちゃんは自分をギリ肉眼で見える程度と表現したが、要はみんな創作に行き詰っているってこと。私と同じスタートラインにいるってことか。
「新進気鋭サークルのエリートなのだとばかり……」
「違げえよ。新参者サークルのポンコツどもだよ。すまねえな、期待外れでよ」
期待外れなんて言葉を使うべきじゃない。勝手な期待が間違っていて悲しくなるなんてもうたくさんだ。ただの勘違い。だから認識を改める。
「蘭、期待外れは違う。私が勝手に思い込んでいただけ」
「さあ、私たちのポンコツを理解してもらったところで、改めて依頼するわ。御伽さん、リーダーをお願いできないかしら」
「御伽ちゃんは経験者だよねー。私たち三人共何も書いたことないし、書けないし、ただの素人だよ。だから御伽ちゃんに引っ張って欲しいってみんな思ってる」
すみれさんだけでなく小花ちゃんまでリーダー推ししてくる。ただの素人は私だって同じだ。ほんのちょっと勉強しただけのことを経験者とは言わない。客観的に見ても私に頼むのは間違っている。
「いやいや、私なんてちょっと前から教本読んで勉強してる程度だよ。このサークルの中じゃ四天王最弱だよ!?」
「おお、四天王……ごごごご……」
「いや、小花ちゃん、効果音はいいから……」




