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神々のラノベ創造  作者: 一条アル彦


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見えざる白い何か(2)

「何って、IWMだけど。小花が見ててって言ったよね」

 小花ちゃんは(しぼ)んだ風船のようになってテーブルに突っ伏したまま、そうだったネ……と力無くつぶやいた。

「ちなみに白いユーレイとは違ったけど」

「違ったけど何!」

 カバっと顔を起こし食い入る小花ちゃん。切り替えが速い。蘭も同じくテーブルの向いから身を乗り出し、いちウスに迫る。

「それだよ、それ。俺ら三人はそのIWMってのが何かの形に見えたんだろ。気になるじゃねーか、教えろよ」

「見えたものが何を意味するかは僕にもわからないけど、それでもいいかな」

「かまわねえよ。そっからピコんと何か(ひらめ)くかもしれねえじゃねえか。なあ、すみれ、小花」

 二人が同時にうなずく。しかしさっきからの会話の流れだと、三人共いちウスの空想科学を現実として受け入れている。ほんとにIWMなんてものが存在してるって信じているんだろうか。でもまあ、占い師が水晶玉に何かが見えるとか、オーラが見えますとか言ってるのと変わらないと思えば、エセ科学だと目くじら立てるほどのことでもないか。その程度だと考えると、何が見えたのか私もちょっと興味が湧いてきた。

「蘭の言うことももっともだ。本人にしか分からない暗示や着想があるかもしれない」膝を打ち、間を置かずいちウスが続ける。「ではまず蘭から。君のはドクロに見えた」

「……あ、あまり気分のいいもんじゃねえな」

 私なら海賊旗や毒入りの瓶を連想するけど、蘭だとヤンキーバトル物語の着想に至ったりするのだろうか。と思ったが、本人の嫌悪感漂う表情を見るに物語をひらめく要素ではなさそうだ。何の意味か分からない以上、気味悪いとしか言いようがない。

「なんか反社気取りのヤバ系連中みてえで好きじゃねえ」

 蘭の振る舞いは乱暴に見えるし、それを自認しているようでもあるけど、その辺でイキってる連中とは違うということか。蘭には蘭の矜持があるのだろう。

 何に見えるかなんて聞かない方がよかった気もするが、いちウスは気に留めず二人目に宣告するようだ。

「すみれに見えたのは、マントを羽織ったマッチョだ。一番はっきりと見えた」

 見目麗しいすみれさんとかけ離れたものが出てきてしまった。マッチョというワードにインパクトがあるけど、誰もがヒーローを連想するんじゃないかな。アメコミタイプの。ヒーローものの物語がすみれさんの心にある物語なのかなと単純に連想したけど、すみれさんの反応からは思い当たることはないみたいで、今日一番の初々しい恥じらいの表情を見せていた。

「違う、違うのよ……」

 日々マッチョを妄想しているのではないかと誤解されるのを恐れているのだろう。でもその否定の仕方では逆効果だと思う。幸い、真っ先に茶化してきそうな蘭がすでにダメージを受けているので大人しくしてくれている。何の意味か分からないとの前置きがあっても、知ってはいけない何かを暴いてしまったようで心が痛む。

 小花ちゃんは自分のは何なのか気になってワクワクの方が(まさ)っているみたいだ。包帯グルグルのやつを期待しているのだろうか。

「そして小花。なんというか……おじいちゃんだった」

 小花ちゃんの期待が伝わったのか、いちウスは申し訳なさそうだ。戦えるスタンド的なのを期待していたのだろうが、あまりにかけ離れていて小花ちゃんも絶句している。

 小花ちゃんの創作はおじいちゃんの物語? 意味は分からないとの前触れを差し置いての意味不明ぶり。もっとも、小花ちゃん自身は創作のヒントにすることなんて最初から眼中になさそうで、ただただスタンドが戦えないタイプであることが残念なようだ。マッチョが出てきても戦ってくれるわけではないけど。

「実の……おじいちゃん?」

 そっちで困惑してたのか。

「いや、静馬(しずま)(おう)とは違う。白いあごひげを蓄えた、いかにもな感じの好々爺(こうこうや)だった」

 なにげにおじいちゃんの名前かっこいいな。いちウスは微妙な表情の三人を見回して声をかける。

「みな、何か思うところはあったかな?」

 三人が一斉に首を横に振る。タロットカードや花言葉みたいにそれが暗示する何かを感じ取れるのではないかと思ったけど、三人とも新しい着想につながることはなかったか。

 でも、この話題は聞きに徹していたから気づけたことがある。それが何かの形に見えることが、なぜ心に物語を秘めていることの証左となるのか。占い程度に考えていれば、誰もそれに根拠を求めたりしないだろう。

 サークルには加入できたけど、本来なら私は失格だった。その失格の根拠が占い程度のものなのか、裏付ける何かがあるのか、どうしても気になってしまう。

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