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神々のラノベ創造  作者: 一条アル彦


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見えざる白い何か(1)

 お蕎麦をすすりながら、ファクトリーUの活動の現状について聞かされた。その話では、いちウスはサークルの活動記録を執筆していて、それを小説投稿サイトで公開しているらしい。正直驚いた。この変な人がプロではないにしても物書きだということにもだけど、実際に投稿という活動を行っている人が目の前にいるという事実に驚いた。オオタニの剛速球をテレビではなく生のバッターボックスで見たような心境だ。……オオタニは言い過ぎか。とにかく聞いた話じゃなくって、生で目の当たりにしたってこと。

 いちウスを一応仮にも作家なんだという目で見てしまうと、とぼけた言動が多いのも、作家さんだからという理由だけでどこか納得させる力がある。世界を創ったとか言ってたのも作品を創ったという意味だったのだろうと、いいように解釈できてしまう。しかしそれでも、作家さんゆえの変な言動ではどうしても納得いかないことが心に残る。心に物語があるのないのとの下りだ。3人のメンバーにはあって私にはない。心にある物語とは何なのか、それを視るとはどういうことか。作家なりの屁理屈でもいいから訊きたいと思う。

 食器を下げるいちウスの後を追い、その背中に問いかける。

「あの、教えてほしいことがあります」

「僕に答えられることならば」

 いちウスは質問を喜ぶ学校の先生のように微笑んだ。座って話そうと促され、元居た席に掛けた。単刀直入にいこう。

「心に物語があるっていうのはどういうことですか」

「そのままの意味だよ。君たちが小説で描くべき物語が、もうすでに心の中でくすぶっているということ」

 飄々と返されたが、もともと抽象的な話を抽象的に答えているのでこのままでは埒が明かない。具体的な話で切り込もう。

「じゃあ、視るっていうのは? あの眼鏡で私の、何を視たんでしょうか」

「僕が視たのはインビジブル・ホワイト・マター、通称IWMだ」

 アカンやろ。何人(なにじん)だ。パクリ疑惑に一瞬にして心が醒める。この手のネタは蘭にはツッコめないようで、普通に応答している。

「それは俺も前にも聞いたぜ。えーと、IMFだっけ」

「それは国際通貨基金でしょ。IWM、見えない白い物質という意味ね」

 すみれさんは英語にも堪能なのだろうか。漫画やアニメを見ているようには思えない。

「そうそう、でもそれ以上は訊いても教えてくれねえんだ」

「うーん、具体的な話はオーバーテクノロジーになってしまうから、あまり人類に公開しない方がいいのだが、御伽の頼みとあらば仕方ない」

 具体的な空想科学になりそうだけど答えてくれるみたいだ。でも人の話はしっかりと聴こう。さっき覚えたところだ。

「人間なら思考をしていれば誰からもIWMは出ている。想像力の高い者ほどそれが濃く現れる。心に物語があれば、それがさらに何らかの形を成して見える」

「それ初めて聞いたぞ。俺のI、何とかは何かの形に見えたのか」

「そうだよ。蘭とすみれと小花のIWMは形を成していた。御伽は想像力は豊かなのだろう、IWMはかなり濃いよ。でもぼんやりとそこにあるだけで、何かの形には見えなかった」

 やはり空想科学の域を出ない。だったらもう、実際にこの目で見るしかない。

「その眼鏡があればそれが視えるようになるんですか」

「いや、それが視えるのは僕だけのようだ。本来眼鏡は必要なくて、意識を集中した時だけ見えるんだが、誰からも出てるものなので視界に白く霧がかかったようにしか見えない。この眼鏡はサングラスみたいな減衰フィルターなんだ。薄い部分は見えなくなって、濃度の高い部分だけが見えるようになる。そうすると発生源の人物が特定しやすいし、発生源に接近するとその形状も見えるようになる。さっき小花を遠ざけたのは、小花のが濃すぎて御伽単独のIWMがよく見えなかったからだ」

「じゃあ、私が頑張って物語をイメージしていれば、私のも何かの形に見える様になるのかな」

「そうだね。赤ん坊で形が見えたことはないから後天的にそうなるものと考えている」

 結局空想科学だったけど、少なくともいちウスの見立ては私に何の才能もないという意味ではなかったと分かる。未熟だと言われているのだろうけど、今の私にはそれで十分だ。

 もう少し空想科学の話を突き詰めて訊きたいのだけど、小花ちゃんが目が輝かせて「ねえねえ」と割って入ってきた。何か出てるといのが、どうやら琴線に引っ掛かったみたいだ。

「それって頑張ったらいっぱい出るの? ちょっとやってみるから、いちウス見てて!」

 小花ちゃんはあごを引き、目に力を込めて踏ん張っている。力任せで出るものではないと思うけど、何か妄想を膨らませているのかな?

「出てこい、白いユーレイ!」

 だからアカンて。それがやりたかったのか。元ネタを知らない蘭が心配そうに止めに入った。

「おい、小花やめとけ。そのまま(りき)んでプッとか出たら、もお、カワイすぎて俺は萌え死んでしまうかもしれん」

「それ、カワイくないよ!恥ずいよ!」

 特に何も出ていないが、小花ちゃんが顔を赤くして恥じらっている。すでにカワイいので蘭は死ぬかもしれない。

「だからその恥ずかしがってるのがカワイいんじゃねーかよー」

 蘭ニコニコだ。死にそうには見えない。

「さしづめインビジブル、エンバラシング、マターといったところね。見えない恥ずかしい物質」

 以外にもすみれさんが乗ってきた。小花ちゃんのカワイさにやられたのだろうか。

「おお、確かにプッと出たその物質は見えねえ」

「物質ゆーなあ!せめてガスにしてよお」

 涙目で懇願しているが、小花ちゃん、それは墓穴だよ。

「では、ソレはIEGということでいいかしら」

 脱線しまくった挙句、すみれさんが新しい略語を誕生させた。そしていちウスは小花ちゃんに頼まれていたことに愚直に応えて止めを刺す。

「えーと……出てたよ」

「何が?!」

 こういうノリも割と好きだが、そろそろ話を本題に戻してほしい。

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