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神々のラノベ創造  作者: 一条アル彦


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その男いちウス(4)

 蘭のツッコミを尻目に軽快に台所に駆けていく小花ちゃんといちウス。二人を見送った目を逸らすより早く、すごすごといちウスだけが台所から帰ってきた。

「狭いから二人もいらないって奈子さんに追い出されたよ」

 いちウスはばつが悪そうに首をすくめて、私の横の椅子に掛けた。テーブルの上で指を組んで私をチラ見する。

「蕎麦がのびてはいけないと思ってね。そっちを優先したんだけど」

 さっきは誘われるのかと思いきや、肩透かししたことを釈明しているのだろう。はあ、と気のない返事をする。

「かけそばかと思っていたら、ざるだった。慌てなくてもよかったよ」

 何の話だと思わせては、前触れなく核心に迫ってくる。唐突なやつなんだ。

「サークルの名前はファクトリーUというんだ。Uはユニバースを表していて、直訳すると世界工場だね。物語の世界を創る、それがこのサークルの理念だ」

 いちウスは組んだ指を(ほど)いて、テーブルに片肘を置き体ごとこちらに向き直る。その瞳の真ん中には、少し緊張した私が映っている。

「御伽、僕のサークルに入って、物語世界創造の神となって欲しいんだ。君の描く世界を僕に見せてほしい」

 これは勧誘なのか? なんかすごい口説き文句だ。魔法少女の契約を迫るアレを参考にしているのだろうか。でも目の前にいるのは冷酷なマスコット動物ではなく見た目爽やかイケメンで、そんなのに口説かれているというシチュが最高に恥ずくて顔が赤くなる。決してトキメいてはいませんが。蘭とすみれさんも同じように誘われたのだろうか、特に怪訝な表情は見せずに平然と聞き流している。

「うん。分かった。こちらこそお願いします」

 素っ気ない素振りでもじもじと答えてしまった。乙女か。

「あーっ、いちウス、そこ私の席いー」

 お盆を抱えた小花ちゃんがいちウスの背中に不満をぶつける。

「今、御伽を誘ったよ。快い承諾を得た」

 振り返らず私を見たまま答える。

「御伽ちゃんが入りたいって言ってたんだから断られることはないじゃん。御伽ちゃん、いちウスの誘い方すっごい変じゃなかった?」

「あの誘い文句だったら普通逃げちゃうよね。もうなんかヘンテコに慣れてきちゃった」

 いちウスはヘンテコはひどいなあと言いながらお蕎麦を取りに席を立ち、小花ちゃんは取り戻した定位置と私の席の前にお蕎麦を置いてくれた。

 小花ちゃんの話だと、蘭とすみれさんの勧誘の時もやっぱりこんな感じで、小花ちゃんが一緒にいたからなんとか会話になったらしい。この二人もよく誘いに応じたなあ。

 お盆を運ぶいちウスはキビキビと手際よく、あっという間に全員の配膳を終わらせてしまった。意味は全然違うけどコンシェルジュとかギャルソンとかの言葉が浮かんだ。やってることは蕎麦屋の店員なのに、イケメンだと肩書がカタカナになる。いちウスはどこに座ろうかと一瞬迷って、私の左に座ることを右の小花ちゃんに許された。

 腹ペコで待ちきれない感じの小花ちゃんの発声で、いよいよ昼食会のスタートだ。

「それでは、改めまして!」

「もー改めなくっていいって」

 蘭は疲れた顔だがツッコみは怠らない。

「御伽ちゃん、トキワ寮へようこそ。そしてサークルファクトリーUへようこそ! いただきます!」

 続けてみんなで唱和する。何のかんの言っても蘭もきちんと声を出して合わせていた。

 食レポができるほど蕎麦に通じているわけではないけど、お蕎麦は香りが立っていて美味しかった。こういうことも文章で表現できなくちゃいけないんだろうなあ。でも、みんなの一様に緩んだ表情が、言葉要らずの食レポとなって食卓を包んでいた。

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