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神々のラノベ創造  作者: 一条アル彦


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その男いちウス(1)

「あー、お昼お蕎麦なんだー」

 鼻が利くらしいイケメンが玄関で昼食を言い当てる。こんな声の歌手か声優いるよね、誰だったかは思い出せないけど、みたいな、どこか聞き覚えのある拍子の抜けたような声。でもこれは男性の声だ。女子寮にイケメンが住んでいるというのは、蘭みたいな男勝りの女性のことなのかと考えたけど、違うみたいだ。

 それでもこの人物がサークルを主宰していて、どうやら彼に才能を認められることがサークルに加入できる条件みたいだ。私が小説を書くのに、絶対にサークルに入らなければいけない、ということはない。誰だって書くときは所詮独り。でも、エリートの先達に教えを請い、彼女らと共に書いていけたらと思ってしまう。サークルの一員として仲間に入れてほしいと願う。

「んー? 見たことない靴だから新しい寮生の御伽かなー? でも器用に裏返しに靴を脱ぐのは小花っぽいねえ」

 しまった。靴そのままだった。初対面で、いや対面すらしていないのにお行儀の悪い子、認定。

「テンション高めの小花が通った跡は大体そんな感じだ。んな顔すんなよ」

 蘭が笑ってフォローしてくれたけど、どんな顔してるの私。……ああ、口開いてた。

「小花ってば、御伽が来るの楽しみにしてたもんねー。玄関で何が起こったのか、再現CGが目に浮かんできたよ」

 玄関先でいろいろ推理するこの人は、独り言であるはずの言葉を、聞こえる様に語りかけるように口にする。話し好きなオバちゃんって大抵こんな感じだ。

 間延びした口調で「ごたーいめーん」などと言いながら、テンポの速い足音が廊下を近づいてきて、それは食堂の入り口で止まった。多分、お互いを何者かと興味を持っている者同士、視線が交わる。

「やあ、初めまし……て?」

 確かに唸るほどのイケメン登場です。が、なぜかイケメンの挨拶は疑問形。

「あああーーー! 君は! もしかして!いつかのお母さん!」

 一同顔が疑問形。イケメンは私を指さして、生き別れた家族との再会に驚いているかのようだけど、私としては絶対に初対面。だって、実生活でこんなイケメン一回見たら絶対に忘れない。アイドルグループのセンターの隣か二つ隣くらいに、こんな感じのイケメンが一人いる――と言うくらいの見覚えがあるにはあるが、やっぱり会ったことない顔だ。ちなみにトキメきませんでしたけど。

「お前、これ産んだのか」

 ここぞと蘭がツっこむ。いや、ボケたのか。

「産まないわよ!」

「そーだよな、こいつ母ちゃんいねえし」

 そんなナーバスな事実をネタみたいに言っちゃうの?蘭って躊躇とか配慮とかしない子なの?ほら、雰囲気変わって会話が途絶えちゃってる。

 改めて、そろりとイケメンに目を遣る。少しクセのついたブロンドの髪はすごく自然で、眉も同じ色だし地毛なんだと思う。それでも外国人には見えない。それは顔立ちの彫りが深くなくて日本人のようだから。優しそうで涼やかな瞳の色も吸い込まれそうな黒だ。全身の均整がとれていて割とがっしりしていて、これはもう神がデザインしたのではとさえ思える。真っ白のブラウスにすらりとしたGパン。胸元をはだけて金のネックレスでもしていればアイドルかホストか少女漫画の世界だけど、現実の彼は襟元のボタンを一つだけ外してアクセは一切なしの割と普通の好青年風だ。

 当のイケメンは爆弾発言の直後から私を指さして口を半開きにしたまま固まっている。しばし間を置いて、ごまかすように笑顔で釈明を始めた。

「……あ、いや、ちょっと知り合いと勘違いした。学校で先生呼ぶとき間違えてお母さんとか言っちゃうことあるじゃん?」

「何言ってんだ、お前学校行ったことないだろが」

 えーまたそんな訳アリな感じのことサラッと言っちゃうの? 話が重いよ。孤児院でネグレクトとか? そういうの触れちゃダメでしょ。でも、誰もが何食わぬ顔でこの重量の話を聞き流している。悲しい過去を背負いながらも健気に生きているということか。それとも人生の如何なる苦境もそのイケメンで乗り越えてきたのか。重い話と考える私の感覚がズレているのだろうか。当のイケメンも気にする様子もなく私を見つめている。安堵したような表情で、もう何か「生きてたんだね、母さん」とでも言ってるように思えてきた。

「君が御伽か。みんな、御伽は僕の母親じゃないよ。もちろん僕を産んでもいない」

「あ、当たり前です。その・・・あなたがイチウスさん?」

「そうそう、名前言うの初めてだねえ。改めて、僕の名前はいちウス。この世界を創った者です」

 ……は? 世界? イケメンにありがちな爽やか笑顔を決めながら、またしても突拍子もないことを言い始めましたよ。サークルの聞き間違いかな。せかい?せーかい?サークル……バンザイ三唱はできない。無理がある。お手上げという意味でバンザイだ。一応確認する。

「世界?を、作った?サークルじゃなくて?」

「サークルも作ったけど、世界も創ったよ」

 どうしたものか。気の利いた返しでも求められているのか。

 はっ、もしかして! 私は今、このサークル主宰者に品定めされている? ならば、ここでウィットに富んだリアクションを……

「あ、いや、その、」

 って思いつかない。でも今は自己紹介のイベント中だ。名乗って、簡単な素性を述べるんだ。

「えと、私は、周防御伽です。卵焼きくらいしか作ったことありません」

 ナニを言ってるのか。会話の意味不明度に拍車をかけている。しかしこれで良しとしよう、一応仮にも受け答えしている。

「自己紹介も終わったことだし、世界と卵焼きは置いといて、いちウスよお」

 置いとくんだね。渾身のリアクションじゃなかったから別にいいけど。いちウスが首だけで蘭に振り向く。

「書くらしいぞ」

 蘭があごで私を指して、いちウスが私に視線を戻した。

「そうだと思った」

 なんで?何を根拠に私が書くと思ったの。

 そんな私の戸惑いなど無視して、蘭が話の駒を押し進める。私が、最も望む方向に。

「サークルに入れようぜ。視てみろよ、御伽に、資格があんのか」

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