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転生少女は元に戻りたい  作者: 余暇 善伽
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日曜学校

今日は日曜日、早朝からお城を出て、カインに道案内されながら三十分ほど歩くと立派な教会が見えてきた。


 「んじゃ、俺はここのカフェで待ってるから頑張ってな」


 そう言うカインと別れて教会の前に向かうと、今日が日曜学校だからか周りには今の僕たちと同じくらいか少し幼いくらいの子供達が沢山いた。


 「あれ〜見ない子達がいる、どこから来たの?」


 そんな子供達の中から早速一人の子が話しかけて来る。この子、結構人数がいるのにみんなのこと覚えてるのかな?


 「僕たちはお城から来たんだよ」


 「お城から⁉︎本当に⁉︎」


 一人の反応を聞いて周りの子達にもにざわつきが伝播し、あっという間に囲まれてしまう。


 「はーいみなさん日曜学校始めますよ」


 しかし、教会の中から司祭と思われる人が外まで呼びに来たおかげで、どうにか子供達から解放され、そのまま流されるように教会の中に案内される。


 「今日は聖書の朗読を行います」


 この世界では十二歳まで毎週日曜日に教会で読み書きや算数のほか、聖学や道徳を学ぶものらしい。と言っても教会がある街だけで、小さな農村部や村はその限りではないらしいのだが。


 「ねぇねぇあなた達、お城から来たって本当?」


 司祭が何かを読み上げる中、子供達の興味は新しく来た僕達に向いていた。やはりお城から出てくる子というのは珍しいらしい。


 「そ、そうだよこれからよろしくね」


 とりあえず適当に話を合わせながら渡された聖書の複本を見る。どうやら会話は日本語だが、文字は日本語では無いらしい。英語に似ている気がするが、似ている止まりで英語でもなさそうだ。


 「全然読めない…」


 「俺もだ、どうなってるんだこの文字?」


 二人で解読に悪戦苦闘していると司祭と思われる人が笑う。


 「二人は日曜学校は初めてかい?とりあえず私が読んでるのを聞いておいてくれるかな」


 どうやら僕達の会話が聞こえていたらしい。良い歳こいて恥をかいてしまったので、大人しく司祭の読み上げる聖書の物語を聞く。


 要約すると千年以上前には今より高度な文明が存在していたが、ある日魔族の王が願いを叶える神器を手に入れ、世界に対して宣戦布告したらしい。神器を持った魔族の力は凄まじく人類は大きく数を減らしてしまい、人々は魔族の王を恐れ魔王と呼ぶようになった。


 人々が平和を神に祈るようになったそんなある日、小さな村に一人の少年が産まれる。少年は数人の仲間と魔王城に特攻、神器の奪取に成功し魔王を討伐し勇者になった。


 神器の力で死ねない体になった勇者は、今もこの世界を見守っているんだそうな。


 つまり、勇者は今もみんなを見てるから悪いことをしてはいけないと言うものらしい。結論を言ってしまえばどこかのゲームで聞いたことありそうな話しだ。


 でも、願いを叶える神器か、そんな物があったら元の世界に帰れるのかな。


 「良いですか皆さん、セシル様はいつでも皆さんを見てらっしゃいます。私たちはセシル様に恥じないように生きなけらばなりません」


 セシルと言うのがその勇者の名前らしい。聖書の朗読が終わると今度は讃美歌の合唱があり、今日の日曜学校は終わる。せめて文字の読み書きの授業が欲しかったが、無かったものは仕方ない。


 司祭に別れを告げ、帰ろうとすると朝同様来ていた他の子供達に捕まる。


 「ねぇねぇ、お城の中ってどうなってるの?


 「どこから来たの〜?」


 「二人はどう言う関係なの?」


 大量の質問攻めで、あっという間にまた囲まれてしまう。


 「え〜と、僕は記憶喪失でよく分からないからジンに聞いてもらって良い?」


 「あ、おいアスカ、卑怯だぞ!俺に押し付けやがったな」


 たまにはこの設定で楽させてもらっても良いだろう。それに、まだ女児服を人前で着ている気恥ずかしさもあるから、なるべく注目は浴びたくない。


 子供達に揉みくちゃにされてる仁を遠巻きに見ながら、事態が沈静化するのを待つ。でも、あんまり時間が掛かるようなら外で待ってるカインの為にも止めに入った方が良いのかもしれない。


 「ねぇねぇアスカちゃん、ちょっと良い?」


 「ん、良いよ、どうしたの?」


 そんなことを考えながら待っていると一人の少女に話しかけられた。頭にはどこかで見たような犬の耳飾りがピョコピョコしている。


 「私ペロって言うの、よろしくね。私のお姉ちゃん、シアンって言うんだけどお城でメイドさんとしてちゃんと働けてるかなって…お姉ちゃん、色々緩いから」


 どうやらペロちゃんはシアンの妹さんみたいだ。小柄だが、歳は今の僕達とあまり変わらないと思う。


 「シアンさんなら確かに緩いけど、メイドさんとしては立派にやれてるから大丈夫だよ」


 「そうなの?よかった〜、今度の仕事は大丈夫そうで」


 どうやらシアンさんは前に他の仕事をしていたらしい。メイドとしは申し分なさそうな働きぶりだったけど、前は何の仕事をしてたんだろ?


 それにしても…


 「ねぇペロちゃん、こっちからも一つ聞いていい?ペロちゃん達の耳と尻尾って本物なの?」


 「えっ、ほ、本物って?」


 ペロちゃんが困惑している。まぁそうだよね、お前の耳本物?なんて突然言われたらそりゃ驚くよね。


 「いやね、作り物や飾りには見えないけど、僕、頭から耳が生えてる人見たことなかったから気になってさ」


 「そっか、獣人を見たことなかったんだね。私たちの耳も尻尾も本物だよ、触ってみる?」


 「えっ、い、いいの?」


 ペロは頷くと頭をこちらに向けてくる。近くで見ると確かに顔の横側面には耳が無いし、上にあるのが本物なのだろう。


 「そ、それじゃあ失敬して…」


 触るとやっぱり犬の耳を触ったような毛のフサフサした感触と、体の一部である証拠の暖かさがあった。この感触、いつまでも触っていられそうだ。


 「ね、ねぇアスカちゃん、もういい?」


 ペロが恥ずかしそうに聞いてくる。


 「あ、あぁごめん、気持ち良くってつい」


 少し未練があるがペロの耳から手を離す。それにしてもこの世界、獣人なんて種族もいるんだ。さっきの聖書に出てきた魔族ってのも、もしかしたらどこかにいるのかな?


 「おい、何遊んでんだ」


 呼びかけられて振り向くと、そこには疲れ切った仁の姿があった。


 「あ、仁。質問攻めは終わったの?」


 「ああ、誰かのおかげでやっとな。それよりこの子は?」


 「あ、ぺ、ペロって言います」


 仁の風体と不機嫌さにペロは若干怯えている。ダメだなぁ子供には優しくしないと。


 「それじゃあカインさんを大分待たせちゃったしそろそろ行こうか」


 「そうだな、誰かのせいで無駄に時間喰ったからな」


 なんか恨み節が聞こえるが気にしない。いつも人を巻き込んでるんだ、たまにはこう言うのも良いだろう。


 「じゃあねペロ、また来週」


 「うん、じゃあね」


 ペロと別れ、待たせ続けてるカインの元へ向かう。カインのことだ、怒っては無いだろうけど、あんまり待たせてしまっても申し訳ない。急いで待ち合わせのカフェに戻ることにした。

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