サロンモデル
「あ、あの!お客様!」
「はい?」
受付のお姉さんが声を掛けてきた。なんじゃらほい?
「サロンモデルをしていただけませんか!?仕事になりますので、お金をお支払いします!」
「え!」
そんな事言われると思ってなかった。どうしよう。お金は欲しいけど、サロンモデルってどんな事したらいいの?
「駄目ですか?」
「いえ、あの、何をすればいいですか?」
「写真を数枚撮るだけです!どうでしょうか!?」
凄いぐいぐいくるな。写真数枚ならいいか。
「いいですよ」
「本当ですか!?すぐに準備します!」
「ちょっと貴女。写真1枚で幾らになるのかしら?」
ママン登場だ!
「男性の方ですので、100万以上になると思います」
「そう、ゆうちゃん大丈夫?」
「大丈夫だよ」
心配してくれたんだね!優しいじゃないか!ママン!ていうか、100万以上!?凄くない?
お姉さんが美容師さんと店の一角で準備してる。ライトや機材とかも出すのか。お、カメラも本格的。
「準備出来ました。こちらへどうぞ」
立ち位置や角度を指定されて何枚か撮る。めっちゃ普段着だよ?この間買ってもらったばかりだけど。
「カメラ目線でお願いします」
ちょっと恥ずかしいけど、カメラ目線。
「はい、終了です!ありがとうございました!」
カウンターでお金の清算だね。カット代いくらなのかな?
「サロンモデルのカットをしたので、カット料は無料になります。ワックス代の1500円をいただきます」
おー!タダになった!やったね!
さて、帰ろう、帰ろう。え?口座番号?モデル代は振込で?カキカキ。さっき書いたばかりだからね。でも間違えてないか確認。OKだ。
「ご来店ありがとうございました」
「ゆうちゃん、頭スッキリしすぎたわね。でもカッコイイわ」
「ありがとう」
これで、理想の男子!筋肉が足りないけど、トレーニングあるのみだ!食事もね!可愛い彼女が出来るかな?美人より可愛い子が好きなんだよね。
家に帰ったら琴ちゃんに騒がれた。「カッコイイ!」って言われたからまんざらでもない。琴ちゃん見る目あるー。琴ちゃん可愛いし!兄妹だし、歳下すぎるけどね!残念。思い切り抱きしめるのだ!
ーH&t 美容室ー
「きゃー!今日来たサロンモデルのお客様、凄いカッコよくなかった!?」
「カッコよかったけど、髪の毛どんどん切ってくれって言われて血の気が引いて来たわよ!」
「そういやカットしたのゆんさんだったよね。お疲れ様!良いカットが出来たじゃない!サロンモデルの写真本社に送っておいたから、研修で呼ばれるかもよ?」
「はあ〜。あんなに短く髪を切る男の人なんて居ないのに、流行るかしら?」
「メンズの女性が切るかもしれないじゃない?ショート好きの女性なら切りそうだけど?」
「あの写真貰えないかな?」
「無理じゃない?こっそり現像したのバレたら首だよ?」
「ええー、残念。あ!良い事思いついた!壁にあの写真を飾って、それからスマホで激写する!」
「う〜ん、それならいいのかな?」
どうだろうか?一般人だからアウトかもしれない。モザイク必須だ。
ーその頃のH&t 本社ー
「何この写真!カッコいい!」
悠真の写真が社内の経営陣の間で話題になっていた。
「発信元は?」
「蒼羽の男性御用達サロンからです!」
「芸能人じゃないの?」
「一般人の人らしいです。口座番号が書かれていて、サロンモデル代を振り込んでほしいそうです」
「この写真ならサロンのイメージモデルとして売り出したいくらいだわ。本人に連絡はつかないの?」
「一般人なので、探偵を雇えば何とかなるかもしれませんが、男性保護地区内なので不審者として逮捕されるかもしれません」
「男性保護条例に引っかかるかもしれないのね。ーー今回はいいわ。また、その写真の男性客が蒼羽に来たら、サロンのイメージモデルとして起用出来るか商談するように通達しておいてくれる?」
「蒼羽サロンに連絡しておきます!」
「ああー、カッコいい。社長!この写真、売り出しません?」
「サロンモデルとしての許可なら取ったらしいけど、売り出す許可は出てないわ。違法になるわよ」
「ああ〜、残念!データだけでも駄目ですか?」
「バレた時が怖いからダーメ」
H&tは全国展開している美容室だ。サロン独自の美容品も売り出しており、男女問わず人気がある。
その中でも男性保護地区内に男性御用達美容室を構えて、男性サロンモデルを勧誘して写したサロン独自の店内だけに置いているヘアカタログは、来店する女性に人気だ。油断してると切り抜きされて本が駄目になる事もある。もちろん器物損害だ。犯罪である。
悠真が全国の人に認識される初めての出来事だ。
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