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精子バンク提携病院と男性御用達美容室

 精子バンクと提携している病院に行くことになった。予約がすぐ取れたのだ。


 お母さんの車で向かうが、後部座席に座っている。何故かって?目立たない為にだ。


 もともと悠真の身体に入った時は身長165cmだったのに、4月初めの今は身長189cmもある。急成長も急成長だ。身体が痛いはずだよ。毎日バキバキだよ。その状態で勉強した私、偉い。

 縦に伸ばす為に身体を使ったのか、ちょっとヒョロイけど、がたいを良くする料理を食べようと思う。プロテインも飲んで筋肉トレーニングもしたい。理想の私になるんだ!


 というわけで、女の子に擬態出来なくなっちゃったんだなこれが。『男!』て分かる体型になってしまった。帽子は被るけど。


 そして、高校の制服。注文する時期に成長期だったから仕立てが入学式に間に合わない。4月の末に出来るらしいから、それまで保健室登校だ。ちょっとやだね。問題児みたいで。


 家からそう離れていない病院に着いた。ここって入院してた病院だよね?お母さんは駐車場の奥まで車を走らせると大型バスが止めてあった。

 車から降りて、大型バスに近づくと案内の女性に「精子提供していただく男性のみバスにお乗りください」と言われて、お母さんと別れた。


 バスに乗り込むと、この世界で初めて見る白衣を来た男性がいた。


「ようこそ、青葉悠真さん。アンケートと必要事項を書いてもらう用紙があるから、ここに座って書いてね。時間は気にしなくていいから間違え無いように」


「は、はい」


 椅子に座って、バインダーを渡された。


 名前と生年月日、住所に年齢。簡単なアンケートと銀行口座の番号。これは精子提供をしたらお金が振り込まれるらしい。


「書けました」


「確認するね」


 この男性の先生だけなのだろうか?2人きりっていうのも緊張するな。


「問題無し。じゃあ、こっちに来てペ◯スを出してね。消毒するから」


 サラリと凄い事を言ったぞ、この先生。ちょっと恥ずかしい。が、出せと言われたら出す。


 丁寧に消毒されて、大人のおもちゃのような穴にブツを入れてくれと言われた。


「僕は隣の部屋にいるから、遠慮なく何かあったら声を上げてね」


 お、男は度胸だ!やってやる!







「はい、お疲れ様。無事に採取出来たからね。服を整えてから帰っていいよ。帰りは気をつけてね。ちょっとフェロモンでちゃってるから」


「はい」


 頭がぼーっとする。大人の階段登っちゃいましたって感じ。機械相手だけど。匠の技でした。


 そう、この世界の男性も女性も性的に興奮するとフェロモンがでちゃうらしい。異性を惹きつけると言うあれだ。なんか匂うらしいんだよね。


 服を整えてからバスを降りると女の人が赤面した。


「すみません。手を洗いたいのですが」


「は、はい!ご案内します!」


 病院内で手を洗ってから、家の車に乗る。お母さんが心配そうに見て来た。


「あらー、刺激的だったのかしら?なんか色っぽいわよ」


 実の母に色っぽいと言われる息子。恥ずかしい!両手で顔を押さえちゃう。あれだね。初めて生理になった時みたい。


「ゆっくり休んでなさい。今日は他に行きたい場所はある?」


 ある!


「髪を切りに行きたいです!」


「そう?じゃあ男性御用達の美容室に行きましょうね」


 男性御用達なんてあるんだ。値段が高くないかな?


 またまた、車で素早く移動して美容室に着いた。駐車場があって入り口が近い。こういう所が男性御用達か。一見何の店か分からなくなっている。


「いらっしゃいませ。御予約はされてますか?」


「いいえ、今から散髪してもらえるかしら?」


「はい、大丈夫ですよ。お荷物受け取ります」


「いえ、大丈夫です。ゆうちゃん、鞄を貸して。持っててあげるから」


「ありがとう」


 待合室から散髪の様子が見えるようになっている。男性の不安を取り除く為だな。


「ご案内します」


 今は客は誰もいないみたいだ。椅子は2つある。美容師さんが2人いるのかな?誘導されて椅子に座る。雑誌を持ってきてくれた。


「雑誌をどうぞ。美容師を呼んで参ります」


「ありがとうございます」


 この世界の雑誌って初めて。いや、これはカットモデルかな。髪型を選んでくださいってことか。男性カットが少ないな。モデルになる人がいないのかな?


 雑誌を見ていると奥の扉から女性が出て来た。美容師さんだろう。40歳くらいかな?


「ご来店ありがとうございます。鷹見と申します。髪型はどうカットしましょうか?」


 私は雑誌を置く。


「カッコよく見えるように切ってください」


「カッコよくですか。……。お客様はお綺麗な顔立ちをされていますが、ユニセックスな髪型ではなく?」


「はい!カッコいい髪型がいいです!」


「ちょっと、お髪を触りますね。ふ〜む。分かりました。カッコイイ髪型にしましょう。お任せでいいですか?」


「はい!よろしくお願いします」


 カットクロスを着て、高さを合わせられる。長かった髪が勢いよく切られていく。髪を切るのを見るのが好きなんだよね。


 あ〜、頭触られるの気持ちいい。ツボがあるからだよね!




 40分くらい切ったら、別のお客さんが入ってきた。男性だ。男性御用達の美容室って本当だった!


 なんか凄い髪がもっさりしてる人だな。女性のボブくらい長いぞ。スッキリと切るんだろうな。


 あ、声をかけられた。


「このくらいの短さでどうでしょうか?」


「まだ長いんで、もっと切ってくれますか?」


「もっとですか?」


 ちょっと美容師さんの顔が引き攣った。いや、まだぜんぜん長いよ!髪が耳の下についてるじゃないか。隣の男性もびっくりしてる。え?これが普通の長さって事?いもじゃん!いも!


 美容師さんが真面目な顔になった。慎重に短く切ってくれている。


 仕方なく髪型に口を出す。「もっと!もっと!短く!」と言うと、女性の顔がひー!って顔になってきた。パパ達はもっと切ってたぞ!男性のオシャレ雑誌も見てたし。


 満足するまで短く切ってもらったら、髪を洗ってもらう。はー、気持ちいいー。この人、髪を洗うのが上手いな。足がぴくぴくしちゃう。


 席に戻ってドライヤー。あー、気持ちい。


「こ、これで、どうですか?」


 後ろから鏡を掲げて後ろを見せてくれる。マッシュスタイルでサイドとバックを短めに切って軽快な髪型になっている。でももう一手間足りない。


「ジェルワックスってありますか?」


「ジェルワックスですね。お待ち下さい」


 美容師さんが持って来てくれる。


「どうやってつけましょうか?」


 分からないんだな。


「自分でつけるので貸してもらえますか?」


「は、はい!どうぞ」


 なかなか品がいいな。手のひら全体に伸ばして、わしゃわしゃとつけてから指先で髪型を整える。空気を含ませるようにちょんちょんと持ち上げるのがコツ。


「お!お似合いです!」


 そうだろー!悠真くん素材がいいからね!


「このワックス買えますか?」


「在庫があるのでいいですよ。ちょっとお高めですが大丈夫ですか?」


 値段は気になる。


「いくらですか?」


「1500円です」


「買います」


 これぐらいならいいでしょう。





 ー精子バンクー


「今日の精子バンクの採取者のランクは決まった?」


「はい、1-0110879番、青葉悠真が初めての精子採取だったのですが、提携病院からの身体情報に、顔面偏差値、ペ◯スの大きさ、精子の活発さで、Aランクに決まりそうです。高値が付きますよ。歳と共に衰えるでしょうが」


「良かったわね。やっぱり男性職員が担当すると無防備になってくれるわ」


「ははっ、男性がランクをつけられて、Eに該当すると精子破棄するなんて国民に言えないですよね」


「国家を守る為よ。貴女、そんなに口が軽いと処分されるわよ」


「あー、怖や怖や。良い精子が選べるかと思って入ったら怖い組織ですもんね。一般女性には優しいですけど」



 精子バンクには一般に公開されていない遺伝子検査が提携病院で行われており、精子バンクでランク付けされている。遺伝子異常や身体異常、生殖不能の精子はそこで破棄され、一般女性に使われる事は無い。


 これは国のトップシークレットだ。だが、一般女性は精子バンク提携病院に行って人工授精の予算を告げる段階で勘づいている者もいる。Dの精子が値段が安く、Aの精子は高い。出来るだけ良い精子を貰う為に女性達は予算を積み上げる。この金が病院、精子提供者、そして国に回るのだ。


 国を守る為に、この検査が行われている。



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