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男性支援センターからの卒業

 それから1週間がたち男性支援センターにお母さんに送ってもらい、案内の人にこれから宿泊する部屋に案内してもらってからセンター内も案内してもらった。


 驚くことに、男性支援センターは男性がいつでも駆け込み寺のように助けを求めてきたら保護する為に年中無休らしい。何かあったら助けを求めようと思う。


 次の日から教育が始まったが、もう頭に知識を詰め込み作業だ。

 でも私が理解できるまで待ってくれる。休憩時間もこまめに入れてくれるし、お茶まで出てくる。これで無料って凄いと思う。この世界は男性の為にお金も時間もかけてくれるようだ。

 何故か毎回お茶を持って来てくれる人が違うんだけどね。


 数学と英語と理科は大丈夫だったけど、その他の勉強が全て初めからやり直しだった。今までの努力を返してほしい。先生を雇ってくれたみたいだから我儘は言えないけどね。

 カウンセリングもしてくれる。記憶障害があると思われてるから。毎回癒やし系の女の人で、胸がキュンとしちゃうんだけどね。どうせ女の人に免疫ないよ。


 それと、12月頃から成長期が来て、服がパッツンパッツンになってしまって、慌ててお母さんが新しい服を届けてくれた。成長期怖い。身体も痛いし。それにユニセックスな服が似合わなくなってきて、お出かけする時が不安だ。まだ、成長期は続いている。


 成長期と勉強に悩まされつつ、3月。


 私、高校受験してなくない?と気づいて、慌ててお母さんに電話したら「受験しなくても男性が入れる高校があるから大丈夫よ」と言われてホッとした。

 でも、後から受験しなくても入れる高校って大丈夫なのか不安になってきた。今から心配しても仕方がないけど。



 センターの人に良くしてもらって、3月末。とうとう一般常識と中学までに覚える勉強が終わった。この身体のスペックは凄いのかもしれない。


 センターのお姉さんやおばちゃんに泣きながら別れを告げられて、ちょっとしんみりしつつ感謝を伝えて家に帰った。


「あ、お母さん、私、精通した」


 お母さんが固まった。私はソファに座る。そうなのだ。成長期が一気にきて、私の男の身体が成熟したのか精通した。男性の身体の神秘を感じた。女性の生理よりマシかもしれない。月経前症候群でちょっとだけ体調と精神に影響があったからね。


「お、おめでたいわ。今日はお祝いしましょうね」


「琴ちゃんにはなんて言うの?」


「ゆうちゃんが帰って来たお祝いと言いましょう。それと精子バンクに連絡しないと行けないわ」


「男性の義務ってやつだね」


「そうね、予約を取らないとね」


 そういうことになった。





 琴ちゃんが家に帰って来たら、私が成長して声変わりもしてたからちょっとだけ警戒された。


「お兄ちゃん?」


「そうだよ琴ちゃん。ただいま」


 警戒した猫みたいだったけど、好奇心がまさったみたいで、じりじりと近づいて来て喉仏や身体をペタペタ触ってから抱きついてくれた。妹可愛い。琴ちゃんは今年から小学校5年生だ。まだまだ可愛いざかり。


 夜ご飯はお赤飯だった。



 まだ、自分の部屋って感じがしないけど、どことなく落ち着くベッドに横になる。


 お母さんに成長期で服がどんどん合わなくなるから、自分の服は自分で買うと言ったら通帳とカードをくれた。これでネット通販で服が買える。




 ー男性支援センターー


「あー、悠真くんが帰っちゃったー」


「潤いがー」


「女性に怯える男性が多いのに、悠真くんすれ違うと必ず挨拶してくれるのよね」


「カッコいいし、綺麗だし」


「いい匂いもするし」


「やだ、あんた、どこで匂ったのよ!」


「洗濯物ー」


「通報するよ?」


 男性支援センターのメンバーは選りすぐりのエリートなのだ。男性を怯えさせないように、理性を総動員させて男性に耐性のある女性が選ばれる。


 地方の男性は仕方がないが、栄えている街近郊の男性は男性支援センターがある町に集められる。警戒されないように。


 60年ほど前に各家庭に男性を任せておいたら、幼い子供のうちに誘拐される事件が相次いだので、男性とその家族を保護する為に「男性保護地区」が誕生した。全国に12ヶ所ある為、男性がいる家族が引っ越しする場合にもその12ヶ所を勧めている。

 全国の女性に幼い頃から『男性には優しく大切にしましょう』と洗脳じみた教育をしているだけあり、教育を初めてから犯罪は減少傾向にある。ただ、減少しただけで完全にはなくなっていない。どこかで飼い殺しになっている男性が少なからずいるのだ。そんな時は男性保護団体と特殊部隊が情報を集めて事件解決、救助に向かう。心に傷を負った男性に男性支援センターで生活してもらい、カウンセリングを行い、また社会に戻れるように支援する。

 今回の悠真の教育もそのいっかんだ。


 『記憶障害』


 女性はみんな優しく悠真を真綿に包むように接していた。勉強はちょっとだけスパルタだったが。


 悠真も安心して生活していた。着衣後の服の匂いを嗅がれるまでに油断していたとも言う。


 この世界の女性のほとんどは肉食獣を心に飼っているのだ。草食獣を飼っている女性は珍しい。それは生存本能と言ってもいいくらいだ。生きて子孫を残す為に男性を求める。すなわち本能。


 油断して気が緩んでいる悠真は高校でどうなってしまうのか?



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