男性支援センター
とりあえず部屋に入って物の位置を把握しておく。服はここ、下着、靴下はここ、ドライヤーにクシはここ、制服はこれ、勉強机も確かめる。絶対に歴史がおかしな事になっていそうだ。
ぱっと見ただけで、勉強のし直しだと分かる。くそぅ!今までの努力が!
ベッドにふて寝する。なんかいい匂いするなぁ。嗅いでみると、なんと悠真君の体臭じゃないか!?嘘でしょ!男性の体臭が良いだ匂いなんて!信じられん!6千人に1人のマジックか!?
ゴロゴロして、ガバッと起き上がる。お風呂に入ろう。男性の身体の神秘を確かめたかったんだ。自室で周りには誰もいない!
るんるんと準備をしてぱぱっと裸になりお風呂に入る。
全身洗ってからブツに手を伸ばす。手にはボディソープ。いざ!!
はー、いい湯だった。あ、結果はって?駄目です。悠真くんの体はまだお子ちゃまでした。そう、精通してなかったんです!この世界の男性は成長が遅いのかなぁ?悠真くんだけかなぁ。衛生的に悪いらしいから皮はむきむきするけどね?
ドライヤーで髪を乾かす。髪の毛長いんだよなー。出かけるのに女装する為と言えさぁ。バッサリと切りたい。悠真くんの顔、かなりイケてると思うのですよ!それを髪型で生かさないと!
さてさて、悠真くんの通帳はどこかな?何をするにも金が必要だ。
財布は見つけたけど通帳が無い!通販も出来ないじゃないか!さてはお母さんだな!まあ、後でいいや。ネットで情報を調べてみよう。
ぱちぱちぽちっとぽちっとな。世の中、女性ばっかしだ。政界も芸能界も女性に支配されとる。男性芸能人も少しいるけど、凄い人気だ。そんなにイケてないのに。男性の被写体ってだけで人気があるのか?海外の人の方がまだイケてるぞ。
芸能界で一稼ぎして女性にちやほやされるのもいいな。まだ、お子ちゃまだけど。勉強もしないといけないし、一般常識もないけど。しないといけない事がいっぱいだ。
男で検索。おお、いっぱい出て来た。ネットの書き込みでも見てみますかね。
oh。サイキンノジョセイッテカゲキデスネ?
いや、私も女だったけどさぁ?男好きじゃなかったから友達感覚だけどさぁ?女の子を求める気持ちなら分かるけどけどさぁ?置き換えてみても、女性が男性を求めるのが過激だと思うのです。
やっぱり、誘拐や犯罪が現実味をおびてきた。お〜の〜!私は女の子と恋愛が出来るのでしょうか?それとも肉食獣のように女性に食い荒らされてしまうのだろうか?女性を見る目をまずは鍛えないといけないゾ!
ま、それも明日か。
それから、学校から帰ってきた妹・琴ちゃんと顔合わせした。
琴ちゃんは飛びついて帰って来たのを喜んでくれたけど、ごめんね、はじめましてなんだ。みんな記憶障害だと思ってるけど。涙目になってたのは可哀想だったので、ぎゅーっと抱きしめてあげたけどね。これから思い出を作っていこうね!琴ちゃん!
そして夕食の準備。悠真くんはいつも料理するお母さんのお手伝いをしていたらしい。
編みぐるみしたり、料理したり本物の女子より女子力が高い!
見習って私も料理を覚えようと思います。少しは出来るんだよ!料理を手伝ったらパパもママも喜んでくれたからね!でもね、分量が違いすぎるんだ。大家族だったしね!3人前の作り方を覚えないといけないね!
夕食もケーキも美味しかった。
翌日、女装?一歩手前をしてお母さんの運転で男性支援センターに向かっている。ユニセックスな服でいいと思います。帽子は目深に被ってるけど。
「男性支援センターだから変な人はいないと思うけど注意してね」
「分かった」
男性は常に注意しないといけないのか。
病院でなんで裏口から帰されたのかが今になって分かる。私達を危険に晒さないためだったんだ。
男性支援センターに着いた。警備員と監視カメラがそこら中にある。まあ、ここで待っていれば男性が自分からやって来ると分かっていれば待つ人も居るよな。女性警備員良い。はっ!私が変な人になってしまう。あまり注視してはいけない。
それにしても大きな建物だ。男性の使用者もそんなに居ないだろうに。
中に入ると案内受付があった。
「9時に予約していた青葉です。何処に行けばいいでしょうか?」
「ようこそ、青葉様ですね。特別棟の1番の部屋でお待ちください。担当者が参ります」
「ありがとうございます。特別棟の1番の部屋ですね」
特別棟か。聞いただけで特別だ。お母さんの後について行く。
やっぱり広い施設だ。だけど、清潔感があってなんか近未来的な芸術も感じる。道順も迷わずに親切設計だ。
特別棟はちょうど建物の真ん中くらいかな?1番の部屋に入ったら、女性担当者が待っていた。早いよ。帽子を取る。
「ようこそ、お座りください。後ほどお茶が届きます」
「今日はよろしくお願いします。紹介状になります」
ソファ席に座る。良いソファを使ってるな。
「拝見します」
担当者は持って来た資料と紹介状を見比べている。私達はじっと待つ。
コンコンコン
「失礼致します」
お姉さんが静かにお茶を並べてくれる。
「ありがとうございます」
お礼を言うと、はにかむように笑ってくれた。可愛い。
お姉さんはお茶を置くと部屋から出ていった。
お茶を飲む。ふむ、緑茶。
「照合が終わりました。事前に病院からいただいた資料と同じですね。
御子息様が記憶障害で日常生活にも困っているとの認識で構いませんか?」
「そうです。もう、赤ちゃんに一から教育するようなものだと認識していただければいいです」
ママン!それは酷い!そうだけども!
「そうなりますと、学校でも困っているのでは?」
「記憶障害がおきてから学校には行っていませんが、とても日常生活を普通に送れるとは思えません」
ママン!ひでー!本当だけども!
「来年から高校ですよね。授業についていけますか?」
「昨日、本人から聞いたところ、勉強も忘れてしまっているようです」
「と、なると、今は10月。4月まで5ヶ月ちょっと。うーん、御子息を男性支援センターでお預かりして、朝から晩まで勉強をすれば、ギリギリ間に合うといった所ですね。御子息をお預かりするのは大丈夫ですか?」
「それしか、高校入学まで間に合いませんよね?」
「そう、ですね」
「費用はいかほどお支払いすればいいでしょうか?」
「男性支援センターなので無料ですよ」
「まあ!ありがとうございます。それではいつから始められますか?」
「資料と教育者を揃えるので、1週間ほどかかります。また電話でご連絡いたします」
「よろしくお願いします」
私は緑茶を飲み干してママン達と一緒に立ち上がる。
話が終わったので、礼をしてから男性支援センターから家に帰った。
「ゆうちゃん。多分来週からだと思うけど、死ぬほど頑張ってね。センターの人も頑張ってくれると思うけど」
「ゆうちゃんは頑張ります!」
5ヶ月でこの世界を学ぼうってんだ。これは根性がいるぞ!
「本当に頑張ってね?」
あれ?ゆうちゃん信用無い?
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