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狙われた男子生徒 1

 朝起きて、身支度をして鏡の前に立つ。

 今日から制服を着て教室登校だ!髪の毛のセットもバッチリ!


 1階に行くと母さんが朝食の用意をしていて、琴ちゃんがテレビを見ていた。


「おはよう。制服着てみたけど、どうかな?」


 母さんと琴ちゃんが悠真を見ると、顔が輝いた。

 琴ちゃんが立ち上がって抱きついて来た!


「お兄ちゃん!すっごい!すっごい!カッコいい!」


 すりすりすりすりと顔を擦り付けてくれたので、琴ちゃんをぎゅっと抱きしめてお返しする。

 琴ちゃんは、きゃっきゃっと笑って上機嫌だ。


「あらぁ、制服がすごく似合ってるわね。私、こんなに格好いい子供を産んだかしらー」


 母さんがとぼけた言い方をしながらも褒めてくれた。私はそれに笑ってしまう。


「はははっ、おはよう母さん。間違いなく母さんの子供ですよ?」


 みんなで笑って幸先は良いようだ。


 朝食を3人で食べて、琴ちゃんが学校へ出掛けた後にインターホンが鳴ったので確認すると、高校のバスのお迎えだったので、母さんに「行ってきます」と言って出かけた。


 バスの入り口に立っていた警護員さんに挨拶してバスに乗り込み、空いている席に座る。

 この頃になると、みんなおんなじ席に座るようになるので、喧嘩しないで済む。いや、この世界の男性は喧嘩しなさそうだけども。そういや、女性が喧嘩しているのも見た事ないな。


 高校に着くと、いつも男性がバスから出てくるのを待っている出待ち女子がいるので、ガードウーマンさんが頑張ってくれている。

 何故か初日から1番最初にバスから降りるのは私なんだよな。別に譲ってくれなくてもいいんだぞ?


「悠真!おはよう!」

「ああ、誠、おはよう!」

「一緒に教室まで行こう?」

「いいよ、行こう」


 誠と警護員に守られて2階の教室まで行く。

 今日は出待ちの女子の歓声がいつもより大きく感じるな?


「ゆうまく〜ん!!!」


 叫ぶような声で自分を呼ばれて驚いて声のした方に振り向いてしまった。


 そうしたら、「ぎゃ〜〜〜!!!」と一際うるさい叫び声がして驚いて歩く足を止めてしまったら、誠が腕を引っ張ってきた。


「悠真!止まっちゃダメ!女子にのみ込まれるよ!」


 引っ張られるまま足を動かして、その場から離れる。


「え?誠、のみ込まれるって?それと私を呼ぶ声が聞こえたんだけど?」

「教室で話すよ!今は早く歩いて!」

「うん?」


 いつもより足早に教室を目指して歩いて行く。周りにいる男子が見事にみんなビクついてちぢこまっている。

 よく見ると、ガードウーマンが凄い勢いで女生徒達を止めている。暴動一歩前って感じだ。

 それを意識した瞬間に背筋がゾッとした。

 女子に波に飲み込まれる幻影が見えたのだ。


 先導してくれる警護員にみんな足早について行く。

 いつもとは何かが違う。


 2階の教室に1年生6人が全員入ると、女子の声が遠くなった。

 男子を見ると、みんな顔が青くなっている。

 そして、何故か私を恨みがましくチラチラと見てくる。


「悠真、席に行こう」

「うん」


 誠と隣り合って席に座る。


「ねぇ、誠、今日はなんだかいつもと違うくなかった?女子が怖いっていうか」


 誠にじっとりと見つめられた。


「悠真、今日から制服だったんだね?」

「うん!やっと届いたんだ!似合ってる?」


 にっこりと笑って言うと、ため息を吐かれた。何故?失礼な!


「似合ってるって言ってよー」


「似合いすぎてるから困ってるの!」


 誠の声が静かな教室に響いた。

 え?私の制服姿が似合いすぎて困っちゃうの?


 誠がばっと悠真を見た。その顔は真面目だ。


「悠真!制服もだけど、髪型もいつもより気合いが入ってるよね?!それで、女子が興奮しちゃったんだよ!」


 周りにいた4人の男子がいっせいに頷く。あれ?あなた達も聞いてたの?保健室登校が終わって初めて一緒に勉強するのに酷いなー。


「なんか、私が名前を呼ばれたのって何故か知ってる?」


「僕たちが入学して結構経ってるでしょ?新入生男子の顔写真とか名前とかが出回ってるらしい。警護員の人でもたくさんの女子が撮った画像の消去が間に合わないって僕たちに謝罪に来た」


 ほー、まるでアイドルだな、こりゃ。男子1に対しての一千人は凄いらしい。競争率って言うのかな?


「その中でも1番の人気が悠真らしいんだよね。ほら、頭二個ぐらい飛び出してて目立ってるでしょ?」


 そうだね。私は他の男子より大きいね。


「それが、制服を着ちゃって、もっとかっこよくなったら、女生徒が興奮しちゃうよね?僕も今日バスに乗り込んで来た悠真を見た時は固まっちゃったもん」


 ふふん、私がカッコいいのが『罪』って事だね?モテモテ計画は成功じゃん?これで、可愛い系女子と付き合えたらいいのだけど。


「何得意げな顔してるんだよ!僕たち本気で潰されると思ったんだからね!」


 怒の誠くんを慰める為に肩に手を回す。おちつけー、落ち着けー。


 私と誠以外の男子が全員、机に懐いた。疲れたのかな?


「悠真、冗談抜きで命を狙われるよ?」


 誠がぼそっと怖いことを呟いた。何故?


「どうして?」


 誠が座った目で見つめてきた。誠、可愛い系男子だから、ちょっと照れるかも。


「今年のね、新入生男子は、『当たり』って言われてるんだ。知ってる?」

「当たり?なんの?」

「僕たち新入生男子が全員、顔がいいって」


 私は席から立ち上がって、1番前に座っている3人の顔を無理矢理見た。だって机に懐いてるんだもの。


 No.1!窓際君!醤油顔だけど整ってる顔と言えなくもない。

 No.2!真ん中君!細面だけど、繊細な美しさがある気がせんでもない。

 No.3!端っこ君!小さいけど、小動物的な可愛さがある。


 2列目の窓際にいるNo.4!顔を無理矢理上げさせる。うん、ハーフですか?少し色素が薄いですね?気が付かなかった。

 そして、No.5!誠!うん、普通に可愛い系男子だよ。

 そしてそして!私!今日はいつもよりキメて来ましたよ!普通に見てもイケメン!です!母さんの遺伝子がいい仕事しましたな。


 女子は化粧で化けるけど、男子は髪型と服装で垢抜けるからね!


「で、それがどうしたの?」


 誠が小さく叫びながら嘆いた!


「僕たち狙われてるんだよ!ほとんどの女子に!」


 それは悲痛な叫びだった。

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