高校入学式 1
翌日、アラームで目が覚めて、顔を洗って歯を磨いて、ちょっとキッチリした服を着てヘアセットをする。うん!今日も格好いいぞ!
部屋からダイニングに行き、母さんが作ってくれた和食を一緒に食べる。
「ゆうちゃん、これから登校する時はバスでお迎えが来るからね。インターホンが鳴ってお迎えだと分かったら出かけていいからね」
「うん、分かった」
便利だな。さくらの時もパパに送迎してもらったけど、この世界は学校が迎えに来てくれるんだな。
「入学式、見にいくからがんばってね!」
そんな期待されても、母さんと記念撮影くらいしかしないって。多分。
食事が終わったら片付けをして、リビングでテレビを見ているとインターホンが鳴った。母さんが取り次ぎをする。
「ゆうちゃん、迎えのバスが来たわ」
鞄を持って立ち上がる。
「それじゃあ、行ってきます」
「行ってらっしゃい」
外に出たら結構大きいバスが止まっていた。なんかスーツを来た体格のイイ女性がいたので「おはようございます」と挨拶をしてバスに乗り込んだ。
運転手さんにも挨拶すると、高校の制服を着た男子達が椅子に座っていた。座席は1人ずつ座るように独立していて、みんな私服の私を見てきた。この世界でたくさんの男子を見たのは初めてだ。空いている席に座りシートベルトをする。
バスが発車する。バス内は無言だ。話したりしないのかな?窓にカーテンが引かれてるし。
それからバスは何軒かの家を回ってから学校まで走って行った。
バスのアナウンスで到着を知らせると何人かの頭がビクッとした。子うさぎかよ。
ドアがプシューと開いても誰も動かない。混むのが嫌だから1番最後に降りようと思っていたのに、1番初めに降りた。後ろから男子達がそろりそろりと降りてくる。草食動物かよ。
「皆さん、案内しますので固まってついてきてくださいね」
ガードマンらしき女性が声を上げる。いや、ガードウーマンか?
ささっと私達男子生徒を守る配置についた。おー、凄い。
女性について歩いていると、控えめに声をかけられた。
「あのー、悠真くんですか?」
「はい?」
声の聞こえた方に振り向くとかわいい系の男子生徒がいた。成長期が来る前だったら視線がちょうどいい高さだったかもしれない。
「悠真くん?誠だけど、あの、連絡取り合ってた」
「誠くん?」
誠くんは中学の同級生で以前の悠真と仲が良かったらしく、チャットで記憶障害になったのを心配してこまめに連絡を取り合ってた仲だ。友達思いの控えめないい子だ。
「そう!誠だよ!どうしたの悠真くん!成長しちゃってるし、なんか髪型もかっこいいし!声を掛けずらかったよ!」
「リンクで連絡したとおりだよ。成長期がきてさ、身体は痛いし、勉強しなきゃだし忙しくて」
「僕のことも忘れちゃったんだよね?」
「ごめんね、家族の事も忘れちゃったんだ」
「ちょっと寂しいけど元気そうで良かったよ」
「心配してくれてありがとう」
誠くんと会話しながら歩く。他の生徒達も知り合いを見つけて話しをしているようだ。
学校は大きいみたいだ。道を覚えないと。
離れた場所から女生徒のきゃわきゃわした声と注目が集まってくる。これは圧が凄いな。さくら時代に男子から一斉に注目されたぐらい凄い。「ぎゃーっ」って叫び声も聞こえる。男性が珍しいんだろうな。
思わずスマホをこっちに向けてしまった子なんかは、ガードさんに怒鳴られて注意されている。あ、スマホを取り上げられた。ガードさん強!
入り口に着いたら、3組に男性が別れる。1年〜3年生まで男子生徒が揃っていたんだな。1年生は……6人か。少ないな。
「ねぇ、悠真くん、制服どうしたの?」
「成長期と重なってて、制服が作れなかったんだよ。今日は入学式だから許されたけど、明日から保健室登校になっちゃった」
「そっか、寂しいな」
「ん?クラス分け出てた?一緒のクラス?」
「事前通知で男性はみんな一緒のクラスだよ。ばらばらにクラス分けすると危ないから、一緒のクラスなんだ。中学でもそうだったじゃないか」
「危ない?ごめん、中学の事は思い出せないんだ」
誠がしまった!とばかりに落ち込んだ顔をした。
「気にしないで、慣れてきたから。それより危ないってどういうこと?」
「それも忘れちゃったんだね。女性の暴走さ。男性に慣れてない女性が興奮して事件を起こしちゃう事があるからね」
男性に慣れてない女性は興奮しやすいのか?今まで会ってきた女性は大丈夫だったけどな。
それよりも、男性がみんな弱っちそうだぞ。小さい。小動物だ。いや、私の背が高いのかな?
男子トイレの前でガードさんが止まった。
「トイレに行きたい人は今から行ってください!式の最中は行けませんからね」
そう言われたら全員トイレに行くだろう。私も行く。集団トイレ。なんか恥ずかしいな。
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