◎第5話〈 勇者 〉
◎第1章 - 異世界アンチの俺が渋々勇者になり魔王をボコボコにして帰るはずが、パーティーメンバーに止められてなかなか帰らせてくれない。-〈第5話〉『 勇者 』
ザーザーザー
外を見てみると大量の雨が降っていた。
俺は心配になって、シエルを探しに行く事にした。
しかし、シエルを探すとは言え、傘を持ってないと意味がない。
そう思って俺は、ギルドの中で傘を探す。そして冒険者の1人に傘を持っていないか尋ねてみた。
「すいません!傘お借りできますか?」
「傘?そんなもん盾で充分だろ!」
「あ、そうですね(苦笑)」
俺はその冒険者に傘(盾)を借りた。
そして俺は、そのままギルドを飛び出して行った。
外は寒いし、このままだとシエルのヤツ風邪引くぞ?ったく、世話のやけるヤツだな。
まるで小さい時の“まかな”みたいだ。
俺が現実世界に帰ろうとする理由は、あの世界でアニメみたいな青春がしたい!って理由だけでは無い。
もう一つの理由、妹の存在だ。
俺の妹のまかなは昔から病弱で、学校を休んで長期間入院する事もある。
そんな時、俺は妹の代わりにテスト対策ノートを作ってやる事にしているのだ。
まかなの夢はお医者さんになる事らしい。
妹の様に病弱な子供達の為に、アイツは必死で勉強している。
俺は兄として、アイツのその努力をサポートしてやりたいのだ。
だから、この世界にずっといる訳にはいかない。
友美の為に、早く現実世界に帰らなくては!!
俺は盾を傘代わりにしてシエルを探している。
「ねぇ、聞いた?森の方で大きな魔物の声」
「えぇ聞いたわ。なんでもジャイアントスネイクが暴れまわっているって」
俺はまさかと思いつつ、来た道を真っ直ぐ戻って森へ向かった。
森にはきっと、俺を追いかけてきた大きなモンスターがいるに違いない。
シエルは装備をギルドに置いたままだし、最悪のケースだけは免れてくれ。
そう願いながら俺は平野の木の麓まで走った。するとシエルが案の定魔物と戦闘している。
雨の中、風も強く、一人で相手にするには不利な状況だ。
そんな彼女を見て、俺は勢いのままシエル前に飛び出た。そして雰囲気に押し流され、思いっきり俺は叫んだ。
「俺の女に触んじゃねぇ!」
…って、何言ってんだ俺は…!!!!!!!
思わずドラマのイケメンが良く言うセリフを口走ってしまったー!!!
このセリフ言えるタイミング今しかないって思ったら、思いっきり口滑ってるし?!!
やばい、すごくやばい。コレ絶対引かれてるよね?!やっべーわ。もう後ろ向けないわ。シエルと顔合わせられないわぁ!!!
俺17にもなってなんて恥ずかしい事を言ってしまったんだ!!しかもあんな大声で!!
とにかくこの恥はこのモンスターに八つ当たりするとしよう。
俺のバックパックと恥ずかしいセリフの恨み、きっちり体で返して貰うからな!!
そう心の中で叫び、俺は盾を奴の顔面に目掛けて力いっぱい投げた。
奴は顔面に盾を食らって動揺している様子、その隙に落ちているダガーを拾い上げて、奴の背後に回り込んだ。
「テメーの汚ねぇケツに、コイツをお見舞いしてやるよ!異世界ではカンチョーって言うんだ、覚えとけ!」
そう言いダガーをヤツのお尻に刺し込んで、俺は森の中にある自身のバックパックを探しに行く。
その後を追って、モンスターは森の中へ俺を追いかけてくる。
俺はなんとかバックパックを回収して、中に入ってる対魔物用グッズを取り出した。
毒のポーションとナイフ、そして小型アックスを取り、森の中でモンスターの対面した。
「よくも俺の大事な友達を泣かせてくれたなぁ。テメーに明日は2度とこねぇ!」
(注意:彼は初めての戦闘で意外と戦えてる事にテンションが上がり、己の厨二心が刺激されて完全にノリノリである)
「さぁ、始めようぜ。最高のデスパーティーをな
ぁ!!」
(注意:彼は初めてn…以下略)
そして次の瞬間、モンスターは大きな声を上げながら、大振りで坂口守の首を刎ねようとする。
しかし、坂口はそのままモンスターに近づき足元に毒のポーションを投げると、モンスターの右目にアックスを投げ込む。
坂口はそのまま大振りの攻撃を左手で受け、右手に持っていたナイフでモンスターの首を切り落とした。
そしてモンスターは、胴体と首が泣き別れとなり、そのまま絶命した。
(注意:そう、コレが…コレこそが…坂口守のテンションが最高値まで高まった時にのみ発動するスキル。
完全厨二病化である!)
「ん・な • わ • け • あるかぁぁぁぉぁぁ!!」
その声は、またもや森全体に響き渡った。
そして雨は止み、風も落ち着いて俺は自身の厨二病に絶望感を覚えた。
そしてボロボロなバックパックを背負い、気まずい思いをしながらシエルの元に帰る。
絶対二引イテルヨ…。イキナリ気持チノ悪イ発言ヲ連続シタノダカラ…。
俺ハ動ジ無イ…俺ハ動ジ無イ…俺ハ動ジ無イ……。
(注意:彼は今、完全に燃え尽きモードである)
そんな俺の元に怪我まみれのシエルが駆け寄ってきた。
俺は酷い罵倒が来ると思い身構えるも、彼女は頭を下げて俺に言ってきた。
「坂口守様、いや、異世界より来られた勇者様。この命、救って下さり本当にありがとうございます。私では、貴方の要望にお応えする事が困難かも知れません。しかし、私はこの命を貴方様に捧げると誓います。どうか、私を貴方の仲間にして下さい」
シエルは俺に膝をついてお願いをした。
「君、どうしたの?急に」
「いや、コレはその…貴方の妻として‥‥じゃなくて。仲間として忠誠を誓ったって事であって…」
シエルは濡れた髪で自分の顔を隠している。
その顔は少し頬が赤くなっているような気がした。きっと雨の影響で風邪でも引いたんだろう。
「妻とか勇者とか正直よく分からないけど、君はもう俺の友達だから。コレからよろしく頼むよ!」
そう言って俺は彼女に手を差し出した。そして彼女はその手を取った。
「分かりました。貴方の妻になる為に日々精進しますね!」
「いや、妻になる為じゃなくていいから。汗」
「いいえ、私はあなたの為に生まれてきたんですから。絶対に貴方を落としてみせます!私、本気ですから!」
「う、うん。」
若干動揺気味の俺だったが、まぁ、何はともあれシエルが無事でいてくれて良かった。
すっかり太陽も出て、気持ちのいい風を感じる。
そうして俺達は、アルフヘイムの街に帰って行くのであった。
その景色は、茜色の空にほんの少しだけ雨水の匂いが香る、そしてサラサラとした風が吹き、綺麗な虹が出ている。
この日から2人の旅が始まったのである——。
最後まで読んでいただき、
誠にありがとうございました。
今後とも、
この作品を完結まで描き続ける所存であります。
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