◎第3話〈 職業適性 〉
◎第1章 - 異世界アンチの俺が渋々勇者になり魔王をボコボコにして帰るはずが、獣人娘なパーティーメンバーに止められてなかなか帰らせてくれない。-〈第3話〉『 職業適性 』
俺はシエルにこの世界の事を教えてもらいつつ、ギルド加入の登録を進めていた。
しかし、俺にはある疑問がある。
この獣人娘のシエルは、なぜ見ず知らずの俺にここまで良くしてくれるのだろう?
モンスターから助けたと言っても、俺はただ逃げて来たついでにシエルとバックパックをチェンジしただけであって、この街を紹介してくれるだけで満足なのだが…。
よし、意を決して彼女に聞いてみよう。
「なぁ、なんで君は、俺にここまで優しくしてくれるんだ?」
俺はシエルに直接聞いてみる事にした。
するとシエルからは、俺の想像していた答えとは180度真逆の答えが帰ってきた。
「私は貴方の妻になるからです」
は?
そう言えばさっきそんな事を言っていたような…。
ん?あ、うん?
この世界の情報を集める事で頭が回りきって居なかったが、確かシエルは獣人族長の娘で、異世界から来た勇者の嫁になる的な事を言っていた気はする。
しかし、俺はやはり勇者では無いし、この世界で結婚するつもりもない。
ここはしっかりその事をシエルに伝える事にしよう。
「あのさ、シエル、俺、実は‥‥。」
そう言った途端、ギルド嬢のお姉さんが俺に受付へ来るようにアナウンスが入った。
「さ、坂口守様〜!ギルド加入の手続きが完了致しました。至急受付までお越し下さい!」
「タイミング最悪〜。まぁいいや、ちょっと待ってろ。すぐ戻って来るから。」
仕方がないので、俺はこの話は後でする事に決めた。
とは言え、結婚はしないが面倒を見る余裕はある。
どうせ俺が元の世界に帰るまでだ、それぐらいはしてやろう。いや、むしろいい情報源になる。
そう思いながら俺は受付へと向かった。
「‥‥‥私はずっと貴方を待ってたんですよ‥‥。」
俺に聞こえないほど小さな声でシエルは言った。
「ん?なんか言ったか?」
「なんでもないです!早く行ってください」
なんだコイツ?と思いながらも俺は気にせず受付へと向かった。
そして受付に来るなり驚くべき事が分かった。この世界には冒険者職の種類が36種類もあるらしい。
その中で適性率の高い職業を選べるのだが、どんな職業があるのか受付嬢のお姉さんに尋ねてみた。
冒険者の中で1番人気かつ適正率も平均的な職業は、近接向けのウォーリア。
そして女性に人気なのがヴァルキリー。
遠距離型のレンジャー。
大型な体格の方にオススメなジャイアント。
魔法支援型のヒーラー。
魔法攻撃型のウィザード。
大型の釜と盾を使うガーディアン。
近距離〜中距離を得意とするハサシン。
遠距離索敵が得意なアーチャー。
などなど、沢山ありすぎて正直どれが俺に適しているのか全く分からない。
俺的には、なるべくやる事が少なくて戦わずに済む職業がいいのだが…。
ぶっちゃけ、どれもこれも戦わなければならないし、面倒臭そうな職ばかりだ。
俺が頭を悩ませていると、受付嬢のお姉さんが優しそうな笑顔で案内してくれる。
「適性職の判定を行いますので、しばらくお待ち下さい!」
この笑顔は反則だ、と素直に思った。うん、可愛い。
「ありがとうございます。」
ギルド嬢のお姉さんはなんともまぁお美しいマダムですこと。あらやだ、俺の心がダイパニックを起こしちゃいそうですわ。
そんな事をしている内に、シエルが受付までやってきた。
俺の適性職が気になるらしい。
なんせ36個ある内のどれかなのだから、気になる気持ちは分かる。
「おい、待っとけって言っただろ?」
「分かってますよ!別にあなたの適性が気になった訳じゃ無いですからね。」
やはり俺は、なるべく戦わない職業だと有難いのだが…
「坂口守様の適性職が分かりました。貴方の適性職は1つです。まさに貴方は“グラディエーター”の適性が1番高い結果となりました!」
ふむふむ、なるほど…ん?
グラディエーター?!なんだその無駄にカッコ良さそうな職業は!!
俺は魔法使い系の後方支援くらいの職業で、なるべく前にでないような戦闘スタイルにしようと思ってたのに!
いや待て待て、
グラディエーターって職名的にめちゃくちゃ動く気がするが、実際の所どうなのだろう?
そう思い、俺は恐る恐る受付のお姉さんに聞いてみた。
「あの、ちなみにグラディエーターってどんな職業なんですか?」
「グラディエーターは、グラディアトルとも呼ばれていて、近接型の剣士です。基本的には盾と剣で攻撃と防御を行うのですが、ウォーリアとの違いはその自由度です。武器が剣と盾に絞られているウォーリアと違い、グラディエーターは刀剣1つでも、鎧を纏わなくてもいい自由な職業なのです!ちなみにこの職業は、“勇者の職業”と呼ばれる程、誰よりも前衛で勇敢な戦闘のできる人が選ばれるんだとか。それがあなたの適性職、グラディエーターです!」
「あはは、そうなんですね〜・・・。」
内心、聞かなければよかったと後悔している。
なんて職業に当たってしまったのだ。これも異世界をバカにした罰なのだろうか…?
まぁ、仕方がない。アルバイトをするよりは稼げるはずだ。
そう思って俺はグラディエーターの職でギルド加入を果たした。
すると、どうやらシエルの様子がおかしい。
俺が何を言ってもびくともしない。一体どうしたんだろう?
「ん?どした?」
「やっぱり、あなただった…」
「ん?どした‥‥‥?」
シエルが震えながら何かを訴えている。俺に言いたい事でもあるのか?
「やっぱりあなたは、異世界から来た勇者様なんだ!!」
へ?
その時、何を言っているんだ?と思った俺だったが、シエルにはそれを確信させるほどの理由があったのだ。
「あなたが私の旦那様なんだって言ったんですー!!」
シエルは頬を赤く染めながら俺の鼓膜を破壊するほどの大声でそう言った。
そしてシエルはゆっくりと俺にその理由を話そうとしてくれた。全く意味が分からんのだが‥‥‥。
最後まで読んでいただき、
誠にありがとうございました。
今後とも、
この作品を完結まで描き続ける所存であります。
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