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仇を打つ少年の『心』  作者: 檸檬
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8.フラグ

 涙は出すもの。我慢するものでなければ、止めるものでもない。


「それを私に言って何になるんだ? 私にじゃなく茶髪の子に言うべきだろ?」


「お前になんか言ってねぇよ。なに勝手に聞いてんだ」


「あぁそれはすまんな。ってあれ? 私が悪いのか?」


 アミが悪いのではない。悪いのは全てマモルの弱い心である。即ち無罪。


「言ったよな。近々俺の両親をあんな目にした犯人が俺の元に来るって」


「あぁ。言ったとも。なんだ? 私の言葉を信用していないのか? 神に誓って―――」


「誓わなくていい。お前の事は信用してないがお前の言葉は信用してる」


「君、失礼だなぁ。まぁ私は寛大だから気にしないがね」


 嫌味を言った筈なのに帰ってきた言葉が普通過ぎてマモルの気が狂う。


「近々ってのは明日かもしれない。明後日かもしれない。もしくは今日かもしれない」


「そうだね」


「それなのにずっとユミといてたら………、必ず巻き込むことになる。それだけは避けなきゃいけないんだ。だから今だけは―――。そしてこの件が片付いたら―――」


 ―――必ず、必ず。絶対に―――。


「告白するってか? それって死亡フラグだぞ」


「今お前が言わなかったらフラグ立たなかったのにな! なんで言うんだよ。あからさまに今俺その言葉避けたよな! 空気読めないのかぁ?」


「あーいや、すまんすまん」


 謝っているが、それは一応という意味が付く謝りだった。心も想いも籠もっていない。ただ言葉を並べただけのもの。


「で! なんでこんな所まで来たんだ? 探偵は暇潰すぐらい暇なのか?」


「いやいや暇じゃないよ。お金無くなったから君の家に一緒に住もうと思ってね。それにもう時期来る」


「で?」


「いや、で? じゃなくてだな。お金が無くなって住む場所がないんだよ」


「野宿すれば?」


「君は鬼畜か! もっと協力者に対して心を持った方がいいぞ。とっとと鍵をよこせ。はよはよ。協力する変わりだと思って」


 確かにアミには大きな借りがこれから生まれる。それを考えれば家を使わすのは借りを返す小さな一つにしか過ぎないのだ。

 そうして渋々マモルは家の鍵をアミに渡す。


「変なことしたら追い出すからな!」


「安心しろ。エロ本は探さんから。私だってちゃんとプライバシーを守るマナーくらいは持ってる」


「いやエロ本なんて無いからな」


 最後のマモルの一言を背中で聞いたアミはすぐにその場から去っていった。家の場所を教えていないにも関わらず、家の方角へ進んで行くのは女が探偵であるからだろうか。マモルの知るところでは無かった。

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