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32話

 

 急いでリサの後に続いた。

 ルークは抱いていた子猫を名残惜しそうにカウンターの中に戻すと私の後ろをついてくる。


「ちょ…ちょっと待って!僕も行く!」


 一人その場に残されていたマシューは私達を追い越すと、慌ててリサを追いかけて行った。


 相変わらず騒がしい奴だなと思いながら、リサを追いかけて行く彼の背中を見送る。


 館内の長い通路を歩いていると、さり気なくルークが私の隣にやってきた。相変わらず無表情だ。 

 さっきまで子猫に向けていた彼の穏やかで優し気な笑顔を思い出す。もしも、そんな表情を彼から向けられたのなら、私はその時どんな反応をするのだろう。そんな事を考えながら隣を歩いているルークをぼんやりと見ていた。


「ん?何?」


 私の視線に気が付いたルークが怪訝そうにこちらを見ている。


「えぇっ!?あ…。いや、何でもない…」


 彼と視線が合った事に思わずはっとして、しどろもどろになる。


 さっきからどうも落ち着かない。いつもなら二人でいる時間はまったく気にならないのに、今のこの感覚がもどかしい。何か話をする?でも何を?どうも調子が狂う。なんと説明していいのか分からない不思議な気持ちが大きすぎて持て余してしまう。

 何故今、私はこんな気持ちになっているのか?自分の中で自問自答していると珍しくルークから話しかけてきた。


「ここ、初めて来た。中はこんなに広かったんだな。で、これから何を確認しに行くんだ?」


「そうだ、説明してなかった。実は昨日…」


 ルークにそう言われて昨日あった出来事を説明した。


 説明を終えた時、前方にリサとマシューの姿が見えた。


 彼らは壁面棚の一角に立って話をしている。


「でね、この角の一番下の棚の本がいつも適当に本が置かれているのよ。みつけたらすぐ綺麗に並べ直すんだけどね」


「なるほど」


 リサがマシューに昨日あった出来事と、この場所を調べたい経緯と理由を説明していた。


「じゃあそこ。そこの一角にある本を全部どかしてみましょう」


 リサがその場所を指さす。


「えぇっ!?そこにある本、全部だすの?結構量があるよ?」


「ええ、そうよ。念入りに調べたいのよ。私がそこから本を出していくから、あなたはそれを私から受け取って横に置いて行って。その方が流れ作業で早いでしょう?」


「あぁ、そうか。そういう事ね。分かったよ。でもそこから本を取って渡すには結構力がいるよ。分厚くて重そうな本ばかりだし。僕がそっちをやるよ」


「そう?ありがとう。じゃあ私が本を受け取るわね。早速始めましょう」


 マシューは床に膝をついて本を取り出していく。リサは彼の横に立ち膝をついて本を受け取る。

 テキパキと指示を出すリサにマシューは最初少したじろぎ気味だったが、いざ作業が始まると意外にも二人の息はぴったり合っていた。

 次々と二人で棚から本をどかしていくと、瞬く間に何も置かれていない空間が出来上った。


「さて、これくらいでいいかしら。この奥に何かあるのかしらねえ…。さっそく調べてみるわ」


 リサは本をどかして何もなくなった空間に四つん這いになり、そこに頭を入れて奥を確認している。


「え!?何?奥に空間があるわ!このまま先に行って見るわね!」


 空間の奥に頭を入れたままリサが少し興奮気味にそんな事を言い出した。


「えぇ!?危ないよ!僕がやるから!女の子にそんな事させられないよ!」


 マシューが慌ててリサを止めようとしたが、彼女には聞こえていないのか、奥から出て来る事はなかった。


 心配になった私達は慌ててリサの後を追って中に入った。


 驚く事に、先に進む事ができる空間があった。人、一人分くらいの大きさだ。

 中は真っ暗で狭い、四つん這いになりながら慎重に先を進んでいく。

 やがてうっすらと光が見えてきて、ついに空間の外に出る事ができた。

 先に到着していたリサは慎重に辺りを見回しながら立っている。


「リサ…、ここは?」


「さぁ、どこかしら」


 私達は鬱蒼とした森の中にいた。

 朽ちかけた大きな切り株が通路の入り口になっていて私達はそこから出てきた。その場所は草木で覆われていて遠目から見えない。

 そんな会話をしているとマシューとルークも出てきた


「大丈夫だった!?先にいっちゃうんだもん、心配したよ」


「で、ここ、どこ?」

 

 ルークが辺りを見回しながら口を開いた。

 

 辺りは木々に囲まれていて、私達が一体何処にいるのかよく分からない。

 少し歩くとすぐに図書館の建物が見えてきた。


「あそこから館内が繋がっていたみたいね。じゃぁあ、そこから誰か館内に忍び込んでいたのかしら…?昨日聞こえた大きな音もその侵入者の仕業?でもどうしてわざわざこんな道を通ってくるのかしら…。正面から堂々と入ってきたらいいじゃない」


「うーん…。そうだね。訳が分からないね…。とりあえず戻ろうか」


 私達は図書館に向かって歩き出した。






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