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4.ヒロインと悪役令嬢には、“しぼうふらぐ”があるらしい






「だがしかし、私が一番に求めていた萌えはこんなものではないのですわ!何百回も様々なルートを探し、ゲーム画面を何時間も見つめたのに見つからなかった!それは、」

「………」

「幻想だとうたわれた、“逆ハールート”ですわ!」

「‥‥」

一体、何の話をしていらっしゃるのか。

「でも、いくらやっても画面に映るのは切り取られたヒロインの頭や胴体ばかり!そんなものは特に求めていなかった!」

それは、私も求めていないです。

ロレーナ・マッケンジー嬢は全身でなげきを表現し始めた。

「はっ、そうですわ!」

と思ったら、顔が輝き始めた。

「レベッカ様が“逆ハーレムエンド”を体現してくださればいいのですわ!」

「その“逆、はれむ”とは何ですか?」

「五人の男性を周りに侍らせ、愛されるエンドのことですわ」

「お断りさせていただきます」

そんな面倒そうな終わり方はごめんだ。

というか、絶対に誰かに刺されるでしょう。それか、私が斬首刑されるか。

半ば呆れながら、ロレーヌ・マッケンジー嬢を見つめる。

すると、彼女ははっとしたように前のめりになっていた姿勢を正した。

アメジストの瞳が活気に満ち溢れている。

今までの奇妙な行動といい、本当に別人のようだ。




…大変だ、なにを信じていて何を流していたのか分からなくなってきた。

本当にこの世界は恋愛をするゲームの世界なのだろうか。そしてロレーナ・マッケンジー嬢は"ミズノ ミライ"さんの生まれ変わり?

ああ、頭が痛い。

「レベッカ様?」

「な、んでもないです。申し訳ありません」

考え事に集中していた。軽く頭を振って現実に集中する。

「つまり、もし私が本当にそのゲームの主人公だとすると。私は、誰かと恋愛関係にならなければ死んでしまうんですよね?」

「その通りですわ」

最悪だ。

私、誰とも恋愛関係になんてなりたくなかったのに。

というか、まず結婚したいという願望がないのに。

「…まあ、仮に私が誰かと恋愛関係になったとします。そうすると、ロレーナ・マッケンジー様はどうなされるのですか?」

「何がですの?」

「私が誰かと恋愛関係になると、処刑されてしまうのでは?」

さっきそんなことを言ってなかったっけ?

“あくやくれいじょう”とかだから、処刑されてしまう結末しか残されていないって。

「ああ、それなら大丈夫ですわ」

「なにがでしょう」

「テンプレだと、こういった悪役令嬢は全てのルートで殺されてしまうのですが、ロレーナ・マッケンジーはそんなことありませんの。私が死ぬのは、フランシス・セウェル様のルートでレベッカ様がハッピーエンドを迎えた時と、レベッカ様を殺した後にフランシス・セウェル様に復讐される場合だけですもの。全体のエンディングから言えばおよそ5パーセントの確率ですわ」

「なら、私がフランシス・セウェル様とのハッピーエンドを避ければいいわけですね」

「あら、気を使わなくても結構ですのよ」

ほほほと、ロレーヌ・マッケンジー嬢は高笑いをした。

「私が殺されるのは、通算15回以上ヒロインを暗殺しようとした場合だけですもの」

「十五回!?」

「そして私は、それでも私を許そうとしたヒロインをフランシス・セウェル様の目の前で氷漬けにしようとするのです」

「氷漬け…」

「そんなこと、正気ではとてもやりませんわ」

「そ、そうでしょうね」

ずるい。

なぜ主人公が死ぬ確率と悪い人が死ぬ確率だと、主人公が死ぬ確率のほうが高いんだ。

普通は逆じゃないの?

もしかして、一途だからだろうか。主人公が五人も好きになっているから、ずっと一人を好きだったロレーナ・マッケンジー嬢が優遇されるのだろうか。

別に私だって、好きで“レベッカ・セイン”として生まれたわけじゃないのに。こんな奇妙奇天烈な話とは出来れば一生関わり合いになりたくなかった。

「と、いうわけで。レベッカ様」

気が多いヒロインに思いをはせていると、ロレーナ・マッケンジー嬢の声で呼び戻された。

「頑張って、攻略対象どもを誑し込み、死亡フラグを回避して。二人で無事に卒業式を向かえましょう!えいえい、おー!」

ロレーナ・マッケンジー嬢は謎の掛け声をして拳を天井につきあげた。

こ、これは私も真似をしなきゃいけない感じでしょうか。

やりたくない。すごくやりたくない。

けど相手は公爵令嬢で、私はただの庶民…の伯爵令嬢だし…‼

「いぇいいぇい、よー?」

恥ずかしさを押し隠しながら、泣く泣く真似をして、私も拳を天井につきあげる。

「レッツ、サバイヴ!」

「‥‥れつ、さばいー!」

謎の連帯感が生まれた瞬間であった。




――――――――ただし。

「レベッカ様!後ろを!」

「えっ?、きゃあっ?!」

「っ、氷よ!」

「うぇっ、ちょっ、!」

「れ、レベッカ様ーーー‼」

後ろにあった本棚が倒れかけ、私を助けようとした(?)ロレーナ・マッケンジー嬢に部屋ごと氷漬けにされかけるまでの短い時間だったけれど。







すみません、今回少し短めです。

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