漆黒大魔王・・・そして漆黒の星の夜
漆黒大魔王──。
その姿を見た者は誰もいないと言われ、ほとんど伝説上の存在とされている。
しかし、漆黒の星、全体には漆黒大魔王の意志が行き届いていると言われる。
つまり漆黒の星の今の状況、津々浦々、隅々に至るまでの全ての動きは全て漆黒大魔王の意志による、とも言えるのだ。
当然、漆黒の星で起こった出来事、全ては漆黒大魔王の知る所となる。
「グォー、グォー」
余裕のアレナス。
「OKってことでいいんだね?」
「誰がそんなこと言った?」
レグサのあまりにも強引な誘導尋問に、狸寝入り決め込んだアレナスもさすがに答えざるを得ない。
「だいたいお前、本当に看守なのか?」
妙に勘の鋭いアレナスの質問に、レグサは意表を突かれる。
「お? そう来たか」
内心、アレナスの勘の鋭さに驚くも、レグサは表面平静を装う。
「あたり前じゃないか。この星では生まれつき属性は決められて変えようがない。君が生粋の戦士であるように、僕は生粋の看守だよ」
「この監獄にぶちこまれる時、一度だけお前の姿見たが、お前の右肩から何か異質のもの感じたんだがよぉ」
「ふぅん。僕の右肩?」
「この星では黒意外の色が存在することはあり得ない。お前の右肩は黒以外の色に見えたんだが?」
「ははっ、君みたいな左目の色した人に言われたくないね」
レグサは苦笑して言う。
だがあえて開き直った看守は、大胆さを増していく。
「ここはお互い、あり得ない色を持った者どうし、協力し合おうじゃないか」
「協力? 一体お前に何ができるんだ? この檻は鍵とかそういったもんで開くような代物じゃないだろう」
「君が望むなら、出してあげても良いよ」
「何?」
「君が望むものを、だよ」
アレナスは考えあぐねた。
望むものを・・・とは・・・
まさか鍵?
アレナスは脱獄したいと強く願っていたわけではない。さてどうしたものか?と、漠然と考えていただけである。
もしや心の奥底では脱獄を望んでいたのか?
そんな心の奥底を、こんなヤツに見抜かれていたのか?
いずれにしてもあまり良い気持ちはしなかった。こんかヤツの思うつぼになってしまうのか、と。
もしかして、漆黒大魔王の策略?
「違うよ」
「何? 貴様・・・」
こいつは心を読めるのか?
「君が何を逡巡しているのか、推察しただけだよ」
ふざけやがって!
アレナスはイライラを増していく。
完全に主導権を握った!と、余裕絶頂のレグサは油断なのか、あえてなのか、重大な事を漏らしてしまう。
「漆黒大魔王じゃない。友人の差し金さ」
「友人だと!?」
アレナスは怒気を含めて言った。
漆黒の星では、誰かと親しくする、友人、といった概念は無い。
さすがに訝しんだ。
「肩の色といい、その言葉といい、お前は一体何者だ!?」
「何者でもないよ。ただのキュリオシティの塊さ」
「断る!」
「そう」
「貴様の手になんか乗るか」
「いつでも気が変わったら言って」
レグサのどこまでも余裕ぶっている態度が気に入らなく、アレナスはチッと舌打ち。
さすがに精神的に疲れたアレナスは、泥のように眠る。
ますますミステリアスのオーラに包まれた看守は、対象的に余裕の睡眠。
漆黒の星の夜・・・。
星全体がさらなる暗黒に包まれる──。