監獄の主
鬼の顔のような巨大な漆黒の岩がある。
口の部分が、巨大な洞穴になっている。
中は、どこまでもどこまでも漆黒の闇が続く。複雑な闇の迷宮だ。
足を踏み入れる者を、闇の底へ引っ張り込む。
地獄へ誘うように・・・。
その地獄の到達点──。
垂直に下に伸びる、やっと人一人通れるほどの細さの不気味な穴がある。
穴の底には永久に辿り着かない・・・
そう思わせるほど、穴の底は遥か彼方。
星の反対側ではないか?というほど深い穴の底。
そこでようやく穴は横へ続く。
が、畳六畳分ほどの空間があるだけで、そこで行き止まり。
その最下層を塞ぐ形で檻がある。
そこには絶望、恐怖、慟哭、発狂・・・
およそ負と思われるエネルギーが充満している。
永久に出られない監獄だからだ。
だが、今その監獄には、負のエネルギーとは縁遠い何かが鎮座していた。
「グゥオー。グゥオー」
看守の耳を、得体の知れないイビキが襲っている。
「なんてうるさいイビキだ!」
レグサは呆れかえっていた。
レグサの前にはメシが用意されている。黒いご飯に、黒いカレールーがかかっている、いわばブラックカレーだ。それにブラック野菜ジュース。黒の紙パックに入っている。
ここ漆黒の星の食料は、ほぼ地球で食べるものと形状は同じだが、色のみ違う。
ほぼ全て黒系の色だ。
そもそもこの星の住人は、食物を、美味い、不味いという観点で食べない。
よって、果たしてそのブラックカレーが美味いか不味いかは不明である。
黒い膳に乗ったブラックカレー、ブラック野菜ジュースが、黒いヒモのようなもので吊るされ、穴をどんどん下っている。
監獄の主まで辿り着くのにどれだけかかるか・・・。
監獄に鎮座している、イビキの音源。
横に寝転がって、ヒジを支点に片手で頭を支え、睡眠を取っている。
「グゥオー。グゥオー」
アレナスである。