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リール・ノスタルヂア  作者: 凪咲 叶多
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1章 神様見習い


俺は西田京佑。とある高校に通っている学生だ。俺は小学生の時に両親を交通事故で失い、それ以降は祖母のもとで育てられ、高校生の時に一人暮らしを始めだか、うまくやっていけてると思う。

それはそうと昨日、自称神様と言い張る少女ロアと出会い暮らすことになった。一通りのロアからの話を聞いたあと、俺は帰宅する事になった。ここで大事なのは、ロアと俺が共に暮らすことになった夏休みに入ってすぐの補習の日。といった具合に夏休みが狂いそうになるであろう事に憂鬱になった。

「お兄ちゃん、起きてよ!」

と俺の体を揺さぶるロア。どうやら朝が来たらしい。

「ロアか、おは・・・よう?」

 ロアと同じ布団で一緒に寝ていたはずだったが、隣で寝ていたはずのロアの姿が見えないので、少し辺りを見渡す。どうやら俺の見渡す範囲ではロアはいないみたいだ。

「お兄ちゃん!ロアはここだよー!」

ロアは朝なのに元気に声を出す。俺は声がしたほうを見る。そこは布団、夏なのに昨日の夜にロアの我が儘で二人で一種に寝ようと言い出し、しぶしぶロアと一緒に寝た布団がある。ほんとに睡眠をとっただけの布団の方から声がする。

「ロア。お前はどこで何をしている?」

「お兄ちゃんをびっくりさせようとしたんだよー」

ロアはそう言うと、布団の中から「わっ!」と顔を出した。

「朝から元気だな。」

「うん!だってこれからお兄ちゃんと私の新しい生活が始まるんだもん!楽しみで楽しみでもうはやくどこかにいきたくて仕方ないよ!」

「そ、そうだな・・・。」

何でこんなにロアは楽しそうなんだろう。

「どうしたの?お兄ちゃん?ロアと一緒に暮らすのは嫌?」

「そんな事、今の俺に分かる訳がないだろ?これからどうするかも考えていかないし。」

「お兄ちゃんになら何とかできるよ!だって、ロアのもっともっと上の神様がお兄ちゃんが選んだもの!お兄ちゃんにならロアをしっかりとした神様にしてくれる。って思ってお兄ちゃんを選んだんだから!」

そんなこと言われても、俺は神様なんて信じていない。昨日の翼の様なものだってきっと何かの見間違いだ。第一に神様がいるなら、あんなことは起こらなかっただろう。

「取り敢えずやれることはやっては見るけど、どうなるかわからないからな。」

「うん!お兄ちゃんなら大丈夫って信じているよ!」

そう言うと、ロアは布団の中から身を乗りだし、俺の視界が自分自身の顔だけで埋まるほど近づき、一言呟いた。

「お腹すいた。」

その言葉の後にはロアのお腹の音がなった。そんな時間か?ふと何時かと思い近くにある時計をみる。

「前と同じ時間よりも遥かに早いな。」

前と同じ時間とは、昨日の補習の時に間城に起こされた時の時間である。今はその時間より約30分程早い時間だ。

「お兄ちゃんは、ご飯とかってどうしてるの?」

ロアの意外な質問に言葉を失う。そういえば昨日の何でも知ってるって言ってた気がするけど、知らない事があるじゃないか。

「どうしてると思う?」

ここは探りをいれる。ロアが本当に何でも知っているのかどうか。ロアがわざと聞いている可能性もあるからな。

「んー、わからないや。」

「ほんとか?」

「本当だよ!もう。」

どうやら、ロアは本当に知らないみたいだ。自分が何でも知っている神様と言うのならそれでいいのか神様よ。

「知ってるか知らないかは置いといて!ロアはお腹が減ったのー!」

そんな事言われても困る。俺は料理なんてできないからな。強いて言えばインスタント系統位だ。しかし最近は間城が頻繁に来ていた為そんなものはこの家にないだろう。

「一応、料理を作る為の材料はあるが俺は料理は出来ない。そして、付け加えるなら簡単に食べられるインスタント類もこの家にはない。」

「えっ、そうなの!?」

「俺が料理出来ないことがそんなにも驚くことか?」

「お兄ちゃんが料理を出来ない事くらいは知ってるよ。見たら分かるよ。そんな事よりもこの家に食材があって何でインスタント類が無いのかだよ!」

今、ロアは俺が料理を出来ないっていうのをそんな事と言った挙げ句それよりもこの家にインスタント類が無いことが驚きって言ったぞ。一緒に住んであげてるのに何なんだ一体・・・。

「おい、ロア。流石にそれは酷いと思うぞ。人は見た目で判断するなって聞いた事ないか?確かにその通りだけど、そこまで酷く言わなくても良いだろう?」

「お兄ちゃんだってロアの事を見た目で判断してたでしょ?それと一緒!しかもお兄ちゃんが料理出来なかったのは事実だよ。」

「しかも、お兄ちゃんの方は間違ってたしね。もう一度言うけどロアはお兄ちゃん位の年齢なの!」

「・・・。」

ロアが言った事は合っている。俺はロアに言い負かされたらしい。俺は黙って布団の中に潜り込んだ。恥ずかしいから?違う。お腹が空いたから寝ていれば時間が過ぎると思ったからだ。

「あ!お兄ちゃん!何で潜るのさ!」

「知らん!俺は寝る!」

「お兄ちゃんが寝るならロアも寝るよ!」

そう言ってロアも布団から乗り出していた体を布団の中に再び忍び潜らし俺の横にきた。

「ロア、暑い。今何月だと思ってるんだ?」

「7月かな?」

「何でそう思うんだ?」

「それはね!神様がお兄ちゃんの最初の補習の日を選んだからだよ!」

 向こうの方の神様は何を基準で決めているんだ?

「実はねー、ロアとお兄ちゃんが出会った場所あったでしょ?」

「林の中か。」

「そうそう!よく覚えていたね!」

 何故か褒められた。昨日の事を覚えていて褒められたのは初めてだ。

「いやいや、昨日の事だぞ?忘れてる訳ないだろう!?」

「えー、だってお兄ちゃんだよ?夏休み早々補習に呼ばれるくらいだし・・・。」

「どういう意味だ?」

「どういう意味ってそのままだよ?」

 ロアの奴俺の事を軽く馬鹿にしてきやがる。

「お兄ちゃんはこんな事も分からないから補習に呼ばれるんだよ!」

「俺が補習に呼ばれたことは関係ないだろ?」

「これがねー、関係ありありなんだよ。」

「どういうことだ?」

「いや、なにもないよ。」

 ロアは呆れたよう首を振る。おまけに溜め息もついてきた。

「もう寝るよ、お休み。お兄ちゃん。」

 と言い、布団の中で動かなくなった。コイツ暑くないのか?俺は既に暑くて外に出たぞ。

「いいのか?もうすぐ間城が来る時間だけど。」

 そう。あれこれロアと話し込んでいたうちにもうじき20分ほど経つため間城が朝食を作りに来る時間である。

「ここに間城さんが来るの!?」

「ああ。間城は毎日ここの家にこの時間に来るんだよ。」

「本当!?」

 間城は驚きを隠し切れないように再び布団から出てきた。果たして間城が毎日来ることがそんなに驚く事なんだろうか。しかし驚いたのも束の間すぐにロアの顔は疑問を持った顔に変わり・・・

「どうして間城さんがここに来るの?いくら幼馴染だって言っても流石に毎日は来ないでしょ?まさか・・・。そういう関係なの?お兄ちゃんと間城さんって!」

「いや、毎朝ここに来る理由くらいわかるだろ!?あとロアが思い浮かべている関係じゃないそこは頭に入れておけ!」

「わからないよ!ロアだってなんでも知っている訳じゃないんだから!」

「おいおい。昨日は神様だからなんでも知っているって言ってたじゃないか。やっぱり神様って言うのは嘘なんだな?」

 なかなか、思い切った質問をしたと思う。自分自身を「神様だ」と言っているロアに神様ではないのではと言う疑いをかけたのだから。

「あの時はそう言ったけど、知らない事だってあるの!ほら、お兄ちゃんは知らない事を知っているって言っている人の事はどう思う?ロアだったら、良くは思わないかな?」

「そんなの、「こいつはそういう奴なんだな。」と思うしあまり良い印象は持たれないだろうな」

「でしょ?ロアはお兄ちゃんにそんな印象は持たれたくないの!」

「じゃあ何で昨日はあんなことを言ったんだ?最初からそういうつもりなら、あんな事は言わなくて良かっただろうに。」

「いやー、実はね?天界から人間界に降りるときに偉い神様から言われたんだよ。「自分はなんでも知っている神様だ。もちろんお前の過去もね」ってね。そしたら「一部の人間は怯えて共に生活することを許可するだろう」って言われたんだよ?だからあれは演技だよ。お兄ちゃんはそれに騙されたって訳なんだよ!あ、でもロアが神様なのは本当だよ?」

「ということは、ロアがこの家の事や間城との関係を知らないのは?」

「うん、本当の事だよ?知っているのはお兄ちゃんの友人とかかな?」

 笑ってそう告げるロア。どうやら本当なのかもしれな。これで本当は知っている。なんて言われたらどうしてやろうか。取り敢えずご飯は与えないな。

「でも、お兄ちゃんも動揺していたね?これは過去に何かあったという可能性がある!さあ!お兄ちゃん、遠慮せずにロアに教えてくれていいんだよ?」

 これに至っては言う訳にはいかないだろう。俺しか知らない事なんだから。

「さあな、何があったなんて、神様なら自分で調べてみろ。分からない事がある時に答えを聞かずにまずは自分で考えろ。そう言われるだろう?」

「もう!教えてくれてもいいじゃない!お兄ちゃんのケチ!」

 ロアは頬を大きく膨らませて怒る。とよく見てみるとロアの口元は笑っていた。

「どうしたロア、口元が笑っているぞ?」

「えっ、う、嘘!ダメ!お兄ちゃん見ないで!恥ずかしいよ・・・。」

 顔を真っ赤に染めるロア。一体どうしたのだろうか、笑う要素なんてどこにもなかっただろう、ましてやこっちは真面目な話をしているというのに。

「お兄ちゃんと話をするのが楽しくて・・・。あったばかりだけどこんなに楽しいなら今この時間をもっとお兄ちゃんと話していたいなって思っただけだよ!」

 依然として真っ赤になっているロアはそういうと再び布団の中に逃げるように潜っていった。

「ロア、そんなにも布団が好きなのか?」

 ここまで布団に潜られると気になる。布団が好きなのかと。もし好きならこの暑いのにもの好きだと思ってしまう・・・。

「うるさい!お兄ちゃんの馬鹿!ロアがこんなに恥ずかしい思いをしたのにどれだけ話が読めてないの!お兄ちゃんなんて・・・・。」

「どうした?」

「何にもないよ、すましてもらっている側としては、これ以上のことは言っちゃいけないと思っただけだよ。」

 ロアは申し訳なさそう告げ、布団から出てきた。

「ごめんね、お兄ちゃん。ロア少し変だったみたい・・・。」

「いや気にしてない。多分だがお腹が空いているとイライラするらしいからな俺もある。」

 何を言われるか分からなかったものの、ロアの「申し訳ない」という気持ちから許さなければならない。と俺の中の何かがそう言っているような気がした。

「ありがとう、お兄ちゃん、これじゃ神様になんてなれないや・・・。気を付けないと。」

「そうだな、次から気を付ければいい。」

「うん!ありがとう!」

 元気いっぱいの返事をしてくれたロアは落ち着いたのだろうかお腹がなってしまったようだった。

「ところで、お兄ちゃん?」

ロアはお腹なんてなっていない。と言っているかの如く強引に話を切り出し俺になったお腹の事を聞かせてはくれなかった。

「間城さんはまだ来ないの?結構時間が経っている気がするけど?」

 ロアにそう言われ時間を確認してみる。確かにいつもの間城ならとっくに来ている時間である。

「間城が来ないとご飯が食べれないな。昼まで待つかいっその事適当に買ってくるか」

「間城さんがご飯を作ってくれるの?それって家族みたいだね?やっぱりそういう関係なの?」

「だから、違う!間城が料理が好きで来てくれてるんだ。決してそういう関係ではない!」

 これに関しては、間城が毎日ご飯を作りに来てくれていると言ったら、聞いた人が皆勘違いしてしまう。しかしロアのこの反応をされるのも二回目なのである、流石に二回目は大丈夫であると思っていた俺が間違っていた。

「わかったよ、もう言わないから!」

「早く間城さん来てほしいな。お腹がペコペコだよ・・。」

「ご飯の前に間城にロアの事を言わないといけないからそれが終わってからだな。」

 ロアが「えー・・・。」とがっかりしている時に、玄関の扉が開いた。

「お邪魔します・・・。」

 間城だ、これで今日も生きつなぐ事が出来た。と内心考えていた所、「間城さんが来た!ご飯!」と、ロアは間城が来たことに喜びを隠せないみたいだ。

「京ちゃんごめんね、さっきすぐ家の前まで来てたんだけど、忘れ物しちゃって家にまで取りに帰ってたんだー」

 そう言いながら間城は階段を上がってる。ロアは布団から出ている。

「京ちゃん起きてるー?開けるね?」

 間城が二階にある俺の部屋を開けた。

「京ちゃん、おは・・よ・。え?」

間城が部屋に入ってきた時には既に遅かった。ロアが俺の部屋に居ることがばれてしまった。

「京ちゃん?これはどういう事?何で京ちゃんの部屋に知らない女の子が居るの?まさか、あの後誘拐でもしたの?」

間城の様子がいつもと同じじゃない事に気づくのは難しい事ではなかった。

「違う間城!これには深い深い訳があってだな?」

「深いも浅いも誘拐は犯罪だよ!?京ちゃんがこんな事をする人だとは思わなかったよ・・・。」

間城は俺がロアを誘拐したと思っているみたいだが、間城が思っていた通りに思っていて正解なんだが。

「誘拐なんてするわけないだろ?この子はロアっていって俺と一緒に暮らすことになったんだよ。」

ロアは布団から出て床の方に移動する。

「こんにちは!間城さん!神様の見習いのロアっていいます!今、お兄ちゃんとここに居るのは深い訳があって・・・。だから、お兄ちゃんはロアを誘拐なんてしてないから、そんな事を思わないであげて!」

ロアはそう言って間城に頭を下げる。いやこんな事を言うのもなんだがここでロアが変な事を言っていたら俺のこれからはどうして行けば良いんだ。そんなことを考えるだけで嫌気がして仕方ない。

「えっと、ロアちゃん少し整理させてね?今状況が飲み込めてないんだ。」

 間城は「ふう・・・。」と一呼吸おいて思考を落ち着かせる。

「えっと、京ちゃんはロアちゃんを誘拐していない。ここは本当みたいだね。京ちゃんはロアちゃんと一緒に暮らすことになったって事だよね?」

「ああ。」

「そうだよ、お兄ちゃんがいいよって言ってくれたから!」

「ふーん」と間城はいい俺の方を見る。俺も間城の方を見て頷く。

「これも本当そうだね。まあ、一緒に暮らす事になった理由はまた聞くとして、気になることがあってね?これは放っておくのはどうかと思ったんだ。」

「ロアがなんでも答えてあげる!神様だから何でもわかるよ!」

 初対面の人だったらロアは絶対にそのセリフを言うのだろうか。これは痛い奴と思われても仕方がないと思う

「ありがとう、ロアちゃん。じゃあ遠慮なく聞くね?ロアちゃんが京ちゃんを「お兄ちゃん」って呼んでいるのはどうして?一緒に暮らしているなら名前も知ってるはずだし「お兄ちゃん」って呼ばなくても良いと思ったんだけど?」

間城はそう言ってから、更に続ける。

「まさか、京ちゃんにそう呼ばないと一緒に暮らさないぞって脅されてたから仕方なく?もしそんな事があったら、私に言って良いからね!」

 全く、酷い言われようである。このような事を他人ならともかく、幼馴染に言われるんなんて。もしかして間城は俺の事を犯罪者にしたいだけなんじゃ・・・。

「心配しなくても大丈夫です!ロアが勝手にお兄ちゃんと呼んでるだけですので!」

「本当?京ちゃんは何するか分からないから何かされたらすぐに私に言ってね?」

「もちろんです!間城さんは頼れるお姉ちゃんですから!」

 これは俺が何かする感じのノリだが何もしないからな?世間は風当たりが強いからな。まあ、そんなの関係なくロアには手は出さないさ。

「うん、ロアちゃんのお姉ちゃんにならなってもいいかも・・・。」

 そういって間城は真剣に悩んでいた。そういえば間城一人っ子だったからいお姉ちゃんって呼ばれる機会がなかったのか。

「そういえば、ロアちゃんが京ちゃんと一緒に暮らし始めた理由って何かな?」

 ロアが「言ってもいいの?」聞くように俺を見て首を傾げる。

「間城は神様って信じていたよな?」

 これは今から話をする上で必要な事。神様を信じるか信じないかで大きく話が変わってくる。

「んー、神様かおばちゃんがいるって言ってたから私はいると思うな。結構神様に誓ってとかおばあちゃんとかよく使うし、その影響もあるかも。」

間城のその答えを聞いてロアに「言って良いぞ」と言うように頷いて見せる。俺のしぐさに反応したロアも頷き返した。

「間城さん、ロアは見習いの神様だって言ったでしょ?」

「うん、言ってたね。それと京ちゃんと暮らす事がどのような関係があるの?」

「まあ、最後まで聞いてよ!それで立派な神様なるために、修行として人間と一緒に暮らす事になってるの。その人間を偉い神様がお兄ちゃんを選んだの。だからお兄ちゃんと一緒に暮らす事になったの。」

「暮らす事になった理由はわかったけど、京ちゃんは神様なんて信じてないはずだよ?どうして京ちゃんはロアちゃんと暮らす事にしたの?」

「お兄ちゃんは神様を信じてなかったの!?確かこれは神様を信じている人間を選んでいるって聞いたけど・・・」

 そう、俺は神様を信じていない。俺も過去に神様は信じていた時期はあっただろう。しかしいつからだろうか。俺は神様を信じていなくなっていた。何故神様を信じないのかは誰も知ることができない。俺自身が思い出すことがない限り。永遠と分からないままなのだ。

「お兄ちゃんは何で神様を信じていないの?」

「さあな、これに至っては思い出せない。何一つ。」

「お兄ちゃん・・・。思い出したら言ってね?」

「ああ、わかった。」

ロアには悪いが簡単に思い出せるものでない事なので時間が掛かるか。それか思い出

せないか。この二つだろう。

「ロアちゃん!私はロアちゃんが神様だって信じてるからね!私が一緒に暮らす訳じゃないけど、立派な神様になれるように頑張ろう!応援してるよ!」

 間城の言葉によってこの部屋の空気が変わった。

「っと、今から朝ごはんを作るから待っててね?そういえばロアちゃんってお腹減るのかな・・・?」

「もちろん、減ります!間城さんの料理楽しみに待ってます!」

 朝、間城が来てから事情を説明していた為、間城も俺もお腹は減っている。最後はこんな話になるとは思わなかったが・・・。

「それじゃ、作ってくるから待っててね!出来たらまた呼びに来るよ!」

 そういうと間城は階段を早々と降りて行った。部屋に残された俺とロア一体二人で何をして待て。と言うのだろうか

「お兄ちゃん、どうする?今ここにいても何もすることがないよ?お兄ちゃん部屋って恐ろしい位何もないし。高校生ってベッドの下に本を隠しているって天界で聞いたから探してみてもほこりがあった位だったし、お兄ちゃんっていつも何してるの?」

「家に帰ったらいつも携帯ばかり触ってたな。適当な時間に夜ご飯を食べて適当にお風呂に入って、そこからまた携帯を触って眠くなったら寝る。みたいな生活をしてる。」

「お兄ちゃん、それは高校生としてどうかと思うよ?もっと高校生活を楽しまないと!自分の夢に向かって何か頑張るとかあるでしょ?」

「俺だって何かやりたい事があればやってるさ、だけど何もやってないイコールどういうことかわかるだろ?何もやりたいことがないんだよ。だから携帯で時間を潰すんだよ。」

 今の社会は頑張っても評価されない奴がいる。それに反して対してやってもないのに評価される。この現状は高校でも同じだ。勉強して出来ない奴と勉強しなくても出来る奴。これが変わらない限り俺は何もしないだろう。

「ねえ。お兄ちゃんロアと一緒にまた何かやりたい事を探しに行こう?きっと何か見つかるはずだよ?」

「気が向いたら行こう。もし見つけたら全力でやってやるさ。」

ロアは「うん!」と頷き笑って見せた。やるべき事をもう見つけたみたいに。

「おーい!京ちゃん!ロアちゃん!出来たから降りてきて!」

一階から間城の声が聞こえる。

「行くかロア。」

「うん!やっとご飯だね!」

俺とロアは階段を駆け下り間城の待つリビングへと向かう。部屋に入ると昨日と同じ香りがしてきて更に空腹を促す。

「あ、来たね。ロアちゃんは神様だから人の食べ物とかは食べれるのかな?心配になったけど、大丈夫だよね?」

 確かに、ロアがここのご飯を口に出来るかは気になる。

「食べられるよ!あっちの方で何回か食べたことがあるんだ!」

 元気にそう返事するロア。

「あっちでこちらの料理が出るのか?もしそうだとしたら、頻繁にこっちの料理を口にしているってことか?」

 なんとなく思ったことを聞いてみる。

「えっとね。頻繁には食べている訳じゃないんだ。ロアたちがここの料理を食べれる時は大抵が見習いの神様が過去にもって帰ってきたものなんだ。」

 ロアはそういった後に「あ、腐ってないよ?」と微かに笑いながら付け足した。

「ロアちゃんの所では何が基本的に食べられているか気になるけど取り敢えず、ロアちゃんがこっちのご飯が食べれることが分かった所で今は食べよ?京ちゃんとロアちゃんはお腹がペコペコでしょ?」

間城がそう言って、ご飯をつぎ、味噌汁をよそう。

カタッ。その音とともに昨日の朝と同じ香りのする味噌汁がテーブルの上に置かれ、その後に白ご飯と胡瓜の浅漬けが置かれる。

「こ、これは・・・。ロアが向こうで食べていたものとは似ても似つかないね!すごくキラキラしてるよ!お兄ちゃん!」

 ロアはあっちで、こちらの料理を食べていたのではなかったか?一緒の食べ物だと思うが。

「ロアちゃん、ご飯は炊きたて。お味噌汁は出来立て。胡瓜の浅漬けは漬けたて。だよ!せっかく神様のロアちゃんにご飯を食べてもらうんだもん、美味しいものを食べてほしいもの!」

 まとめて出来立てと言ったらよかったのに。

「間城さん、お兄ちゃん食べましょう!」

 ロアは待ちきれないみたいだ。ま、何も食べてないのだから仕方ないだろう。

「それじゃ」

「「「いただきます」」」

 自称神様のロアがここに来てからどうなることかと思ったが、間城とも普通に話さるようにもなったみたいだ、最初から気まずいっていう雰囲気でもなく遠慮なく話していたが・・・。

これからどうなるかと思うが、言った以上はロアと暮らしていくのだから、間城にも料理もしてもらわないとダメだな。

「お兄ちゃんこの後はどうするの?」

 ふと、箸を止めたロアが訪ねてくる。

「どうって、この後は補習が昼からあったはずだが、どうだった?間城」

「もう、京ちゃん!自分の事なんだから覚えておきなよ。」

「悪い。どうも学校の事となると記憶力が最低ランクまで下がってしまうんだ。」

「そんな冗談はいいから。昼から補習だし行きなよ?私は今日は用事があるから。」

 用事があるのにも関わらず、ご飯を作ってくれるので助かる。しかし、昼から補習というのは合っていた。俺の記憶力もまだいけるな。

「お兄ちゃんこの後はまた学校に行くの?」

とロアは言った。

「ああ、行かないと学校に行けなくなる。多分。」

 と、俺は行かないことによっての最終結果であろうことを伝える。

「ロアはお兄ちゃんとこの後出かけたかったのに。補習がなかったら・・・。」

 ロア悲しそうに言い放ち再び朝食に手を付ける。実際これに関してはどうにもできない。こんな事ならちゃんとすればよかった。とするには遅すぎる後悔をした。

プルルルル。自宅の固定電話が鳴り響く。

俺は、鳴りやまない固定電話の受話器を手に取り耳に当てる。

「もしもし」

「もしもし。西田君のお宅ですか?」

 どうやら、俺の補習の担当教師の長谷川から電話みたいだった。

「はい、西田京佑です。どうかしましたか?」

「あ、西田か。今日は補習があったと思うが色々あってだな。」

 どうやら、補習について話があるらしい。

「はあ。」

「単刀直入に言うと、今日から補習はなしだ。教師側の話でそう決まった。それだけだ。補習がなくなったからって勉強はしろよ。日々の積み重ねが大事だ。それじゃあな」

「え、待ってください。先・・・」

 プツッ・・・。プー。プー。

切られた。突然、補習がないと告げられ俺は状況を読み込めないでいた。

「京ちゃん、どうしたの?」

 俺の電話での応答を聞いていた間城が問いかけてくる。

「ああ、何故か今日の補習は無しになった。」

 不思議そうにしている間城にそう伝える。

「え、どうして?何かあったのかな?」

「さあな。」

 実際何も言われていないのだから仕方がない。聞く前に長谷川に切られてしまったからな。

「ふーん、なら良いや。良かったね!」

「ん?ああ。」

補習が無くなったのは嬉しいが、俺の大切な夏休みのほんの一部が暇になってしまった。

「京ちゃん補習が無くなって暇になっちゃったね?」

 と、間城は笑いながら言う。

「そんな事はないぞ。俺だってやることくらいはある。」

 俺はある程度の冷静を保ちつつ間城にそう返した。

「お兄ちゃん!補習無くなったの!?」

 突然ロアが大声で言う。俺と間城はビクリとして振り返る。

「ああ、教師側の方で色々とあったみたいでな。」

 あまりロアには関係のない話だろうが一応伝えておく。

「じゃあ、ロアと一緒にどこか行こ?」

そういえば、ロアはどこかにいきたいと言っていたな。

「ああ、いいぞ。」

特に断る理由もないので了承しよう。と言うか今日は怖いほどなにもやることがないのでこの誘いはありがたいものだ。

「と言うことだ。悪いな間城。」

間城は先程なにもやることがないだろう。と俺に言ってきたが今現在やることが出来たので、間城の顔は少し悔しそうだった。

そんなことよりも、ロアと出掛けることが決まったが果たしてどこに向かうと言うのだろうか。間城は用事で来れないらしいが、警察の人になにか言われないのか心配だ。

決してロアが小さいからというわけではない。断じて違う。ロアは高校生程の年齢らしいのだから。

「ふーん。良かったね。」

間城はそう言うと、立ち上がりスタスタと帰っていった。いきなりすぎて状況を読み込めなかったが、間城を呼び止めたが間城は「馬鹿っ…」と言い残して家を出ていってしまった。

って、ご飯がまだ残っているだろう!

取り残された俺とロアは互いに顔を見合せしばらくの間沈黙が俺とロアを襲う。ロアも状況を把握できてないようなので、取り敢えずご飯を食べよう。とロアとの結論を導きだした。

因みに、間城が残していったご飯はロアが残さずきれいに平らげた。





間城が帰り、ご飯を食べ終わって少ししたあと、俺とロアはこの後にどこに行こうと決めているところだった。 

「ロアはお兄ちゃんと行けるならどこでも良いよ!」

元気よくそう言われた。

決めるのが面倒。というわけではないだろう。純粋にそう思っていると思う。

「いや、俺もどこでもよかったりするんだが。」

恐らく、ロアの気持ちとは逆であろう、昔からこういう行先を決めるのは苦手なんだ。

 それは、先ほど元気よく言われたばかりなので記憶に新しい。

「俺はどこでもいいよ。ロアが行きたいところでいい。」

 俺は知っている。『なんでもいい。』や『どこでもいい。』などは、無責任な言葉であることを。(恐らく、ほとんどの人が知っている事であろう。)

 何でも人任せにする事はよくないと思っている。その事を認知しておきながらも尚、俺は『どこでもいい。』と言ってしまった。

「なら、お兄ちゃん調べてよ!」

ロアはそんな事は気にしていないようで、俺の携帯で調べる事を提案した。

「わかった。」

 そこから色々と探してみて候補を見つけるとロアに尋ねたが、依然として『お兄ちゃんと行けるならどこでも良い!』を貫き通しているため、一向に決まらない。

 数十分悩んで尚、決まらないため。結局は間城にどこか良いところがないか聞いて俺とロアが『ここでいい。』となった。

 相手に任せっきりはダメだとよくわかった。


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