健と和也
「暑いね。お日さまサンサン。」
午前10時30分、既に太陽は高い。平日は仕事で建物の中に居ることの多い和也からすればお日さまサンサンなどと言うレベルではなく、目眩すら覚えるほどの日差しである。殺人的とも思える。家から出て公園に向かう事5分。早くも額に汗が光る。健に目をやると汗はかいているものの日向だろうが御構い無しに小躍りするように掛けている。
「暑いからなるべく日陰を歩いたらどうだ。あと、道路では危ないからうろうろしちゃダメだ。」
はーいと、大人しく和也の言うことに従う。
「今日は公園で何して遊ぶんだ。」
窘められたようで少し気落ちしたように歩く健に向かって優しく声を掛ける。
「砂場でお城を作る。お父さんと一緒に。」
またいつもの笑顔に戻っていた。
「砂場か。最早この炎天下では砂場ではなく砂漠と言えそうだな。」
「なに?」
「いや、何でもないよ。まるでアラジンの世界みたいだなと、思っただけだよ。」
「楽しみだね。」
おそらくは【アラジン】と言う単語は分かったのだろうか。話の前後がうまく噛み合わなかった。そんな少し複雑な顔をしている。しかし、茹だるような暑さだ。まだ幼い健が炎天下の砂場で長時間遊ぶのは少々危険とも思える。いや、子供じゃなくたって危険だし、正直なところは和也自身が勘弁して欲しいといった感じだ。
「砂場以外は何をしたいんだ。」
砂場が危険と判断した場合の代替え案を探しておく。
「鬼ごっこ!」
いや、それは余計に暑いだろう。2人ですると常に走ってなければならないじゃ無いか。例え我が子と言えど笑顔で走り来る本物の鬼に見えかねない。
「鬼ごっこはもう少し人数の多い時にしような。」
きっとこれくらいの歳の子は2人で鬼ごっこと言えど全力で楽しめるに違いない。それもおそらくこっちが嫌になっても御構い無しに続くことだろう。たまに2人で遊べる時くらい全力で付き合ってもいいのだが、やはりネックになるのはこの暑さだ。健が熱中症になるより早く自分がダウンする自身があった。
「まぁ、公園に着いてから考えるか。」
柔らかい笑顔で健に目配せをした。まだまだ暑くなりそうだ。