建と恵子
御試読ありがとうございます。
テンポよく話を進められるといいなぁと思いながら取り敢えず掲載してみることに致しました。
完全オリジナル…のつもりです。
でもきっと、小生の頭に浮かぶような話ですから、似たような話を書いた人など数多おられことと思います。
まぁ、その辺はご容赦頂き、拙い文章では御座いますが、あなた様のお暇が少しでも潰れることを願いまして、お話を進めさせて頂きたいと思います。
しばらくは親子のありふれた日常の話となります。
退屈と思う方もどうか話の進展するまで我慢してお読み頂けたら幸いです。
「タケルくんは強いね。」
ほとんど化粧っ気が無く、少し日に焼けた笑顔があった。うん!男の子はその笑顔に負けない笑顔を返す。夏の日差しで熱くなったアスファルトの上で転んだ男の子は膝小僧から薄っすらと血を滲ませていた。
「流石男の子だね。泣かないなんて偉い!」
その化粧っ気の薄い母親がタケルに近付きポケットティッシュで膝に付いた砂を払い軽く血を拭った。夏の太陽が真上からアスファルトを焼いている。このアスファルトで膝を擦りむいたのに泣かない息子を立派だと思う反面、今の世の中の風潮に見合っていない「男の子だから」「女の子だから」と言う発言に「良くないのかな」と言う考えが頭をよぎった。いやいや、男の子は強く、女の子はか弱く、結構じゃないの。頭の中で独身時代に周りの女の子たちを見て、あぁ、自分もあんな風に女の子らしく成れたらと少し羨ましく思ったことを思い出した。そして、夫のそう言う男らしい強さに惹かれて結婚し、タケルを授かったことも。
「お母さん、どうしたの?」
タケルと呼ばれる少年が手の止まった母親を気遣い声を掛けた。
「タケルがね、名前の通り【健】康に元気でいるのが嬉しいなと思ってたの。」
ふぅんといった感じで健が相槌を打ち歩き出す。
「ねぇ!早く公園に行こう!」
膝を擦り剥き、焼けるような夏の太陽に照りつけられても尚、眩しい笑顔を母親に向けた。